新Wi-Fi規格「Wi-Fi HaLow」を利用した鳥獣害対策の実証が島根県雲南市でスタート

島根県雲南市、アイテック阪急阪神株式会社、株式会社GAUSS、サイレックス・テクノロジー株式会社、特定非営利活動法人おっちラボの5者は共同で、「Wi-Fi HaLow™とカメラ画像を活用した獣害被害削減の実現」に関する実証事業を2023年12月11日から開始した。

新たな無線通信技術とソリューションを効果的に組み合わせることで、増加している野生鳥獣による人や農作物への被害抑制を目指す。

実証事業が開始された島根県雲南市三刀屋町飯石地区

有害鳥獣の捕獲率を向上


島根県雲南市は、水と緑に囲まれた県内随一の農業地帯で、有機農業の取り組みが盛んだ。しかし、2016年から2021年にかけて獣害被害額が21.1%上昇していることが問題となっていて、10年後の2031年には77.5%まで上昇すると見込まれていることから、30団体の地域自主組織と協力して、獣害対策等のまちづくりにも取り組んでいる。

今回開始された実証事業は、総務省が実施する「令和5年度地域デジタル基盤活用推進事業」の一環で行う官民協働のプロジェクトだ。

「地域デジタル基盤活用推進事業」とは、地方公共団体や企業・団体などを対象に、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けた新たなソリューションアイデアを募集して、実用化に向けた社会実証(実証事業)を行うもの。

実証で利用される「Wi-Fi HaLow」は、920MHz帯の周波数を利用して通信を行うWi-Fi規格のことで、「伝送距離が長い」、「省電力」、「免許不要のため自営設置が可能」、「画像・映像の送受信が可能な通信速度」が主な特徴であり、IoTを活用した地域課題の解決に役立つとして期待されている。

実証事業の概要図

プロジェクトでは、島根県雲南市三刀屋町飯石地区を実証フィールドに、罠や檻等の近くに設置したカメラの画像を遠隔から監視できるシステムを構築。見回り作業の負荷を軽減するとともに、遠隔監視により罠や檻等の状態把握が可能となるため、有害鳥獣の捕獲率を向上させることを目指す。

また、予めカメラ画像を元に捕獲した有害鳥獣の種別や数を確認できるようになることから、適切な人員の配置や捕獲用具の準備が可能になり、初動対応から捕獲までの一連の手順が簡素化できるという。

さらに、AIによるカメラ画像解析を用いて種別を判定し、出没場所等を専用のポータルサイトを通じて、市職員や地域住民へ通知する仕組みを構築。蓄積した情報から有害鳥獣が出没しやすい場所や生息範囲・行動範囲等を予測し、罠や檻等の種類や設置箇所、数量等を検討することで捕獲効果を高める。

各者の役割は以下の通りだ。

・島根県雲南市(プロジェクト参加団体)
実証事業のフィールド提供、実証システムの運用検証、効果検証支援、他地域等への横展開支援
・アイテック阪急阪神(プロジェクト責任者)
移動受信器アプリの開発
・GAUSS(実証実験団体)
AIカメラの環境構築/獣害検知AIカメラのソフトウェア開発
・サイレックス・テクノロジー(実証実験団体)
Wi-Fi HaLowの環境構築、測定の作業(支援)
・おっちラボ(実証実験団体)
ポータルサイト「うんなんケモナビ」の管理・運営、雲南市内実証実験への協力者(住民)への実証内容の説明、実証後のアンケート収集


島根県雲南市
https://www.city.unnan.shimane.jp/unnan/index_sp.html
アイテック阪急阪神株式会社
https://itec.hankyu-hanshin.co.jp/
株式会社GAUSS
https://gauss-ai.jp/
サイレックス・テクノロジー株式会社
https://www.silex.jp/
特定非営利活動法人おっちラボ
https://www.occhilabo.org/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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