ネギ防除の負担、どう見直す? ──慣行防除とドローン防除を徹底比較

梅雨入り前の蒸し暑い朝、足元に薬液がかからないよう気を配りながら、条間を何度も往復する。ネギの防除は収穫や定植ほど目立つ作業ではありませんが、作期を通じて何度も繰り返される大切な工程です。

ネギは見た目の美しさが商品価値に直結しやすい作物です。そのため、防除のタイミングがその後の品質や出荷調整に影響を与え、丁寧な管理が求められます。一方で、繁忙期と重なると「時間が足りない」と感じる場面も少なくないでしょう。

そんなネギの防除に、すでに水稲ではかなり定着しているドローン防除が活用され始めています。ネギでも短時間で効果的に散布できると好評なようです。

今回は、従来のやり方と同じ「慣行防除」と、ほぼ自動的に散布を行える「ドローン防除」という選択肢を比較しながら、これからのネギの防除体系と可能性を整理していきます。



ネギの防除回数が多くなる理由|病害虫リスクと栽培特性


ネギは栽培期間が長く、常に病害虫のリスクと向き合わなければならない作物です。防除の負担を感じやすい背景には、その特性があります。

病害では、葉枯れ性の症状や腐敗系の病気が見られることがあり、特に湿度の高い時期などは発生の兆候に注意が必要です。

害虫については、吸汁性や食害性のものが発生しやすく、葉に傷が残ると外観に影響してきます。

ネギは葉そのものが商品です。初期の防除が遅れると、その影響が生育後半まで続いてしまいます。また、連作や周年栽培を行う環境では、病害虫が圃場内に残りやすくなってしまうという側面も考慮が必要です。

こうした事情から、ネギの防除は栽培管理の中でも回数が重なりやすい工程として位置づけられています。

薬剤費だけじゃない|ネギ防除の隠れたコストと作業設計の考え方


ネギの防除では、動力噴霧器や背負い式噴霧器が広く使われています。圃場の規模や状況によってはブームスプレーヤーと呼ばれる専用農機を活用する場合もあります。

慣行防除の良さは、導入のしやすさと、薬剤や散布量を状況に合わせて細かく調整できる点にあります。長年の経験に基づき、風向きや葉の濡れ具合を見ながら作業できることは、多くの生産者にとって安心感につながる部分でしょう。

一方で、次のような課題もあります。

  • 1回あたりの作業にかかる時間
  • 重い資材の運搬や防護具の着用による身体的な疲れ
  • 天候や人手の確保によって、予定通りの作業が難しい可能性

特に面積が広い場合や圃場が分散している場合、移動を含めて一日がかりになることも。また、経営規模が拡大すると、防除が他の作業と重なりやすくなる場面も考えられます。



慣行防除の「目に見えにくいコスト」をどう捉えるか


防除にかかるコストを考えてみると、薬剤費だけでなく、作業時間や労働力という形でもかかっています。

例えば、防除が定植や収穫のピークと重なった際、どちらを優先するか判断に迷うこともあるでしょう。その結果、作業全体の流れが少しずつ変わってしまいます。

ここで大切なのは、薬剤の使用量を減らすことではなく、「誰がどのように作業を担うか」という防除の日程やスケジュールの設計です。具体的な方法としては、

  • 自分で散布を継続する
  • 機械化や新しい技術(ドローンなど)を取り入れる
  • 外部に作業を委託する

経営規模や作期、圃場条件によっても向き合い方は変わります。経営全体の中で、防除をどのように位置づけるかという視点が参考になります。

ドローン防除の特徴とネギでの取り入れ方


ドローンによる防除では、上空から少量の薬液を散布します。機体や設定によって条件は異なりますが、条間を歩かずに作業を進められるのが特徴です。

ただし、生育初期のネギは葉が細くまっすぐ立っており、葉の枚数も少ないため、上空から散布した薬液がしっかり葉に付かないのではないか、と気にする声もあります。株が大きくなり葉の枚数が増えてくると、葉に薬液が当たりやすくなるため、一定の生育段階以降でドローン防除が活用されているケースも見られます。

とはいえ、すべての圃場で同じ結果になるとは限りません。風の影響や周辺の環境、ドローン操作の慣れなどによっても状況は変わります。

これまでの手作業での防除を補完する選択肢として、特定の時期や圃場でドローンを活用する、という使い分けがされているケースもあります。



ネギの慣行防除vsドローン防除|作業時間・コスト・負担の違い


どちらが優れているかを一概に決めるのは難しく、経営の状況によって適した形は異なりますが、同じ圃場で同じように散布することを前提として、比較してみると、以下のような違いが見えてきます。


慣行防除はいわば昔ながらの手作業で、個人の体力と人手が必要になります。規模が大きくなればその分だけ作業時間も必要なうえ、体力を奪われるので無限に作業できるわけではありません。ただし、個別のネギの生育状況などを確認しながら散布できるため、きめ細やかな対応ができます。

対して、ドローン防除はドローンの運搬や薬剤の補充、バッテリー交換などは必要になるものの、基本的に人が行うのはコントローラーによる設定や操作のみで、体力的な負担はほとんどありません。

規模が大きくなっても、バッテリーの追加や充電などができれば対応可能です。ただし、自分でドローンを購入する場合は、機体の購入に加えて、飛行させるための知識や研修等も必要になるため、初期投資は大きくなります。

圃場の規模だけでなく、近い将来拡大していく可能性があるかどうかで、ドローン防除の費用対効果は変わってきます。長い目で見て導入した方がいいか、短期的に慣行防除のままで乗り切るかどうかも、ひとつの経営判断です。

大切なのは、自身の経営において「どこに無理が生じているか」を見直すことです。

ドローン防除の外部委託という選択肢|初期費用ゼロで始める防除の見直し方


ドローンを自ら導入するだけでなく、作業を外部へ委託するという方法もあります。委託であれば初期費用を抑えながら、必要なタイミングだけ活用できる可能性があります。

また、航空法などの法規への対応や安全管理を専門の事業者に任せられる点も、検討材料の一つになるでしょう。

防除作業が日々の負担になっている場合、すべてを自分だけで担わないという考え方も、経営の整理につながることがあります。

ネギの防除は単なる作業ではなく、ネギの営農経営設計の一部です。慣行防除には長年培われた確かな技術があります。そのうえで、時間配分や負担のバランスを見直すことで、日々の作業の流れが変わる可能性もあります。

例えば、

  • 年間の防除回数と作業時間を整理する
  • 他の作業と重なりやすい時期を振り返る
  • 一部の圃場で外部委託を試験的に検討する

といった視点から現状を見直すと、経営の整理につながる場合もあります。

これまで大切にしてきた防除の技術に、新しい視点を添えてみること。それが、これからのネギ経営を考えるきっかけになるかもしれません。

ネギ防除の負担を軽減するために
ドローンによる防除サービスの活用も選択肢の一つ。ネギ特有の撥水性や葉折れ対策に対応し、安全でムラの少ない農薬散布を実現します。農家側が準備すべきこと、予算や実施タイミングなど、気になるギモンに答えます。
▶︎ネギのドローン防除サービスを見る
 
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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