ブロッコリーが「指定野菜」になった理由とは? 生産者や消費者への影響

ブロッコリーが2026年度から「指定野菜」になると発表されました。1974年に指定されたジャガイモ以来、52年ぶりに品目が追加されるとして話題になっていますが、なぜいまブロッコリーが指定野菜に仲間入りすることが決定したのでしょうか。

本記事では、「指定野菜」の考え方を説明するとともに、ブロッコリーが指定野菜に追加される理由や今後予測される影響について解説します。



指定野菜とは



指定野菜とは、日本人の食生活にとって重要と国に認められた野菜のことです。「野菜生産出荷安定法」という法律に基づき、農林水産省が追加する品目を決めています。

指定野菜はほかの野菜と比較して消費量が多いものや、多くなると見込まれる重要性の高い野菜を位置づける制度で、現時点では以下の14品目の野菜が認定されています。


指定野菜一覧(50音順)

  • キャベツ
  • きゅうり
  • さといも
  • だいこん
  • たまねぎ
  • トマト
  • なす
  • にんじん
  • ねぎ
  • はくさい
  • 馬鈴しょ
  • ピーマン
  • ほうれんそう
  • レタス
これらの指定野菜を毎年作る大規模な産地を「野菜指定産地」と呼びます。指定産地として認められるにはいくつかの要件がありますが、2024年2月現在では全国で873の産地が指定されています。

ブロッコリーが指定野菜になった理由


国が特に重要と定めている指定野菜に準ずるものとして、「特定野菜」と呼ばれるものがあります。ブロッコリーはそのなかのひとつですが、なぜ指定野菜に格上げすることになったのでしょうか。

ひとつには、生産者の高齢化や人口減少などを背景に野菜の出荷量が減少する中、ブロッコリーの出荷量が年々増加傾向にあることが大きな理由とされています。

出典:https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_yasai/r4/shitei_yasai_akifuyu/index.html

一方、ブロッコリーの需要が高まっている理由としては、近年の健康志向の高まりが影響しているようです。

ブロッコリーは食物繊維やビタミン、ミネラルなど栄養が豊富に含まれていて、茹でるだけで食べられるので手軽に栄養を摂れます。調理方法も幅広く、炒めたりスープに入れたりと、さまざまな料理に利用できるのも魅力です。

また、ブロッコリーは野菜としては珍しく、タンパク質が豊富に含まれています。昨今では美容や健康、ストレス解消などを目的に筋力トレーニングを行う人が多く、効率的に筋肉を付けられる食材としても注目されているのです。

指定野菜になることで食卓への影響は?


ブロッコリーが指定野菜になると、私たち消費者の食卓にどのような影響があるのでしょうか。指定野菜の制度がどのような目的で運用されているか見ていきましょう。

農作物の栽培は天候によるブレが付きもので、保存性も乏しいことから供給量によって価格変動が起こりやすいという特性があります。仮に台風や異常気象、病害虫の発生などのトラブルで農作物に大きな被害が出てしまえば、生産者の所得を十分に確保することが難しくなるでしょう。

これにより、次期作で作付面積が減少することも考えられ、それに伴い供給量が減少し、野菜の価格高騰につながります。その結果、消費者への安定供給が困難になるのです。


出典:https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_yasai/r4/shitei_yasai_akifuyu/index.html

指定野菜を大規模な産地で栽培する「指定産地」として認められると、価格が一定以下に下落した場合に、生産者に補助金が支払われます。もともとブロッコリーは価格の変動が著しい野菜として知られていましたが、今回指定野菜となったことで、価格変動の差が緩和される可能性もあるでしょう。

また、補助金が支払われることによって生産者の収入が安定し、安心して栽培できるようになります。これによりブロッコリーへの生産意欲が高まり、生産量が増加することで価格が低下していくことも期待できます。

国産ブロッコリーの品質が向上したことも関係


ブロッコリーはいまや、国民的野菜と呼べるほど食卓に定着し、年間通してスーパーで国産の新鮮なブロッコリーが手に入れられるようになっています。

しかし、20年ほど前まではその多くがアメリカ産のものでした。

ブロッコリーはアブラナ科の植物で、キャベツと同じ地中海が原産地です。ブロッコリーが日本に入ってきたのは明治時代とされていますが、当時はあまり食べられていなかったようで、日本で頻繁に食卓に上がるようになったのは、緑黄色野菜の注目が高まった1980年頃からと言われています。

それとともに日本各地においてブロッコリーの産地形成が推進されていきましたが、1990年代半ばから2000年初頭にかけてアメリカ産品の輸入量が増えたことで、一時は国内の生産量が減少しました。しかし、2000年以降は一大産地である北海道を筆頭に、年々作付け面積が拡大傾向にあります。

ブロッコリーはキャベツの仲間ですが、葉を食べるのではなく花蕾(からい)を食べる野菜です。そのため、輸送中に開花しないよう低温を維持する必要がありますが、各産地で設備を整え、氷詰めにして出荷するなどの工夫がされたことにより、国産ブロッコリーの品質が向上しています。

このような産地の努力によって1年中供給できる体制が整ったことで、現在供給されているブロッコリーの約9割が国産のものになっています。

高齢化が進む農業の救いの手となるか


高齢化が進んでいると言われて久しい日本の農業。近年は指定野菜のいくつかの品目で、作付け中止や規模縮小が進んでいるようです。特に、はくさいなど重量のある野菜は収穫作業が重労働のため、全国的に規模縮小の動きが強まっています。

出典:https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/attach/pdf/index-27.pdf

その点でいうと、ブロッコリーは比較的軽量な野菜ということもあり、指定野菜になれば作付転換する生産者が増えていくかもしれません。

こうしてみると、ブロッコリーが指定野菜になることで消費者と生産者双方に恩恵をもたらすと考えられます。ただし、指定産地以外の生産者は、供給過多により価格が下がっても収入が補填されない点には注意が必要です。

消費者にとって安く購入できるのはうれしいことですが、価格が下がりすぎてしまえば生産者を苦しめることにもなりかねません。指定野菜になることで消費がさらに拡大することが期待されます。


農林水産省「野菜価格安定制度について」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/attach/pdf/index-27.pdf
農林水産省「令和4年産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_yasai/r4/shitei_yasai_akifuyu/index.html深瀬浩三「輸入量変動下のブロッコリー産地における農協共販組織の対応」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tga/65/3/65_121/_pdf
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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