岩手県八幡平市民間3団体が協力し、次世代型IoT施設園芸の実証実験をスタート

岩手県八幡平市が、周年農業の実現化に向けた、施設園芸における施設・設備・環境・栽培等に関する有効性の実証実験を、2019年10月25日にスタートした。


今回の実験は、次世代型IoT施設園芸への転換を目的としたもので、同市のほか株式会社八幡平スマートファーム、株式会社MOVIMAS、東洋製罐グループアグリWGらの民間団体が参加を表明している。

高石野団地での実証実験


実験では、八幡平スマートファームが所有する2haの農地を東洋製罐アグリが使用し、再生ビニールハウスを活用した栽培装置の長期運用試験や効果検証などが実施される。

MOVIMASはクラウド管理での農業ノウハウの共有や蓄積、新規就農者のサポートなど、IoTと水耕栽培を活用したシステム開発を担当。八幡平市は松川地熱発電所からの熱水供給など公的支援の全般をサポートする。




八幡平市

松川地熱発電所の開所以来、地熱を利用した熱水ハウスによる施設農業を30年以上行ってきたが、近年は高齢化による離農や施設の老朽化が進み、未活用施設の増加が問題になっていた。

そこで2017年9月、同市は熱水ハウスの再生を目的にスマートファームプロジェクトを発足。以来、ハウス内に環境制御を行う栽培管理システムの導入を進め、施設の高収益化を目指している。

八幡平スマートファーム

八幡平スマートファームは、熱水ハウスの再生を目指す八幡平市と、IoTを利用したシステム開発などを手がける株式会社MOVIMASが、IoT農業の振興を目的とした包括連携協定締結を経て設立された農業法人だ。

IoTを活用した次世代型施設園芸への転換を図るとともに、持続的かつ発展的に農業経営ができる人材の確保や、新規就農者に向けたIoT技術の習得支援の場としても機能する施設づくりを推進している。熱水を利用したIoT技術による次世代型の園芸施設で、年間を通して栽培と収穫が可能なバジルを生産している。

東洋製罐グループアグリWG

東洋製罐グループアグリWGとは、東洋製罐グループが保有するアグリ分野の技術を結集し、ハイスペックな植物工場を目指す取り組みを指す。

高密度縦型水耕栽培システムの植物工場に関する研究・販売を手がける鋼鈑商事株式会社と、農業用特殊フィルムなど農業用資材に関する研究、提供を行う東罐興産株式会社、大分県別府市の研究開発農場で肥料の研究開発と効果試験を行う東罐マテリアル・テクノロジー株式会社の3社が参加している。


今後は、高石野団地の210平方メートルにある熱水ハウス50棟をIoT次世代施設園芸へと転換し、2019年12月には次世代型IoT施設園芸で生産された野菜の初出荷も予定している。

同市では、持続的かつ発展的に農業経営ができる人材の確保や、新規就農者へ向けたIoT技術の習得支援の機会を創出し、今後も地域社会の融和や協調に努めていく考えだ。


<参考リンク>
八幡平市
株式会社八幡平スマートファーム
株式会社MOVIMAS
東洋製罐グループ
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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