農林水産省、「2021年農業10大ニュース」を発表 環境への配慮もキーワードに

農林水産省は、1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関及び国立研究開発法人の農林水産研究成果のうち、内容に優れるとともに社会的関心が高いと考えられる成果10課題を、「2021年農業技術10大ニュース」として発表した。選定は、農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など29社加盟)の加盟会員による投票。

本記事では、テクノロジーに注目して、各トピックをご紹介する。



【TOPIC 1】 サツマイモ基腐病をすばやく診断!
-病原菌を最短約1日で検出・同定-


国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が、新型コロナウイルスの検出にも使われるリアルタイムPCR法を用いて、サツマイモ基腐病菌を最短約1日で検出・同定する技術を開発。従来の2週間より早期の診断が可能となったことで、被害のまん延防止対策として期待される。

目的:病気の診断とまん延防止対策
作物:サツマイモ
技術:リアルタイムPCR法
特徴:検査期間を2週間→1日に短縮。
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-6.pdf

【TOPIC 2】 2万円で自作! IoT監視システム
-自宅からスマホでハウスの見回り-


農研機構が、2万円ほどで自作でき、ハウス内の温度等をスマートフォンで確認できるシステム「通い農業支援システ
ム」の製作マニュアルを公開。メッセージアプリを使い、希望の時刻や間隔など、生産者ニーズに合わせてハウス内の情報取得が可能。ハウスの管理のために足を運ぶ頻度が減り、見回り時間を削減できる。

目的:ハウスの見回り回数・時間の削減
対象:ハウス栽培対象の農作物
技術:IoTリモートセンシング、スマホアプリ
特徴:安価(2万円)に短期間(3日間ほど)で製作可能
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-7.pdf

【TOPIC 3】 タマネギ直播栽培の5作業が1回で
-安定生産と作業性を両立する作業機を開発-


農研機構、JA全農、株式会社クボタがタマネギ直播栽培の作業機を開発。トラクターに装着して、畝立て・溝底播種・直下施肥のほか、耕うんや農薬散布を加えた5作業を同時に行うことが可能。慣行の苗移植体系より労働時間を24%削減しつつ、直播栽培の初期生育が改善できる。

目的:苗移植からの作業時間の削減、施肥量の削減
対象:タマネギ
技術:トラクターと逆転ロータリーによる直播栽培・施肥
特徴:苗移植に比べて作業時間を24%削減。肥料の使用量を削減
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-5.pdf

【TOPIC 4】 アミノ酸バランス改善飼料で牛排せつ物由来の温室効果ガスを削減
-地球環境に配慮した畜産の実現に期待-


農研機構と栃木県が、アミノ酸バランスを改善した飼料を肉用牛に給与することで、排せつ物から発生する温室効果ガス(一酸化二窒素)を半減できることを立証。牛の増体や肉質への影響はなく、地球環境に配慮した畜産の実現が期待されます。

目的:排泄物由来の温室効果ガスの削減
対象:牛(ホルスタイン種)
技術:飼料の開発
特徴:原料価格は同等ながら、炭酸ガス発生量を半減
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-3.pdf


【TOPIC 5】 2つの腕でロボットが果実を収穫
-果実をAI認識、人と同じ速度で作業-


株式会社デンソー、立命館大学、農研機構が、V字樹形のリンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシを対象とした果実収穫ロボットのプロトタイプを開発。果実をAIで認識し、2本のロボットアームによって、人と同等の作業スピード(11秒/個)で収穫が可能。収穫作業の軽労化が期待される。

目的:収穫作業の軽労化
対象:リンゴ、ナシ、洋ナシ
技術:AI画像認識、収穫ロボット
特徴:人間と同等の1個当たり11秒の作業スピードを実現。
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-8.pdf


【TOPIC 6】 イネの生育と収穫を増加させる技術開発に成功
-食料増産と二酸化炭素や肥料の削減に期待-


名古屋大学などの研究グループが、イネの葉や根にある特定の遺伝子の働きを高め、光合成の活性化と養分の吸収効率を同時に上げ、収量を3割増加させることに成功。生産性向上による食料増産と肥料削減が期待される。

目的:イネの多収化、温室効果ガス・施肥量の削減
対象:イネ
技術:遺伝子解析技術
特徴:イネの養分吸収を20%以上、光合成活性を25%以上向上。収量を30%以上増加
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-4.pdf

【TOPIC 7】 地球にやさしいコムギ新品種を開発
-窒素肥料を減らしても収量維持-


国立研究開発法人国際農林水産業研究センターなどの研究グループが、多収コムギ品種に野生近縁種の高い生物的硝化抑制(BNI)能を交配によって付与。窒素肥料を6割減らしても、通常のコムギと同じ生産性を維持するBNI 強化コムギを開発。窒素肥料の低減とともに、温室効果ガスの削減や水質汚染の低減が期待される。

目的:小麦の多収化、温室効果ガス・施肥量の低減
対象:小麦
技術:新品種の開発
特徴:施肥量の削減、温室効果ガスの削減
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-4.pdf


【TOPIC 8】 圃場の病害虫をスマホで診断!
-AIを利用した画像診断技術を開発-


農研機構などの研究グループが、精度の高いAI病害虫画像判別器の開発に成功。トマトなど4作物の病害虫の画像を基に病害虫名を診断する病害画像診断技術に基づくシステムを先行的に公開。システム利用者の画像を蓄積することで、さらに診断精度を高められることが期待され、病害虫防除の対策に貢献する

目的:病害虫診断・防除の対策
対象:トマト、ナス、キュウリ、イチゴ
技術:AI画像診断技術
特徴:早期の防除対策、病害虫被害の削減、防除コストの削減
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-2.pdf


【TOPIC 9】 世界の穀物収量をいち早く予測
-既存サービスよりも1~6ヶ月早く予測情報を提供-


農研機構とAPEC気候センターが、全世界を対象とした穀物の収量予測手法を開発。既存予測サービスよりも1~6ヶ月早く、収量の概況を把握する。予測情報の公表により、食料の価格高騰を抑制するなど、公益的な効果にも期待されている。

目的:収量予測
対象:トマト、ナス、キュウリ、イチゴ
技術:AI画像診断技術
特徴:早期の防除対策、病害虫被害の削減、防除コストの削減
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-2.pdf


【TOPIC 10】 3Dカメラとスマートグラスを用いて豚の体重を瞬時に推定

-豚の体重が見えるメガネ-


宮崎大学が、3Dカメラとスマートグラスにより、豚を見るだけで体重を推定可能な装置を開発。3Dカメラで得られた豚の体形データに枝肉標準モデルをAIがフィッティングし、体重と枝肉重量をスマートグラスに表示。作業の効率化と収益向上に期待。

目的:出荷豚の選別、出荷時期の見極めによる収益向上
対象:豚
技術:AI・ARによる体重自動判定、3Dカメラ、スマートグラス
特徴:農家の作業効率化、収益向上
URL:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211223-10.pdf


2021年農業技術10大ニュースの選定について|農林水産省
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/211223.html

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。