夏の異常気象に備えるためのスマート農業技術 5選
夏の高温、急な大雨、少雨、強風など、農業現場では「これまで通りの段取りでは読みにくい」ケースが増えています。
異常気象への対応というと、遮光資材の設置や暑さに強い品種への見直し、作業時期・時間帯の調整などが思い浮かびます。ただ、近年はスマート農業技術を使って、圃場の状態を把握したり、作業負担を減らしたりする方法も広がっています。
そこで今回は、異常気象への備えとして活用を検討したい、スマート農業技術を5つピックアップしてご紹介します。

異常気象への対応でまず重要になるのが、圃場で何が起きているかを早めに把握することです。
気温、湿度、日射量、土壌水分、地温、水位などをセンサーで記録できれば、作物の変化を目で見る前に、環境の変化を確認しやすくなります。特に高温期は、朝の見回りでは問題がなくても、日中にハウス内温度が大きく上がったり、土壌水分が急に下がったりすることがあります。
こうした変化をスマートフォンやパソコンで確認できるようにしておくと、かん水、換気、遮光、防除の判断を補助できます。経験や勘を置き換えるものではなく、これまでの観察にデータを重ねることで、判断の遅れを減らす使い方が現実的です。現在実用化されている多くのセンサーは、ネット回線を通してスマホなどでデータを確認しやすくなっています。
また、記録が残ることも大きな利点です。「高温が続いた年に、どの圃場で、どのタイミングで生育が落ちたか」を振り返れるため、翌年以降の管理にも生かしやすくなります。
高温や少雨が続く時期は、水管理の重要性が高まります。一方で、毎日の見回りや水口の開閉は負担が大きく、圃場が分散している場合は移動時間もかかります。
そこで活用が進んでいるのが、自動かん水装置や水田の水管理システムです。水位、水温、土壌水分などを専用のセンサーで測定し、スマートフォンで確認できるものや、設定した水位に応じて給水を遠隔操作・自動制御できるものがあります。
水田では、高温時の水管理や、低温が心配される時期の深水管理など、作物の状態に合わせた細かな調整が求められます。水管理システムを使えば、離れた圃場の状態を確認しやすくなり、見回りの回数を減らせる場合があります。
農研機構のスマート農業実証プロジェクトでは、水田水管理システムについて、圃場の水位・水温などをセンサーで自動測定し、スマートフォンなどで確認できる技術として紹介しています。また、作業舎から離れた水田で見回りを減らしたことで、水管理にかかる作業時間が平均で80%短縮できた事例も示されています。
ただし、導入前には水路の形状、電波状況、ゴミ詰まりの可能性、電源、冬季の管理方法などを、自身の環境で実施できるか確認する必要があります。条件が合えば有力な選択肢になりますが、圃場ごとの事前確認は欠かせません。

ハウス栽培では、外気温以上に施設内の環境が作物に影響します。高温、過湿、日射不足、夜温の高さなどが重なると、着花・着果、肥大、品質に影響が出ることがあります。
施設園芸の環境制御システムは、温度、湿度、CO2濃度、日射量などを測定し、換気、遮光、暖房、細霧冷房、循環扇などの操作を補助する技術です。異常気象が起きたときに、ハウス内でどのような変化が起きているかを把握しやすくなります。
たとえば、夏場に日射が強すぎる場合は遮光を使い、湿度が高い場合は換気や循環を調整します。外気温だけで判断するのではなく、施設内の実際の数値を見ながら管理できる点が特徴です。
農林水産省のスマート農業技術カタログでも、施設園芸向けの技術として、センサーや環境制御、データ蓄積に関する技術が整理されています。
一方で、環境制御は設定次第で作物への影響が大きく変わります。導入すれば自動的に最適になるというよりも、作物の反応を見ながら設定を調整し、地域や品目に合った使い方を探る技術と考えるのがよいでしょう。

異常気象の影響は、圃場全体に均一に出るとは限りません。乾きやすい場所、排水が悪い場所、風が当たりやすい場所、日射の当たり方が違う場所など、圃場内でも生育差が出ることがあります。
ドローンや人工衛星によるセンシングは、こうしたばらつきを把握する技術です。上空から撮影した画像をもとに、生育のムラ、湿害や乾燥の影響が出やすい場所、病害虫被害の可能性がある場所などを確認する手がかりになります。
人の目による見回りは欠かせませんが、広い圃場や複数の圃場を管理している場合、すべての圃場同じ頻度で細かく見るのは簡単ではありません。センシングだけでは賄えないとしても、重点的に確認すべき場所を絞り込みやすくなります。
農林水産省は、農業用ドローンについて、農薬・肥料散布に加え、搭載されているカメラなどを用いて作物の生育状況をセンシングする用途を紹介しています。
ただし、撮影した画像からAIによる分析だけで判断を完結させるのではなく、その情報をもとに実際の圃場確認や過去の作業記録と合わせて見ることが大切です。
