レベラーでここまで変わる──均平化を支える機械の種類と選び方

田んぼでの農作業は、代掻き、田植え、除草、収穫……と、毎年同じ作業の繰り返しのようにも思えますが、その中で小さな悩みの積み重ねが起きていることがよくあります。

たとえば、苗の生育がそろわなかったり、肥料の効きにムラがあったり、収量が安定しなかったり……。「どうにかしたいけれど、何から手をつければいいのかわからない」そう感じている方も多いのではないでしょうか。

実はこれらの課題の背景には、見た目では判断が難しい圃場の“わずかな凹凸”が潜んでいることがあります。このような場合に有効な作業として近年注目されているのが、圃場の均平化(レベリング)です。

本記事では、平らで管理しやすい圃場を実現するためのレベラー(均平機)の種類・特徴・向き不向きなどを丁寧に整理していきます。



水が回らない理由は“見えない凹凸”?──均平化が水稲経営の土台になる理由


圃場の均平化は、単なる作業効率化ではなく、水稲経営の根本を支える基礎工事と言えます。目で見た限りでは平らに感じる田んぼでも、実際には数センチの高低差が存在することが多く、これが水深ムラや雑草の発生、生育不ぞろいの原因になることがあります。こうした凹凸は、日々の作業の中で“目に見える乱れ”として現れることがあります。

たとえば、凹凸の多い圃場では、特定のラインだけ雑草が増えたり、苗の背丈が波打つように不ぞろいになったり、水の乾き方が場所によって極端に異なったりすることがあります。これらは、圃場の均平性が乱れているサインとしてよく見られる傾向です。

こうした小さな乱れが積み重なると、代かきに時間がかかったり、田植え後の水管理が落ち着かなかったりと、日々の作業負担にもつながります。だからこそ、均平化に取り組むことで、圃場全体の安定性を高める可能性が広がっていきます。

では、その均平化を実現するための“レベラーの選び方”について、具体的に見ていきましょう。


作業時間を減らしたい──まず押さえたい“レベラーの種類”


均平化を進めるうえで中心となるのがレベラーです。しかし、種類によって得意な圃場条件や作業スタイルが異なるため、まずは全体像を把握することが大切です。

ここでは、手動式・レーザー式・GNSS式の3タイプを、実際の作業をイメージしながら比較していきます。


1. 手動式レベラー|“まず始めたい”生産者の有力な選択肢


手動式は最もシンプルな構造で、トラクターの油圧を使ってブレードを上下させるタイプです。導入しやすく、初めて均平化に取り組む生産者にとって現実的な選択肢となります。

ただし、仕上がりはオペレーターの技量に左右されるため、広い圃場や凹凸が多い圃場では作業時間が長くなったり、仕上がりに差が出る可能性があります。

向いているケースの例
  • 小区画で凹凸が比較的少ない
  • まず最低限の均平化を試したい
  • 導入費を抑えたい

一方で、均一な仕上がりを求める場合は、次に紹介する自動制御タイプが候補にあがります。


2. レーザー式レベラー|“誰が作業しても同じ仕上がり”を目指すなら


レーザー式は、圃場の外周に設置したレーザー発光器が水平の基準ラインを照射し、そのラインを受光器が読み取りブレードの高さを自動調整する仕組みです。これにより作業者は高さを常に意識する必要がなく、作業者の腕に依存しない均一な仕上がりが期待できます。

向いているケースの例
  • 中〜大区画
  • 凹凸が多く、水深が安定しにくい圃場

一度でしっかり仕上げたい均平精度を重視する生産者にとって、有力な選択肢の一つとなります。


3. GNSS(衛星測位)式レベラー|“地形を読み解く”次世代の均平化


GNSS(Global Navigation Satellite System)式は、衛星からの信号を使ってレベラーの受信機の高さをリアルタイムで測定し、その変化から圃場の高低差を推定する仕組みです。レーザー式がレベラーの“水平を保つ”のに対し、GNSS式は圃場のどの地点が高く、どの地点が低いかを位置情報から把握しながら作業できる点が特徴です。

また、GNSS式の最大の利点は、圃場全体の地形を記録・可視化できる点にあります。作業中に取得した標高データをもとに、どの地点が高く、どこが低いかを数値で把握できるため、均平化だけでなく圃場改善の計画にも活用できるのが特徴です。

均平化作業が“その場限り”にならず、次回以降の作業や水管理の設計にもつながるという点で、初期投資は大きくなりますが、長期的な圃場づくりを目指す生産者にとって有力な選択肢となります。

向いているケースの例
  • 大区画・大規模経営
  • 圃場全体に傾斜が続く
  • データを活用して圃場を継続的に改善したい


導入が難しいときの“もう一つの選択肢”──委託サービスという柔軟な始め方



ここまでレベラーの種類を紹介してきましたが、「トラクターの馬力が足りない」「初期投資が大きくて踏み切れない」 「まずは効果を見てから判断したい」というようなお悩みもあるのではないでしょうか。

そんな時に検討したいのが、均平化の委託サービスです。

委託サービスを利用することで、最新機械を必要な時だけ使えたり、自分の圃場に合う仕上がりを事前に確認できたりと、導入判断の材料にもなります。

特に、

  • 大区画だけ委託し、残りは自分で作業する
  • 一度プロの仕上がりを見てから導入を検討する

といった柔軟な使い方も可能です。

レベラー導入の前に「本当に必要か?」を見極めるための、有力な選択肢の一つと言えるでしょう。


“経営の土台”を整える──今日から始められる「レベラー選びの準備ステップ」


均平化は、水管理・代かき・苗の生育・作業時間・燃料コスト──水稲経営のあらゆる場面に影響する“土台づくり”です。

そして、その第一歩となるレベラー選びは、圃場の条件や経営スタイルによって最適解が変わります。手動式・レーザー式・GNSS式のどれもが、状況に応じて有力な選択肢となり得ます。

まずは圃場の状態を知ること。

水深ムラの写真を撮る、圃場の傾斜を把握する、委託サービスの内容を調べる──こうした小さな行動が、来シーズンの作業を大きく変えるきっかけになります。

「どこから始めればいいのかわからない」と感じていた方も、今日からできる一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。その積み重ねが、あなたの圃場をより効率的で、より安定した生産へと導いてくれるはずです。





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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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