育苗いらずのドローン播種が当たり前に? 茨城県高萩市で“条を刻みながら播種”可能な農業用ドローンを実演
担い手不足の地域農業に新技術で光明
茨城県高萩市で5月7日、株式会社オプティム・ファームによる農業用ドローンでの直播実演会が開催され、自治体関係者や農業者、報道陣などが見守る中、条を作りながら種籾を打ち込む独自機構が搭載された直播ドローンが登場した。

オプティム・ファームの親会社である株式会社オプティムが開発したドローンは、従来の移植栽培ではなく、直播(じかまき)による水稲栽培を効率的かつ精密に行うために開発されたもの。自動飛行で正確に条を刻みながら湛水圃場に播種を行う。ドローン直播で大きな課題とされてきた鳥害や風の影響を抑える工夫として、単に散播するだけでなく1〜2cmの深さに打ち込む機構も搭載。これにより、これまでの育苗・移植による田植えと比較して、圃場条件にはよるが8〜9割程度の収量は確保できるという。

ドローンの飛行自体もコントローラーで操作する必要はなく、スマートフォン操作で簡単に制御できる設計となっており、高萩市内の高校生らも見学に訪れるなど、次世代を担う若者へのスマート農業普及にもつながりそうだ。

実演した「ドローン湛水条播技術」は、高齢化と担い手不足に悩む地域農業にとって、導入ハードルが低く効率的なソリューションとして注目されている。

会場には、茨城県の大井川和彦知事も視察に訪れ、「若者が自立して営農できる環境を整えることが、儲かる農業への第一歩」と期待を語った。

オプティム・ファームが農業の未来を提案する
オプティム・ファームは、2023年にAI・ロボティクスを用いた農業DXに注力するため、オプティム自ら営農を行う法人として設立。2025年5月現在、栃木県宇都宮市と栃木市、茨城県の古河市、そして高萩市を起点として3年目を迎えた。
農業生産者の悩みにもっと寄り添うために──オプティム・ファームが目指す農業DXの次の一手
https://smartagri-jp.com/smartagri/6893
スマート農業技術の研究開発を進めるオプティムの特徴を生かし、自治体の課題に技術で寄り添い、現場から農業の未来を創るモデルケースとして営農を行っている。
特に稲作に関しては、播種ドローンを活用することにより、作業人数の削減や時間短縮に加え、苗作りや水管理の手間を省略できる点が実演で強調された。また、播種機が入れないような中山間地や土壌が緩い圃場でも播種ができると期待されている。
さらに、播種だけでなく、生育状況のセンシングや病害虫の検出と防除にも活用。播種はあくまで同社が持っているスマート農業技術の中のひとつであり、AIなどを活用することで若手でも担い手になれる営農支援を総合的に行っていくという。
会場周辺では引き続き土地改良事業が行われており、高萩市の大部勝規市長は「若い方たちが自給自足できるような農業を進めていきたい」と語った。

農業DX企業と自治体の協力はスマート農業の普及に不可欠
IT企業自らが開発した先端技術を用いて複数拠点で営農を行い、さらに自治体と連携する事例は、全国を見回してもほかにない。オプティム・ファームと高萩市のスマート農業を活用した取り組みは、今後全国の自治体から注目を集めそうだ。

農業DX事業|株式会社オプティム
https://www.optim.co.jp/business/agriculture
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