農水省、「2024年農業技術10大ニュース」を発表 持続可能な農業の確立に向けた技術を紹介
農林水産省が設置する「農林水産技術会議」は、2024年の農業技術10大ニュースを発表した。
「農業技術10大ニュース」は、2024年の1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関および国立研究開発法人の農林水産研究成果のうち、内容に優れるとともに社会的関心が高いと考えられる成果10課題を、農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など30社加盟)の加盟会員による投票を得て選定したもの。
【TOPIC1】「両正条植え」で縦横の機械除草が可能に!
農研機構は、水稲の苗を等間隔の碁盤の目状に植える「両正条植え」の技術を開発した。従来、乗用除草機では一方向の除草しかできなかったが、この技術によりタテとヨコの二方向から乗用除草機が走行できるようになった。
除草の手間が課題となっていた水稲の有機栽培において、省力的な機械除草が可能となったことで、有機栽培の取り組み面積拡大に貢献できると期待されている。
【TOPIC2】 「アイガモロボ」でらくらく除草
株式会社NEWGREENが提供する自動抑草ロボット「アイガモロボ」は、泥を巻き上げることで生じた濁りで光合成を阻害して雑草の生育を抑制する。
農研機構、井関農機株式会社、東京農工大学と共同で全国各地で2年間行った実証試験では、人が機械を使って行う除草の回数が従来の有機栽培と比べて約6割減少、また、雑草による減収が回避されたことにより、収量が約1割増加することが確認された。
【TOPIC3】 スラリと直立!りんご新品種「紅つるぎ」を開発
農研機構が、枝が横に広がらないコンパクトな樹姿(カラムナー性)のりんご新品種「紅つるぎ」を育成した。カラムナー性と高糖度、良食味を両立した品種の開発は国内初になるという。
この技術により、果実の管理や収穫などの作業性が改善され、省力化が可能となる。また、スマート農業技術との相性も良く、規模拡大や収益向上につながると期待されている。
【TOPIC4】 国内初! 農業特化型の生成AIを開発
農研機構、北海道大学、キーウェアソリューションズ株式会社、三重県農業研究所、株式会社ソフトビル、株式会社ファーム・アライアンス・マネジメントは共同で、高度な農業知識を学習させた生成AIを開発し、2024年10月から三重県での実証実験を開始した。農業特化型生成AIの開発は全国初になるという。
インターネット上の情報だけでなく全国の農業機関や生産現場が持つ専門的な情報を収集し、より精度の高い回答を提供することが可能となった。精度の⾼い⽣成AIを活⽤したサービス提供を全国規模で⾏うことを通じて、より高度な技術指導や農業情報が受けられる環境整備、新規就農者の育成などへの貢献が期待される。
【TOPIC5】 餌探しをあきらめないタイリクヒメハナカメムシ
農研機構は、害虫・アザミウマ類の天敵となるタイリクヒメハナカメムシで、餌となるアザミウマ類が見つからなくてもすぐに飛び立たず、粘り強く探し続ける系統を育成した。作物への定着性を向上させることで、害虫に対する防除効果の発揮が期待される。
【TOPIC6】 多収大豆品種「そらみずき」「そらみのり」を開発
農研機構は、従来品種より3割以上多収の大豆の新品種「そらみずき」と「そらみのり」を育成した。両品種とも莢がはじけにくいため、コンバインによる収穫でもロスが少なく、豆腐への加工に向いているという。栽培適地については、「そらみずき」が関東から近畿まで、「そらみのり」は東海から九州までとなっている。
多収大豆を産地に普及させることで、国産大豆の安定供給や自給率向上につながるとしている。
農研機構は、酪農家向けに最も低コストな飼料メニューと飼料作物の作付け計画を同時に提案するプログラムを開発し、Google Colaboratory上に公開した。ウェブブラウザ上で目標乳量、頭数、購入飼料の単価、自給飼料の生産費と、圃場面積などの前提条件を入力したファイルをアップロードすれば、試算結果が表示される。
同プログラムを利用することで、国産飼料を利⽤した新たな飼料設計や作付け計画の⽴案が容易になり、酪農家の経営安定に貢献するという。
【TOPIC8】 「ハウスにテグス君」でカラス被害9割減
