農研機構、計画的な出荷を可能にする「いちごJIT生産システム」を開発

農研機構は、いちごの収穫日を高精度に予測し制御する「いちごJIT(ジャストインタイム)生産システム」技術の開発に成功した。

「いちごJIT生産システム」の構築に向けて


今回農研機構は、「ジャストインタイム生産」に必要な3つの要素技術のうち、収穫日予測モデルと収穫日制御技術を開発。すでに開発されている生育センシングシステムを利用することで高精度な収穫日予測モデルを構築することに成功した。
農研機構が開発を進める「いちごJIT生産システム」の概要
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcar/157066.html

「いちごJIT生産システム」の構築に必要な3つの技術

1)生育センシングシステム
RGB-Dカメラと熱画像カメラを利用して、収穫日の予測に必要な開花日と果実温度を自動で計測する。

生育センシングシステム
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcar/152649.html

2)収穫日予測モデル
開花から収穫までの期間を複数のステージに分割して細かく予測する。

収穫日予測モデル
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcar/157066.html

3)収穫日制御技術
開花以降のハウス内気温を調節することで収穫日を制御する。

収穫日制御技術
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcar/157066.html

今回の研究では、温度や湿度、日射量、二酸化炭素濃度、風などを再現できるロボティクス人工気象室を利用して、農研機構植物工場九州実証拠点の2019年11月から1月の気象を再現。

ロボティクス人工気象室で栽培したいちご
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcar/157066.html

その後、いちごの需要が特に増えるクリスマスの時期を対象に、「収穫ピークが1週間遅くなる場合」と「収穫ピークが1週間早くなる場合」の2つのパターンの目標出荷日を設定して、週2回の頻度でシミュレーションを行ってみたところ、従来の技術では±約1週間の誤差で制御していた収穫ピークを±1日の誤差で制御することに成功したという。

クリスマスの時期に収穫ピークを合わせた研究結果
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcar/157066.html#zu5

今後は、農業用ビニールハウスなど人工気象室以外でも同様の結果が確認できるか検証を進めていく方針とのこと。


農研機構
https://www.naro.go.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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