異常気象への対応では、作物だけでなく作業者の安全も重要です。猛暑のなかでの草刈り、防除、運搬、見回りは、身体への負担が大きくなります。現場の作業者の高齢化が顕著な場合は、より深刻度の高い悩みと言えます。
これらを解決するには、自動走行トラクター、ロボット草刈機、ラジコン草刈機、自動運搬機、スマート防除機など、作業者が圃場内で長時間動き続ける負担を減らす技術が検討できます。特に夏場は、作業時間の短縮や、危険な場所での作業を減らすことが大きな意味を持ちます。
たとえば、畦畔や傾斜地の草刈りのように、暑さに加えて転倒や機械操作のリスクがある場合は、ロボットやラジコン機を使うことで、人が直接入り続ける時間を減らせます。防除作業でも、ドローンによる除草剤散布や自走式の機械を使えば、作業者が薬液を背負って圃場を歩く時間を抑えやすくなります。
ただし、農業における現状のロボット技術は、すべての環境に万能な製品はありません。便利そうだからと傾斜、段差、障害物、通信環境、作業幅、機械の保管場所などを確認しないまま導入すると、圃場条件との相性問題が生じて思ったように使えないことも。導入前には必ず、実際の自分の圃場で使えるかどうかを確認することが重要です。
異常気象そのものは、人間の力で止めることはできません。しかし、圃場で何が起きているかを早く知ること、作業のタイミングを見直すこと、危険な作業を軽減することはできます。
現状のスマート農業技術は、すべての農作業を自動化し、人間の代わりに行えるようにするものではなく、判断材料を増やし、作業負担を分散するための道具です。センサー、水管理、環境制御、センシング、ロボット技術などのうち、自分の圃場でどの技術が役立つかを見極めることが、農家側に求められます。
まずは、近年一番判断に迷いがちな作業や、負担が大きかった作業を洗い出すところから始めると、導入すべきスマート農業技術の優先順位が見えやすくなるでしょう。
参考資料
農林水産省|スマート農業技術カタログ
農研機構|スマート農業実証プロジェクト
農研機構|スマート農業実証プロジェクト 水田水管理システム
農林水産省|スマート農業技術カタログ(施設園芸)
農林水産省|農業用ドローン
気象庁|日本の気候変動2025
気象庁|エルニーニョ/ラニーニャ現象
異常気象への対応というと、遮光資材の設置や暑さに強い品種への見直し、作業時期・時間帯の調整などが思い浮かびます。ただ、近年はスマート農業技術を使って、圃場の状態を把握したり、作業負担を減らしたりする方法も広がっています。
そこで今回は、異常気象への備えとして活用を検討したい、スマート農業技術を5つピックアップしてご紹介します。
夏場のスマート農業技術(1) 気象・圃場データの見える化
異常気象への対応でまず重要になるのが、圃場で何が起きているかを早めに把握することです。
気温、湿度、日射量、土壌水分、地温、水位などをセンサーで記録できれば、作物の変化を目で見る前に、環境の変化を確認しやすくなります。特に高温期は、朝の見回りでは問題がなくても、日中にハウス内温度が大きく上がったり、土壌水分が急に下がったりすることがあります。
こうした変化をスマートフォンやパソコンで確認できるようにしておくと、かん水、換気、遮光、防除の判断を補助できます。経験や勘を置き換えるものではなく、これまでの観察にデータを重ねることで、判断の遅れを減らす使い方が現実的です。現在実用化されている多くのセンサーは、ネット回線を通してスマホなどでデータを確認しやすくなっています。
また、記録が残ることも大きな利点です。「高温が続いた年に、どの圃場で、どのタイミングで生育が落ちたか」を振り返れるため、翌年以降の管理にも生かしやすくなります。
夏場のスマート農業技術(2) 自動かん水・水管理システム
高温や少雨が続く時期は、水管理の重要性が高まります。一方で、毎日の見回りや水口の開閉は負担が大きく、圃場が分散している場合は移動時間もかかります。
そこで活用が進んでいるのが、自動かん水装置や水田の水管理システムです。水位、水温、土壌水分などを専用のセンサーで測定し、スマートフォンで確認できるものや、設定した水位に応じて給水を遠隔操作・自動制御できるものがあります。
水田では、高温時の水管理や、低温が心配される時期の深水管理など、作物の状態に合わせた細かな調整が求められます。水管理システムを使えば、離れた圃場の状態を確認しやすくなり、見回りの回数を減らせる場合があります。
農研機構のスマート農業実証プロジェクトでは、水田水管理システムについて、圃場の水位・水温などをセンサーで自動測定し、スマートフォンなどで確認できる技術として紹介しています。また、作業舎から離れた水田で見回りを減らしたことで、水管理にかかる作業時間が平均で80%短縮できた事例も示されています。
