運搬支援ロボット「CoRoCo」を活用した「スマート農機実装による梨の効率・軽労生産」の共同研究が山口県でスタート

東京貿易マシナリー株式会社、山口県農林総合技術センター、公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学の3者は、産学公連携による「スマート農機実装による梨の効率・軽労生産」の共同研究を開始した。

この研究は、山口県内で栽培される梨の生産現場に東京貿易マシナリーが提供する運搬支援ロボット「CoRoCo」(コロコ)を導入して、作業の効率化と負荷軽減の効果を実証するもの。3者は、研究で確立した手法を体系化することで、「高齢化が進む山口県農業の経営安定化を目指す」としている。



東京貿易マシナリー

エネルギーインフラに関する機器を主力事業に、海上や陸上で使用されるローディングアームや港湾関連設備、流量計等の提供ほかロボティクス事業等を展開する企業。ロボティクス事業では、追従型の運搬支援ロボット「CoRoCo」(コロコ)を提供する。

東京貿易マシナリーが提供する追従型の運搬支援ロボットCoRoCo(コロコ)
CoRoCo(コロコ)は、「人間と共に働く」をテーマに開発された追従型の運搬ロボットだ。フォークリフトを使うほどではないが手押し台車では重い荷物の運搬や、AGV(無人搬送機)やAMR(自律走行搬送ロボット)などのハイスペックな機器の導入は現実的ではないケースに最適な支援ロボットとなっている。

CoRoCoは自動的な自律走行はできないものの、テザーと呼ばれる専用機器を持つ人間に自動追従する機能が備えられている。これによって作業者は重い荷物を持つことなく、楽に移動できるという仕組みだ。

自動追従する様子

山口県農林総合技術センター

山口県農林水産部に設置される研究機関。山口県内の農林業を対象に試験研究や高度技術の普及、農業後継者の研修等を実施している。

山陽小野田市立山口東京理科大学

山口県山口市に所在する公立大学法人。地域社会と地域産業の振興・発展に寄与する社会貢献機能を備えた個性ある大学を基本姿勢に、機械工学、電気工学、応用化学など理工系分野を中心とした教育・研究に取り組む。

生産者の高齢化や後継者不足等の課題を抱える山口県農業


瀬戸内海と日本海に面し中国山地が横断する山口県では、それぞれの地域特性や気候条件を生かした農作物の栽培が行われている。主な栽培品目は、キャベツ、玉ねぎ、いちご、とまと、みかん、梨、りんごなどで、全国的な知名度を誇る大規模な名産品は少ないものの、交通網の整備から地産地消等にも積極的に取り組んでいる。

山口県産の梨は高いブランド力を誇る人気の農作物で、秋芳梨や豊北梨等のブランドをメインに年々その人気と認知度を高めているが、生産者の高齢化や後継者不足による生産量の減少が危惧されている状況という。
農林水産省が2020年11月27日に公表した「2020年農林業センサス調査結果の概要(概数値)」では、広島県と並ぶ全国トップの平均年齢(72.3歳)が報告されている。


運搬支援ロボットCoRoCoを活用して梨生産現場の人的課題を解決


3者が取り組む「スマート農機実装による梨の効率・軽労生産」は、梨生産者の高齢化、後継者による生産量の減少に対応するもので、共同研究では梨の収穫・集荷作業の負荷軽減を目的に、作業工程の分析調査、実証試験による効果検証、負荷削減の評価等を実施する。


同研究では、山口県農林総合技術センターが統括し、東京貿易マシナリーが運搬支援ロボットCoRoCo(コロコ)の提供・改良・製作を担当、山口東京理科大学が実証試験と試験設備の設計・製作、データ集計を担う。

山口県農林総合技術センターは当初、市販されている全自動型の追従運搬車の導入を検討していたが、安全面や導入までのコスト、時間等の課題からCoRoCo(コロコ)を採用。組立工場が山口県内にあることから、研究で得た情報を直ちに反映できることが決め手になったそうだ。

現行のCoRoCo(コロコ)は、製造工場内の使用に特化したモデルだが、農地等の不整地でも使用できるよう随時改良を加えていく予定とのこと。


東京貿易マシナリー株式会社
http://www.tokyo-boeki-machinery.co.jp/
山口県農林総合技術センター
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a17201/index/index.html
公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学
http://www.socu.ac.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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