AIによるスマート農業の事例に注目 「第2回AI・人工知能EXPO」レポート

2018年4月4日から6日までの3日間、東京ビッグサイトで「第2回AI・人工知能EXPO」が開催された。3日間の来場者数は約4万6,000人で大盛況のうちに幕を閉じた。ますます注目度が高まるAI。その影響は、展示会の来場者にも如実に表れている。

そんなAI EXPOで大々的に農業をテーマにしたブースを出展した企業がある。それが、株式会社オプティムだ。「農業×IT」を打ち出すオプティムは、一体どのような取り組みを行っているのか。出展社講演会が行われた4月6日の様子を取材した。


出展社セミナーは二重・三重の人垣ができる大盛況

4月6日のAI・人工知能EXPO最終日は開場当初から多くの人々が来場していた。出展社セミナーが行われたのは、入口から一番遠い場所にもかかわらず、席は満席でその周りは二重、三重で人垣ができるほどの盛況ぶりだ。

オプティムの出展社セミナーで講演したのは、執行役員であり、AI、IoT事業責任者も務める山本大祐氏だ。講演のテーマは「IT企業が枝豆を売るワケ」。はじめにオプティムの会社やドローンによる空撮技術を紹介した後、本題の枝豆の話に移った。

「このプロジェクトは、佐賀県の農家様と協力して行いました。当社が提供しているピンポイント農薬散布テクノロジーを使って、無駄に農薬を散布しないことで、残留農薬を極力少なくした野菜を作ろうと取り組みました」(山本氏)


ピンポイント農薬散布テクノロジーでは、オプティムが持つ高い技術力が存分に活用されている。山本氏は以下のように説明する。

「まず、農薬を散布する箇所を特定するため、ドローンが自動飛行で畑全体を空撮します。次に、その空撮したデータをAIが画像解析して、害虫がいる位置を特定。その結果を踏まえて、害虫がいる位置に向けてドローンを飛ばし、ピンポイントで農薬を散布します」

従来の散布方法では、害虫がいると予想される場合、被害を受けていない作物も含めて広範囲に渡って散布せざるをえなかった。たしかに被害を抑えるうえでは効果的だが、農薬の使用料も多くなってしまう。しかしこのピンポイントにより、枝豆の例でははるかに高い効果を生み出している。

「今回の例では、枝豆に残る残留農薬はほとんど検出されませんでした。また、実際に使用した農薬も従来の10分の1以下に抑えることができたので、生産者様の負担も軽減することができます」

残留農薬がなくおいしい枝豆は、ドローン活用という付加価値を上乗せして、福岡三越で販売した際には見事完売。最新テクノロジーの活用によって実現したソリューションを用いることで、農業の新たな可能性を提示した。しかし、オプティムの取り組みは、これでは終わらない。山本氏は「今回、枝豆で行ったこの取り組みを、米生産にも広げます。その取り組みの一つとして、ピンポイント農薬散布テクノロジーを全国の米生産者様に無料提供いたします。さらに、そこで生産された米は、オプティムが全量買取いたします」と発表。スマート農業への取り組みが、今後ますます加速しそうだ。

また、講演ではオプティムがモノタロウと共同で出店している「無人店舗」についても紹介された。佐賀大学内に完成した無人店舗は、Amazon Goのような無人コンビニを思わせる作りになっており、農作業に必要な軍手や作業服を購入することができるというのだ。IDをかざし、欲しい商品を選んでスマートフォンで決済してお店を出るというのは、まさに近未来の小売店の姿を表している。

「おかげさまで、すでに多数のメディアに取り上げられております。よく『Amazon Goと何が違うのか?』というご質問をいただきますが、この無人店舗の決済はバーコードを利用しています。これにより、決済をより確実に行えるよう工夫しております」と語る山本氏。このような無人店舗にもオプティムの技術は活かされている。

自走ロボットとAIによりトマトの収穫時期を正確に予測

AI・人工知能EXPOのオプティムブースでは、最新のテクノロジーを駆使して農業の生産性を大きく変えるであろうソリューションが展示され、多くの来場者の注目を集めていた。その中でも、特筆すべきものを2つ紹介したい。

一つは、画像解析技術を用いてトマトの収穫時期を正確に予測するというソリューションだ。


まず、農園内をカメラを備えたロボットが走行してトマトを撮影する。それをAIが自動で分析して、収穫時期を判別する。これにより、人間が一つずつ確かめる手間を削減することができるのだ。撮影するカメラは360度を一度に撮影し、移動しながら撮影することで、葉の裏側にあるトマトも漏らさず確認できるという。


