4枚プロペラで1ha10分の散布能力を持つドローン「飛助MG」がリリース

株式会社マゼックスが開発した農林水産航空協会認定機の農薬散布ドローン「飛助MG」の納品が、2019年4月1日よりスタートした。価格は99万8000円(税抜)。


農薬散布ドローン「飛助MG」の最大の特長は、ドローンの薬剤散布に不可欠と言われる翼の回転により吹き下ろされる風「ダウンウォッシュ」。無人ヘリと比較すると、ドローンは機体が軽量であるがゆえにダウンウォッシュが弱く、薬剤が風に流されてしまう傾向があることがデメリットとされていた。

しかし、『飛助DX』は、現在主流の農薬散布ドローンが採用する8枚/6枚のプロペラではなく、より強いダウンウォッシュを生み出せる4枚プロペラを採用。4枚プロペラで起きるとされるダウンウォッシュが渦巻く現象の解消には、進行方向前側のノズルから薬剤を散布し、前側のプロペラから生じたダウンウォッシュで薬剤を抑えつけながら、さらに後側のプロペラより発生したダウンウォッシュにより作物に薬剤を付着させる「前後切替」という方法を開発した(特許出願中)。

また、開発期間はおおよそ一年半かかっているが、その開発のきっかけは薬剤積載の容量変更。元々5リッターの製品はあったが、「より多く薬剤を積載したい」という要望もあり、10リッターのドローンを開発するためにスタートした。これにより、10分で1haという散布能力を発揮する。

性能に関するデータ

1. 4枚プロペラのメリット
4枚プロペラは「強いダウンウォッシュ」を発生させることができる

ドローンは軽量のため、なかなか強いダウンウォッシュが発生させにくいと言われている。しかし、大きなプロペラだと強いダウンウォッシュが発生させやすく、大きなプロペラを搭載するにはプロペラ数を少なくする必要がある。

【メリット】
  • 強いダウンウォッシュを発生させやすく、薬剤を作物の根や葉にも効率的に散布できる
  • 低回転で静か=住宅地にある畑でも早朝から作業が可能

2. ダウンウォッシュの比較
作物の根元、葉の裏まで風を送れる

【4枚プロペラの場合】

【8枚プロペラの場合】※他社製品のため、写真は加工済み

上記の比較写真にもあるように、8枚プロペラよりも4枚プロペラの方がダウンウォッシュが強い。4枚プロペラは作物の根元や葉の裏にまで風を送りこむことができている=それだけ薬剤散布の効果が表れやすい。

3. 散布ムラのデータ
無人ヘリ並の散布性能を


農林水産航空協会認定機の認定基準は変動係数「30%以下」だが、「飛助」シリーズは10.92~13.15%と認定基準を大幅に上回っている。ドローンでありながら、散布性能が高いとされる無人ヘリ並みの数値を記録している。

また、前・後進の数値にも大きな開きがないため、農薬を均一に散布できることが証明されている。

4. 「前後切替」とは
ダウンウォッシュのパワーを最大限に活用。

4枚プロペラのメリットは「強いダウンウォッシュの発生」だが、強すぎるあまりに巻き上げる渦も強く、薬剤が流れてしまうこともあった。「飛助」はその渦から抜け出すために、前進する場合は前側のノズルから、後進する場合は後側のノズルから薬剤を散布する『前後切替』を開発。強いダウンウォッシュを利用でき、薬剤を効果的に散布する。

また、使用しているノズルは農業用ではなく、きめ細かく均等に散布するように基準が定められた工業用途で知られているドイツ製のノズルを採用している。

薬剤散布における「飛助MG」のメリット

「飛助MG」のメリットとして、マゼックスは散布品質・効率性・薬剤効果の3つを挙げている。

散布品質

ドローンはダウンウォッシュが弱く、少しの風で薬剤が流れてしまうドリフト問題が課題だった。「飛助MG」は強いダウンウォッシュを実現し、さらに前後切替機能により散布品質を向上。薬剤コストも削減可能。

効率性

時速15km、散布幅4mで飛行し、1ha(1万㎡)を約10分で散布。また、そのまま隣の田畑にも移動できるため、人の手で散布する時間のおよそ5分の1の時間で作業を完了。作業時短に貢献する。

薬剤効果

防除を委託する場合、コスト面で回数を最小限に抑えがちだが、同じ費用で回数を多く散布することができ、薬剤の効果を最大限に発揮できる。

<参考URL>
株式会社マゼックス
飛助MG

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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