埼玉県三富地域の日本農業遺産 『武蔵野の落ち葉堆肥農法』を生活クラブ生協・埼玉が推進

生活クラブ生活協同組合・埼⽟は、日本の農業遺産である 『武蔵野の落ち葉堆肥農法』 を続ける埼玉県三富地域の環境保全を目的に、平地林7,152平方メートルの取得を発表した。

平地林の落ち葉はきの様子

『武蔵野の落ち葉堆肥農法』 とは?


『武蔵野の落ち葉堆肥農法』 は、埼玉県川越市、所沢市、ふじみ野市、三芳町で、およそ360年以上前から行われてきた独自の農法。

武蔵野台地に位置するこの地域はもともと火山灰土で厚く覆われ、作物が育ちにくい環境だった。そこで地元に住まう人々は多くの木を植え、平地林として育て、木々の落ち葉を掃き集めて堆肥にすることで土壌を改良し、今日に至るという。

 同県の三富地域 (三芳町 上富地域、所沢市 中富地域、下富地域の総称)では、現在もこの農法が受け継がれおり、平地林が各市町全域に、その面影を多く残しているなど、景観や生物の多様性を育むシステムは、地域の宝として今も生き続けている。

三富地域の環境保全活動を ”さらに一歩進める” 


今回の平地林の購入は、これまで自治体や三富地域の農業者と共に進めてきた、「武蔵野の落ち葉堆肥農法」 を続ける三富地域の環境保全活動を、”さらに一歩進める”ためのものだという。

埼⽟県西部の三富地域は、⾸都圏30km圏内にありながら、320年前の江戸時代に開拓された「三富新田」を中心に、農地と平地林の織りなす武蔵野の景観が広がっている。ここは、痩せた土地に木々を植えて平地に林を育て、落ち葉を集めて堆肥として畑に入れ、土壌改良を行うことで安定的な農業生産を実現してきた地域だ。

2017年には、「景観や生物の多様性を育むシステムが、今もなお継承されている」として 『日本農業遺産』 にも認定されており、また埼⽟県では  『ふるさとの緑の景観地』 にも指定、緑地保全を目的とした活動も行われている。

進行する平地林の荒廃

現在の三富地域は、化石燃料や化学肥料の普及により、薪炭林としての利用や、堆肥となる落ち葉の供給源等としての役割が減少したことから、平地林の荒廃が進み、また都市化に伴う土地需要や、相続等を契機とした土地の売却によって、平地林の木が切られるなど、資材置き場や倉庫としての開発が進んでいるという。

また、1999年に起きた所沢ダイオキシン報道など、廃棄物焼却施設をめぐる問題も地域の農家や生活者の不安を広げたそうだ。

生活クラブ生活協同組合・埼⽟では、この問題を 「農家と都市住民の分断、大量のゴミを出す暮らしの在り方を問う事」 ととらえ、およそ20年にわたり、地元の農家とともに、落ち葉掃きや下草刈りなど、定期的な保全活動を続けてきた。

狭山市上⾚坂7,152平方メートルの平地林を 学校法人山脇学園 から購入

今回取得した平地林は、狭山市上⾚坂にある7,152平方メートルの土地で、通称くぬぎ山と呼ばれる、駒が原特別緑地保全地区の隣地にある。
ともに環境保全活動を行っている「任意団体 エコネットくぬぎ山」と無償使用の契約を結ぶ「学校法人 山脇学園(東京都港区)」から購入したという。

左:山脇学園理事長 山脇氏 右:生活クラブ生協・埼玉理事長 木下山脇学園 理事長の山脇氏(左)と生活クラブ生活協同組合 埼玉 理事長の山下氏(左)

三富地域の持つ価値を発信


生活クラブ生活協同組合・埼⽟では、三富地域の平地林の保全を山脇学園から引継ぎ、開発を食い止めることで、江戸時代に開拓された「三富新田」の持つ多面的な価値を守り、発信していく考えを示している。


<参考リンク>
生活クラブ生活協同組合・埼⽟
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
エコネットくぬぎ山
学校法人山脇学園
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
パックごはん定期便