アジア生産機構、日本と東南アジアのスマート農業や農業DXを解説する英語版小冊子を無料公開

アジア生産性機構(APO)は、日本とアジアのスマート農業の将来像について紹介するデジタル小冊子を公開した。価格は無料。


冊子「Future Prospects for Smart Agriculture: Focusing on Case Studies in Japan and Asia」を執筆したのは、SMART AGRIにもたびたび寄稿いただいている日本農業サポート研究所の福田浩一氏。中小規模の農家が多い日本において普及しているスマート農業を紹介しながら、気候や条件が近い東南アジアの国々でも日本のスマート農業の導入が進むと予測している。

冊子の概要


※執筆者による要約文を掲載

本報告は、日本およびアジア諸国におけるスマート農業の導入事例と課題、今後の展望をまとめたものである。

日本では2019年以降、国の支援によりスマート農業の普及が進められてきたが、主に大規模農家向けの機械化中心の技術導入が主体であった。一方で、多くの中小規模農家にとっては高額な機械導入が難しく、今後は低コストで簡易な技術の普及が重要とされる。

代表的な技術としては、AIや衛星画像を用いた栽培支援システム「ザルビオ」、潅水施肥を自動で行う「ゼロアグリ」、病害虫を自動で検知・散布するロボットなどがある。また、ARを使った農作業支援アプリや記帳アプリ(アグリノート、アグリハブ)も登場し、初心者や高齢者でも使いやすい工夫が進んでいる。

アジアでは、スマートフォンを活用したICT農業が普及しており、タイや台湾では政府主導で認証制度やトレーサビリティアプリが導入されている。特に東南アジアでは、安価で実用的な技術の普及が小規模農家を支えており、日本の中小農家への応用も期待されている。

今後の日本のスマート農業は、環境配慮型(温室効果ガス削減ラベル、Jクレジット申請等)や小型ロボット、AI活用の拡大が鍵となる。また、DXとともにGX(グリーントランスフォーメーション)も推進され、農業のマネジメント手法が一層問われる時代になる。日本発のスマート農業技術は東南アジアにも展開可能であり、中小規模農家を中心とした実装が今後の主流となるだろう。


目次


※編集部にて日本語訳を追加。

PREFACE(序文)

INTRODUCTION(はじめに)


SMART AGRICULTURE(スマート農業)

・Definition and Drivers Behind the Promotion of Smart Agriculture(スマート農業の定義と推進の要因)
・Current State of Smart Agriculture in Japan and Other Asian Regions(日本およびアジアにおけるスマート農業の現状)
・Evaluation and Challenges of Smart Agriculture in Japan(日本におけるスマート農業の評価と課題)
・Future Outlook for Smart Agriculture Among Small- and Medium-Scale Farmers(中小農家におけるスマート農業の展望)
・What Kind of Farmers Will Embrace Smart Agriculture in the Future?(どんな農家が今後スマート農業に取り組むのか?)

SUMMARY(まとめ)

REFERENCES(参考文献)

LIST OF TABLE(表一覧)

LIST OF FIGURES(図一覧)

About the Author(執筆者について)


「Future Prospects for Smart Agriculture: Focusing on Case Studies in Japan and Asia」
https://www.apo-tokyo.org/publications/future-prospects-for-smart-agriculture-focusing-on-case-studies-in-japan-and-asia/


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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