ABC、AIを活用したいちごの自動受粉・収穫ロボットの開発プロジェクトを開始

ABC株式会社は、映像からAIに判断させてデバイスを制御するVLM(Vision Language Model)技術を活用したいちごの自動受粉・収穫ロボットの研究開発プロジェクトを開始した。

今回のプロジェクトではTenstorrent社のAIアクセラレータ「Blackhole™ p100a」を用いてAI部分をローカルLLMで動作させる安価なハードウェア構成を採用し、2028年までにAI農業ロボットの量産体制構築を目指すという。

 

AI認知技術を活用、いちごの受粉・収穫を自動化へ


ABCは、AI・Blockchain・Cultivation分野のソフトウェア開発を行う企業。AIがレトロゲームをプレイするeスポーツ事業「Prompt League X」では、ゲーム映像からAIに状況を認識させ、コントローラーを操作する「ビジョン部分(映像からのAI制御)」の開発を担当している。

今回行われるプロジェクトでは、上記の取り組みで構築した「ゲームの映像入力→AIによる理解・判断→ゲームのコントローラー操作」というパイプラインを、現実のロボットアームに適用し、いちごの自動受粉・自動収穫へ展開する。

AIがゲームの画面を元にコントローラーを操作

 

プロジェクトの中心となるのは、ABCが自社開発した映像からのAI認知とLLM制御を統合したVLM基盤「Cultiva」だ。もともとはいちごハウス内をドローン撮影し、うどんこ病などの病気の検出と出荷時期の予想のために開発されたソフトウェアだという。

同社はこのソフトウェアを活用し、以下のような技術を研究している。

  • ロボットアームに搭載したカメラで、いちごや花の映像を取得
  • VLM/LLM が果実・花の認識、成熟度や受粉状況の判断を実施
  • 判断結果に基づいて、ロボットアームの軌道や把持動作を自動生成

現在は、比較的安価な市販ロボットアームを用いた実証実験を進め、収穫動作の安定性や再現性を検証している。

 

今後は、ロボットアーム・エンドエフェクタメーカー、カメラ・センサーメーカー、農業分野での実証フィールドを持つ事業者らとの協業を進めていく予定だ。


ABC株式会社
https://abckk.dev
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
パックごはん定期便