農研機構は、警戒心が強く見えにくい障害物でも避けるカラスの性質を利用し、ビニールハウスの上部にジグザグ状にテグスを張ることで、カラスにビニールを破られることを防ぐ技術をまとめた。ホームセンターなどで手に入る資材を使って、脚立がなくても農家が自ら張ることが可能だ。
試験では、カラスが開ける穴の数を9割減らすことができたという。簡易かつ安価にカラス被害を防⽌することで、保温効果の維持とフィルムの⻑期利⽤が可能になり、農業⽣産費のコスト軽減が期待される。
気象予報を行う株式会社ウェザーニューズは、霜やひょうなど農業で注意が必要な気象の予測情報を提供する新たなサービスとして「ウェザーニュース for business」を開始した。畑やハウス周辺の1時間ごとの予報を1kmメッシュの高解像度で提供。気象IoTセンサー「ソラテナPro」によるリアルタイムの気象観測データも取得可能だ。
霜やひょうなどの気象リスクを把握することで、送⾵機の稼働やひょう防⽌ネットの準備など事前対策を施すことが可能となり、頻発化する気象による農業被害の回避への活用が期待されている。
【TOPIC10】 「アニマルック」が実現する家畜遠隔診療の新たな形
SBテクノロジー株式会社は、スマートフォンなどを通して家畜の遠隔診療を受けることができる新サービス「アニマルック」の提供を開始した。ニーズが高い北海道や沖縄を中心に、順次導入されるという。
ビデオ通話を活用し、診療サービスの質を落とさずに遠隔診療の現場への導入が促進されることで、産業動物獣医師不足や農場への病原体の持ち込み防止などの効果が期待できる。
「2024年農業技術10大ニュース」の選定について|農林水産技術会議
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/241220.html
「農業技術10大ニュース」は、2024年の1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関および国立研究開発法人の農林水産研究成果のうち、内容に優れるとともに社会的関心が高いと考えられる成果10課題を、農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など30社加盟)の加盟会員による投票を得て選定したもの。
【TOPIC1】「両正条植え」で縦横の機械除草が可能に!
-省力的な機械除草が有機栽培の拡大に貢献-
農研機構は、水稲の苗を等間隔の碁盤の目状に植える「両正条植え」の技術を開発した。従来、乗用除草機では一方向の除草しかできなかったが、この技術によりタテとヨコの二方向から乗用除草機が走行できるようになった。
除草の手間が課題となっていた水稲の有機栽培において、省力的な機械除草が可能となったことで、有機栽培の取り組み面積拡大に貢献できると期待されている。
【TOPIC2】 「アイガモロボ」でらくらく除草
-水稲の有機栽培で除草回数を約6割削減、収量を約1割増加-
株式会社NEWGREENが提供する自動抑草ロボット「アイガモロボ」は、泥を巻き上げることで生じた濁りで光合成を阻害して雑草の生育を抑制する。
農研機構、井関農機株式会社、東京農工大学と共同で全国各地で2年間行った実証試験では、人が機械を使って行う除草の回数が従来の有機栽培と比べて約6割減少、また、雑草による減収が回避されたことにより、収量が約1割増加することが確認された。
【TOPIC3】 スラリと直立!りんご新品種「紅つるぎ」を開発
-りんご栽培における管理作業を省力化-
農研機構が、枝が横に広がらないコンパクトな樹姿(カラムナー性)のりんご新品種「紅つるぎ」を育成した。カラムナー性と高糖度、良食味を両立した品種の開発は国内初になるという。
この技術により、果実の管理や収穫などの作業性が改善され、省力化が可能となる。また、スマート農業技術との相性も良く、規模拡大や収益向上につながると期待されている。
【TOPIC4】 国内初! 農業特化型の生成AIを開発
-三重県で実証実験開始 将来的には全国規模で農業情報を提供-
農研機構、北海道大学、キーウェアソリューションズ株式会社、三重県農業研究所、株式会社ソフトビル、株式会社ファーム・アライアンス・マネジメントは共同で、高度な農業知識を学習させた生成AIを開発し、2024年10月から三重県での実証実験を開始した。農業特化型生成AIの開発は全国初になるという。
