岡山大学、AIを活用した果物・野菜収穫用空間センサーの開発に成功

国立大学法人岡山大学と岡山大学発のベンチャー企業である株式会社ビジュアルサーボは、AIを用いた果物・野菜収穫用空間センサーの開発に成功した。これにより、照度等の周辺環境の変化に影響されずに位置・寸法計測が可能になる。


農業用ロボットの開発に貢献


岡山大学とビジュアルサーボは、ステレオビジョンを用いた空間計測の研究を続け、任意対象物の3次元位置姿勢を計測するコンピュータビジョンの構築に成功し、泳ぐ魚の寸法計測などを行ってきた。この画像計測方法は、左右複眼カメラに同じ対象物が写っていれば、その位置・姿勢・寸法の計測が可能であるという特徴があり、このアイデアはビジュアルサーボ所有の特許(特許番号:6784991・6760656)で権利化されている。

今回、AI手法を用いた画像処理方法により、野菜や果物などの任意不定形対象物でも、位置・寸法の計測が可能となった。

農業用ロボットは、屋外の光環境が変化しても計測結果が変化しない計測特性が求められている。研究では、野菜・果物・日用品を16種用意して寸法を実測するとともに、屋外の日向(照度約5万2000ルクス)および日陰(1530ルクス)の光環境で対象物の寸法と3次元位置を計測し、日向と日陰の照度差に影響されない位置・寸法の計測を実証。

その結果、「果物・野菜・日用品の寸法と3次元位置を屋外で接触せずに空間計測が可能なこと」、「寸法計測結果は、屋外の日向・日陰の照度環境に影響されないこと」、「補正後の寸法平均誤差は1[mm]以下、標準偏差は3[mm]程度であること」の3つが判明。照度等の周辺環境の変化に影響されずに位置・寸法計測が可能となった。

計測装置を小型化することで、移動ロボットのハンド部への取り付けが可能となり、ロボットの動きによってカメラ視点を野菜・果物などの対象物の近くに移動させて計測できることから、農作物を正確に把持・収穫する農業用ロボットの開発に貢献できるという。

今後は、株式会社SECと果物・野菜収穫用ロボットの開発を共同で進めるとともに、収穫時に果物の熟度などの計測・寸法に基づく仕分け作業なども可能な多機能ロボットの開発を進め、2023年度中には農場でのフィールドテストを開始する方針を示している。

農業用ロボット搭載用の複眼ハンドアイカメラ。
カメラ部から対象物までの位置の寸法を測定し、その結果をもとに対象物にハンド部を接近させ、把持・収穫する。
また、計測と接近を繰り返すことで、至近距離からの計測が可能となる

実測した寸法と日向および日陰での3次元位置測定の結果。測定結果は照度環境の影響を受けていない

果樹葉を模擬した背景条件での、実寸と日向および日陰での3次元位置測定の結果。
果物が果樹の葉に囲まれた状態で背景が複雑な状態であっても、
誤差はわずかであり、位置・寸法の計測が可能であることを示している


国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
株式会社ビジュアルサーボ
https://visual-servo.com/
株式会社SEC
https://www.sec2012.co.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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