Green Carbon、フィリピン大学と連携し水田のメタンガス削減プロジェクトを開始

Green Carbon株式会社は、フィリピン大学と連携し、現地農地での間断灌漑(Alternate wetting and drying、以下AWD)によるメタンガス削減プロジェクトを開始した。温室効果ガス削減ノウハウの技術指導を通じて、フィリピン国内への普及を目指す。


間断灌漑(AWD)とは、水田の水位を目安に、数日おきに入水と自然乾燥を繰り返す手法のことで、Jクレジット制度「水稲栽培における中干し期間の延長」の方法論で対象となる中干しに比べ、水の使用量を減らすことができるという。

メタン生成菌の活動を抑制


フィリピンでは、年間6000t-CO2eの農業由来GHG(温室効果ガス)を排出していて、2030年までにその75%にあたる4500t-CO2eの削減を目標に掲げている。一方、フィリピン全土の水田から排出されるメタンガスを抑制することで、削減目標の半分にあたる約2405万tのCO2削減ポテンシャルがあるという。

Green Carbonは、高炭素固定種苗の研究開発をメインに、カーボンクレジット創出(J-クレジット/ボランタリークレジット)、登録、販売までを一気通貫でサポートしている企業だ。

フィリピン国内のカーボンニュートラルに向けた計画の第一歩として、2023年1月よりフィリピン大学と連携し、水稲栽培におけるメタンガス削減プロジェクトの実証を実施。大学との共同研究により培った知見やノウハウを活用し、2023年7月22日よりフィリピン北部に位置するブラカン州において、農地約20haでの実証プロジェクトを開始した。

今回のプロジェクトでは、間断灌漑(AWD)により、水田から排出されるメタンガスの削減を実施。水田に「水を満たした状態」と「干した状態」を数日おきにくり返し、土壌の中のメタン生成菌の活動を抑制することでメタンガス排出量を削減する。

中干し実施の水位変動イメージ

間断灌漑(AWD)実施の水位変動イメージ

ブラカン州農家への説明会と現地農地での測定の様子

今後はフィリピン大学と連携し、現地農家に対してAWDの実施方法の指導を行い、ブラカン州全体への普及を目指す計画で、2023年11月には1000haの農地にAWDを導入する予定だという。

2024年度にはフィリピン北部のヌエヴァ・エシハ州とも連携することで、1万haにまで対象農地を拡大。2030年度までに稲作のメタンガス削減プロジェクトで約500万t-CO2e削減を目指すとしている。

また、フィリピン大学と連携して協力農家の土壌調査を実施し、その結果を踏まえ、肥料・農薬の最適な種類、施用量に関するアドバイスを行い、肥料・農薬由来の温室効果ガスN2O(一酸化二窒素)の排出抑制と稲作の収量増を目指す。

同社は、フィリピンのカーボンニュートラル実現に向け、メタンガス削減プロジェクト以外にも、マングローブの植林、カーボンファーミング、肥料削減、バイオ炭プロジェクトを通して、CO2排出量の削減とカーボンクレジット創出を進めていくとのこと。


Green Carbon株式会社
http://green-carbon.co.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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