展示の時点ではまだ研究中の技術だったが、山本氏によれば「学習データを十分確保してAIの予測精度もかなり上がってきました。活用される機会も増えてきており、パッケージとして提供できる時期も近いと考えております」という。今、大きな話題を呼んでいる画像解析。農業で当たり前のように活用される日も案外近いのではないだろうか。

ドローン活用で変わる農薬散布と空撮

もう一つ展示されていたのは、農薬散布と空撮を行うためのドローンだ。先に紹介した講演会でもドローンの活用について触れられていたが、オプティムブースでは実際に2種類のドローンを展示していた。


この2種類のドローンの違いについて、山本氏はこのように説明する。

「最大の違いは飛行時間です。大型のバッテリーを積める固定翼ドローンの方が飛行時間は長く、広範囲の空撮を行う際に利用します。このように、用途に応じてドローンを使い分けていきます」(山本氏)


ドローンによる空撮データと農場内にあるセンサー情報を組み合わせることで、作物の生育予測も可能になる。これにより、効率的で高度な圃場(ほじょう)管理が実現できるという。すでに2017年12月から、ソフトバンク株式会社とオプティムの共同で、北海道帯広市で実証実験も行われている。ドローン活用の可能性は今後さらに広がるだろう。

クラウドAPIの開放により企業との協業も視野に

最新テクノロジーをフルに活用できる高い技術力を持つオプティム。今後の展望について、山本氏はこのように語った。

「当社としては、技術力を活かして農業をはじめあらゆる業界のIT化を支援してまいります。また、当社のIoTプラットフォームであるクラウド技術『OPTiM Cloud IoT OS』はAPIを開放しており、サードパーティーとして開発にご協力いただける企業様も募集しております。オープンイノベーションによって、世の中を大きく変えていくことも視野に入れております」

担い手の高齢化や人手不足といった大きな課題に直面している日本の農業。しかし、これらの課題は最新テクノロジーで解決できるのではないだろうか。いや、AIやIoT、ドローンなどを活用したスマート農業を実現することで、課題を解決するだけでなく、日本の農業が大きく進化するかもしれない。

オプティムはそれを実現すべく、今後も自社の技術力を磨き続ける。

<参考URL>
AI・人工知能 EXPO - AI・人工知能 EXPO | リード エグジビション ジャパン
農業×IT OPTiMが描く、スマート農業。 | OPTiM
クローラーでハウス内の作物をデータ解析 | Agri House Manager
固定翼・マルチコプター・陸上走行型ドローン | OPTiM
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WRITER LIST

  1. 蒼井ネコ
    農学系の兼業ライター。某大学農学部、某農業レストラン、某飲料会社商品企画を経て、現在は某マルシェアプリでwebマガジン編集として働きながら、猫様のお世話をしている。
  2. 大坪雅喜
    おおつぼまさのぶ。1973年長崎県佐世保市生まれ。FARM DOI 21代表(農業者)・アグリアーティスト。 早稲田大学第一文学部史学科考古学専修卒業。学生時代に考古学、水中写真、自然農という世界を覗き込む。2006年9月、義父が営む農業の後継者として福岡県大川の地で就農。農業に誇りを持ち、未来には普通となるような農業の仕組みやサービス(カタチ)を創造していくイノベーションを巻き起こしたいと考える。縁のある大切な人たち(家族)と過ごす物心ともに満たされた暮らしの実現こそが農業経営の最終的な目的。現在、佐賀大学大学院 農学研究科 特別の課程 農業版MOT 在籍中。
  3. 柴田真希
    管理栄養士。㈱エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。27年間悩み続けた便秘を3日で治した雑穀や米食の素晴らしさを広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メー カーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。『私は「炭水化物」を食べてキレイにやせました。』(世界文化社)、『はじめての酵素玄米』(キラジェンヌ)など著書多数。
  4. 大城実結
    おおしろ みゆう。フリーランス編集ライター、大城文筆事務所所長。一次産業ほか地域文化、アウトドアなどお天道様系分野を専門に編集・執筆している。自転車で鍛えた脚力を活かし、農家さんのお手伝いをしながらインタビュー取材を積極的に行う。玉掛け免許と床上式操作クレーン免許所持。
  5. 井中優治
    いちゅうゆうじ。株式会社収穫祭ベジプロモーター。福岡県農業大学校卒。オランダで1年農業研修。元広告代理店勤務を経て、新規就農6年目。令和元年5月7日に株式会社収穫祭を創業。主に農業現場の声や九州のイベント情報などを発信している。