農水省、環境負荷低減の取り組みを「見える化」するラベル表示の本格運用を開始

農林水産省は、環境負荷低減の取り組みの「見える化」を推進するにあたり、新たなラベルデザインを2024年3月1日に発表した。

このラベル表示により、消費者が環境に配慮した農産物を識別しやすくなり、生産者の環境保全への取り組み促進も期待できるという。

出典:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/240301.html

温室効果ガス削減と生物多様性保全の取り組みを「見える化」

農林水産省は、食料システム全体での環境負荷低減の促進や国民理解の醸成に向けて、環境負荷低減の取り組みの見える化を推進している。

2020年度から始まったこの取り組みは、業界関係者や有識者による検討会を通じて、農業者の栽培データから農産物の生産段階の温室効果ガス排出量を算定できる簡易算定シートの開発、算定結果に基づく見える化の手法の検討などを行ってきた。

2022年度からは、累計700以上の店舗や飲食店等の協力を得て、温室効果ガス削減への貢献を星の数で表示する等級ラベル表示の実証販売を行うとともに、2023年度には生物多様性保全の取り組みの見える化についても議論を行い、米については生物多様性保全の取り組みの表示も可能になった。

対象となる農産物は、米やトマト、きゅうりやなすなど23品目。星の数で環境負荷の低減度を示していて、星3つが最高評価となるという。

対象となる農産物
米、トマト、きゅうり、ミニトマト、なす、ほうれんそう、白ねぎ、たまねぎ、はくさい、ばれいしょ、かんしょ、キャベツ、レタス、だいこん、にんじん、アスパラガス、りんご、みかん、ぶどう、日本なし、もも、いちご、茶

農林水産省は、農産物等にラベル表示を行うための基本的な考え方と、算定・表示の手順を整理するため、「農産物の環境負荷低減に関する評価・表示ガイドライン」も策定している。

ガイドラインによると、農林水産省が作成した「温室効果ガス算定シート」に化学農薬・肥料の使用量、プラスチック資材や化石燃料にかかった費用などのデータを入力することで、温室効果ガスの排出量や削減率を算定できる。その算出結果と標準的な栽培方法を想定した場合の排出量を比較し、削減への貢献率を計算する。

一方、生物多様性保全については、化学農薬・肥料の不使用および低減、冬季湛水(冬水田んぼ)など、水田周辺の生態系保護の取り組みごとに点数を設け、その得点に応じて評価が行われる。

現在は、全国230店舗を展開するワタミグループの居酒屋でラベル表示した有機さつまいもを使用した新メニューの提供や、株式会社イトーヨーカ堂の東京都内13店舗での新たな実証販売が開始されるなど、取り組みはさらに広がりを見せているという。


農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/240301.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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