ただし、導入前には水路の形状、電波状況、ゴミ詰まりの可能性、電源、冬季の管理方法などを、自身の環境で実施できるか確認する必要があります。条件が合えば有力な選択肢になりますが、圃場ごとの事前確認は欠かせません。
夏場のスマート農業技術(3) 施設園芸の環境制御
ハウス栽培では、外気温以上に施設内の環境が作物に影響します。高温、過湿、日射不足、夜温の高さなどが重なると、着花・着果、肥大、品質に影響が出ることがあります。
施設園芸の環境制御システムは、温度、湿度、CO2濃度、日射量などを測定し、換気、遮光、暖房、細霧冷房、循環扇などの操作を補助する技術です。異常気象が起きたときに、ハウス内でどのような変化が起きているかを把握しやすくなります。
たとえば、夏場に日射が強すぎる場合は遮光を使い、湿度が高い場合は換気や循環を調整します。外気温だけで判断するのではなく、施設内の実際の数値を見ながら管理できる点が特徴です。
農林水産省のスマート農業技術カタログでも、施設園芸向けの技術として、センサーや環境制御、データ蓄積に関する技術が整理されています。
一方で、環境制御は設定次第で作物への影響が大きく変わります。導入すれば自動的に最適になるというよりも、作物の反応を見ながら設定を調整し、地域や品目に合った使い方を探る技術と考えるのがよいでしょう。
夏場のスマート農業技術(4) ドローン・衛星センシングによる生育確認
異常気象の影響は、圃場全体に均一に出るとは限りません。乾きやすい場所、排水が悪い場所、風が当たりやすい場所、日射の当たり方が違う場所など、圃場内でも生育差が出ることがあります。
ドローンや人工衛星によるセンシングは、こうしたばらつきを把握する技術です。上空から撮影した画像をもとに、生育のムラ、湿害や乾燥の影響が出やすい場所、病害虫被害の可能性がある場所などを確認する手がかりになります。
人の目による見回りは欠かせませんが、広い圃場や複数の圃場を管理している場合、すべての圃場同じ頻度で細かく見るのは簡単ではありません。センシングだけでは賄えないとしても、重点的に確認すべき場所を絞り込みやすくなります。
農林水産省は、農業用ドローンについて、農薬・肥料散布に加え、搭載されているカメラなどを用いて作物の生育状況をセンシングする用途を紹介しています。
ただし、撮影した画像からAIによる分析だけで判断を完結させるのではなく、その情報をもとに実際の圃場確認や過去の作業記録と合わせて見ることが大切です。
夏場のスマート農業技術(5) 自動走行・ロボット技術で危険な作業を減らす
異常気象への対応では、作物だけでなく作業者の安全も重要です。猛暑のなかでの草刈り、防除、運搬、見回りは、身体への負担が大きくなります。現場の作業者の高齢化が顕著な場合は、より深刻度の高い悩みと言えます。
これらを解決するには、自動走行トラクター、ロボット草刈機、ラジコン草刈機、自動運搬機、スマート防除機など、作業者が圃場内で長時間動き続ける負担を減らす技術が検討できます。特に夏場は、作業時間の短縮や、危険な場所での作業を減らすことが大きな意味を持ちます。
たとえば、畦畔や傾斜地の草刈りのように、暑さに加えて転倒や機械操作のリスクがある場合は、ロボットやラジコン機を使うことで、人が直接入り続ける時間を減らせます。防除作業でも、ドローンによる除草剤散布や自走式の機械を使えば、作業者が薬液を背負って圃場を歩く時間を抑えやすくなります。
ただし、農業における現状のロボット技術は、すべての環境に万能な製品はありません。便利そうだからと傾斜、段差、障害物、通信環境、作業幅、機械の保管場所などを確認しないまま導入すると、圃場条件との相性問題が生じて思ったように使えないことも。導入前には必ず、実際の自分の圃場で使えるかどうかを確認することが重要です。
スマート農業は“異常気象を読む力”を補う技術
異常気象そのものは、人間の力で止めることはできません。しかし、圃場で何が起きているかを早く知ること、作業のタイミングを見直すこと、危険な作業を軽減することはできます。
現状のスマート農業技術は、すべての農作業を自動化し、人間の代わりに行えるようにするものではなく、判断材料を増やし、作業負担を分散するための道具です。センサー、水管理、環境制御、センシング、ロボット技術などのうち、自分の圃場でどの技術が役立つかを見極めることが、農家側に求められます。
まずは、近年一番判断に迷いがちな作業や、負担が大きかった作業を洗い出すところから始めると、導入すべきスマート農業技術の優先順位が見えやすくなるでしょう。
参考資料
農林水産省|スマート農業技術カタログ
農研機構|スマート農業実証プロジェクト
農研機構|スマート農業実証プロジェクト 水田水管理システム
農林水産省|スマート農業技術カタログ(施設園芸)
農林水産省|農業用ドローン
気象庁|日本の気候変動2025
気象庁|エルニーニョ/ラニーニャ現象
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