プロ農家の農業技術が学べる相談サイト「アグティー」がリリース 新規就農者が抱える悩みを解決

株式会社パスカルは、長野県佐久市の農業法人井上寅雄農園が起案したプロ農家の農業技術が学べる新規就農者向けのプラットフォーム「アグティー」の提供をスタートした。

アグティーは、新規就農者や家庭菜園者が抱える農業技術に関する悩みを解決する農業専門の相談サイト。同サイトは、プロ農家への直接相談が可能なビデオチャット機能を備えているのが特徴だ。


株式会社パスカルは、長野県佐久市に本社を置く企業で、主にシステムインテグレーションやウェブマーケティング、インフラサービス等を提供する。農業分野では、リーフレタスを生産する植物工場の運営を手がけるほか、農業向けのクラウドサービス等も展開する。

井上寅雄農園は、長野県佐久市でイチゴ生産に取り組む農業法人で、農業動画のまとめサイト ファームランの運営も手がけている。

新規就農者の35%が4年目までに離農する現実


農業者の高齢化や後継者不足等の課題を抱える日本の農業は、新規就農者の確保が喫緊の課題とされている。

農林水産省のデータによれば、新規就農者の数は平成22年から平成30年までの8年間で毎年5万人ずつ増加していたという。しかし、総務省発表の「農業労働力の確保に関する行政評価・監視-新規就農の促進対策を中心として-」では、新規就農者の35%が4年目までに離農している現状が報告されている。

資料では新規就農者の75.5%が生計が成り立たないという実情も語られており、理由として「農作物の栽培技術に関する知識不足が原因の機会損失」という理由が最も多く、全体の約4割を占めたという。

地域の営農指導員・普及員の数も大幅に減少


日本の農作物の栽培技術は、地域の農業と深い係わりを持つ農業協同組合(JA)の指導員や普及員等による営農指導で支えられてきた。

しかし、農林水産省が平成21年に公表した「農協の現状と課題について」によれば、昭和55年には全国に8661人いたとされる営農指導員の数も平成19年には4323人まで減少し、普及員の数についても平成7年の1万1145人をピークに平成21年には7955人まで減少したことが報告されている。

現在、農業を主業とする販売農家は全国に196万戸いるとされている。しかし、この報告を参考にすれば指導員および普及員1人あたり245戸の販売農家を担当する計算になる。

パスカルと井上寅雄農園は、「アグティ―を利用すれば全国のプロ農家と直接つながることができるため、新規就農者の栽培の課題を解決できる」とコメントしている。

アグティ―の運営を通じて新規就農者の栽培の悩みを支援


新規就農者の疑問を解決する「アグティー」は、2020年11月に開催された信州ベンチャーコンテストにて、新規就農者の離農を抑制する可能性を秘めるとして、グランプリも獲得した。



利用方法については、事前に新規就農者で悩みを持っている人を「相談者」、プロの農家を「アドバイザー」として登録。相談者はアドバイザーのプロフィールを確認した上で、希望のアドバイザーを指名し質問する。質問に対しアドバイザーは、チャット機能やビデオ通話を使って指導し、相談者の悩みを解決していくサービスという。アドバイザーは時間と場所に縛られず指導できるため、本業の農業経営に支障をきたすことはない。

新規就農者はもちろん既存の農業者も、地元の特産品以外の生産物栽培へ挑戦する際に「アグティー」を利用することで、全国の農家と繋がることができるため、幅広い栽培技術を取得することが可能だという。

パスカルと井上寅雄農園は今年度の登録者数6600人を目標に、新規就農者の栽培技術の向上および農業経営全体の向上を支援していきたい考えだ。


株式会社パスカル
https://www.pascal.ne.jp/
農業法人井上寅雄農園
https://r.goope.jp/toraonouen
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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