インターネット上の情報だけでなく全国の農業機関や生産現場が持つ専門的な情報を収集し、より精度の高い回答を提供することが可能となった。精度の⾼い⽣成AIを活⽤したサービス提供を全国規模で⾏うことを通じて、より高度な技術指導や農業情報が受けられる環境整備、新規就農者の育成などへの貢献が期待される。
【TOPIC5】 餌探しをあきらめないタイリクヒメハナカメムシ
-行動特性を生かした天敵昆虫の育成-
農研機構は、害虫・アザミウマ類の天敵となるタイリクヒメハナカメムシで、餌となるアザミウマ類が見つからなくてもすぐに飛び立たず、粘り強く探し続ける系統を育成した。作物への定着性を向上させることで、害虫に対する防除効果の発揮が期待される。
【TOPIC6】 多収大豆品種「そらみずき」「そらみのり」を開発
-国産大豆の安定供給や自給率向上に貢献-
農研機構は、従来品種より3割以上多収の大豆の新品種「そらみずき」と「そらみのり」を育成した。両品種とも莢がはじけにくいため、コンバインによる収穫でもロスが少なく、豆腐への加工に向いているという。栽培適地については、「そらみずき」が関東から近畿まで、「そらみのり」は東海から九州までとなっている。
多収大豆を産地に普及させることで、国産大豆の安定供給や自給率向上につながるとしている。
【TOPIC7】 ズバッと計算!酪農家向けの飼料設計支援プログラムを開発-最も低コストな飼料メニューと飼料作物の作付け計画を提案-
農研機構は、酪農家向けに最も低コストな飼料メニューと飼料作物の作付け計画を同時に提案するプログラムを開発し、Google Colaboratory上に公開した。ウェブブラウザ上で目標乳量、頭数、購入飼料の単価、自給飼料の生産費と、圃場面積などの前提条件を入力したファイルをアップロードすれば、試算結果が表示される。
同プログラムを利用することで、国産飼料を利⽤した新たな飼料設計や作付け計画の⽴案が容易になり、酪農家の経営安定に貢献するという。
【TOPIC8】 「ハウスにテグス君」でカラス被害9割減
-安価な資材で簡単施工-
農研機構は、警戒心が強く見えにくい障害物でも避けるカラスの性質を利用し、ビニールハウスの上部にジグザグ状にテグスを張ることで、カラスにビニールを破られることを防ぐ技術をまとめた。ホームセンターなどで手に入る資材を使って、脚立がなくても農家が自ら張ることが可能だ。
試験では、カラスが開ける穴の数を9割減らすことができたという。簡易かつ安価にカラス被害を防⽌することで、保温効果の維持とフィルムの⻑期利⽤が可能になり、農業⽣産費のコスト軽減が期待される。
【TOPIC9】 霜やひょうをピンポイントで予測!高精度の気象予測システムを開発-気象リスクをタイムリーにアラート通知-
気象予報を行う株式会社ウェザーニューズは、霜やひょうなど農業で注意が必要な気象の予測情報を提供する新たなサービスとして「ウェザーニュース for business」を開始した。畑やハウス周辺の1時間ごとの予報を1kmメッシュの高解像度で提供。気象IoTセンサー「ソラテナPro」によるリアルタイムの気象観測データも取得可能だ。
霜やひょうなどの気象リスクを把握することで、送⾵機の稼働やひょう防⽌ネットの準備など事前対策を施すことが可能となり、頻発化する気象による農業被害の回避への活用が期待されている。
【TOPIC10】 「アニマルック」が実現する家畜遠隔診療の新たな形
-診療予約管理、診察履歴管理、ビデオ通話による診療等を一括管理-
SBテクノロジー株式会社は、スマートフォンなどを通して家畜の遠隔診療を受けることができる新サービス「アニマルック」の提供を開始した。ニーズが高い北海道や沖縄を中心に、順次導入されるという。
ビデオ通話を活用し、診療サービスの質を落とさずに遠隔診療の現場への導入が促進されることで、産業動物獣医師不足や農場への病原体の持ち込み防止などの効果が期待できる。
「2024年農業技術10大ニュース」の選定について|農林水産技術会議
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/241220.html
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