旧制度は2020年3月31日まで! 農家も覚えておきたい「食品表示法」改正の要点

消費者が食品の安全性を確かめたり手に取る際の判断基準となっている食品表示。2015年からの経過措置期間が間もなく終了となり、2020年4月1日から新制度へと完全移行される。

消費者だけでなく生産者にとっても重要な「食品表示法」をわかりやすく解説するとともに、新食品表示法へ移行することで生産者が知っておかなくてはならないこと、注意点などもご紹介していきたい。



現行の「食品表示制度」とは

これまでの食品表示制度は、主に食品衛生法、JAS法、健康増進法の3つに分かれていた。

食品衛生法では衛生管理の観点から添加物やアレルギーに関する情報を、JAS法では品質の観点から原材料名や原産地に関する情報を、そして健康増進法ではカロリーや栄養成分の割合などの情報を担当。賞味期限・消費期限や遺伝子組み換えの有無については、食品衛生法とJAS法の両方で規定されてきた。


しかし、それぞれ目的が異なり表示のルールも別々に制定していたため、基準が複雑でわかりにくいものであった。

そこで、これまで通り消費者基本法の基本理念を元に整合性のとれた表示、消費者と事業者双方がわかりやすい物に変えることを目的として新しい基準としてまとめられたのが、2015年から施行された「食品表示法」だ。

押さえておきたい「食品表示法」のポイント


新しい食品表示制度の変更点は以下の通り。


食品表示法によって変わる中でも、特に重要な5つのポイントをご紹介しよう。

アレルギー表示に関わるルールの改善

たとえば、これまでは「うどん」という特定加工食品が表示されていれば、当然中に含まれている原材料の「小麦」の表示は必要なかった。これはアレルゲンを含む食品を予測できるという前提の措置だったためだ。しかし、今後は基本的に、これらの原材料名も明記することとなった。

従来も、アレルギー反応の影響が大きい子ども向け食品などでは、「乳」「小麦」「卵」といったものを使用している場合に目立つかたちで明記することはあったが、食品表示としてこれらが明確にされることで、消費者自身が選ぶ際の安全性が高まることになる。

栄養成分表示の義務化

食品関連事業者に対して、これまで任意でもよかった栄養成分表示が義務付けられた。

義務付けられた項目は、エネルギー(カロリー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムなど。ナトリウムはいわゆる「塩化ナトリウム」、つまり「塩」のことだが、ひと目見て塩分がわかる「食塩含有量」へ変更となる。

さらに、表示推奨の項目として飽和脂肪酸や食物繊維、任意項目としては糖質やコレステロール、ビタミンといったより健康増進に関わる部分の表示も可能になる。

表示レイアウトの改善

商品のサイズにより表示スペースが小さくなる場合を想定して、レイアウトの改善や非表示可能な項目等も明記された。ただし、原材料と添加物は区分を明確にするなど、誤解されることのないような配慮もしている。

経過措置期間

いま食品表示法が話題となっているのは、経過措置が2020年3月31日となっているため。生鮮食品は2018年9月30日に、加工食品等は2020年3月31日までが経過措置となっており、4月1日からは新表示に完全に切り替わる。

新たな機能性表示制度の創設

売り場の棚の中でもかなりの割合を占めるようになってきた機能性食品についても規定されている。基本的には、表示内容に嘘がないかを販売60日前までに消費者庁に届け出る必要がある。


簡単な加工を施した農産物も「加工食品」に区分

これまではJAS法と食品衛生法で区分が違っていた食品については、4月からスタートする食品表示法ではJAS法の区分で統一される。

具体的には、「生鮮食品扱い」であった簡単な加工がされた食品も、これからは「加工品」として区分されることになった。また、今までは名称、原材料名、添加物、消費期限の記載が必要だったが、これに加えアレルギー、製造所在地の記載が義務付けられた。

例えば、生鮮食品扱いであったドライフルーツや干し椎茸などの食品も「加工品」扱いとされる。一方で、乾燥大豆など生産者が収穫の一環として行う加工の場合は「生鮮食品」に区分されるなど、消費者では判断するのに難しい部分もある。



食品の安全と安心をみんなで共有するために


食品表示法は複雑で難しい部分もあるが、食品製造業などの大規模な事業者だけでなく食品を扱う事業者全てに関わる制度だ。食品表示を間違えてしまったりすると食品の自主回収や罰金などのリスクも考えられるので、正しい情報収集が不可欠になってくる。また、食品表示制度が変更されることで、食品を選ぶ際の判断基準が明確になり、消費者が知るべき情報をひとめで見てわかるようになる。

食品表示法が改められたのは、日々口にする食品の品質や安全性に注意を払う消費者が増えており、誤解のないように選択してもらえる環境を作るためだ。有機栽培・自然栽培による農産物や、減農薬といった努力が正しく消費者に伝わることで、その価値を正当に認めてもらえるようにするための処置とも言える。

これからの時代は、食品の安全性がさらに重視され、注目されるようになっていくだろう。生産者としての農家も、農産物流通に関わる者も、時代の変化と消費者の要求の変化をしっかり理解し、そのための知識をしっかり身につけていく必要がある。

なお、加工食品の中で一番多い原材料については、原料原産地の記載を義務付けている。この項目については、経過措置期間は2022年3月31日までとなっているが、原料原産地の記載義務についても注意しておきたい。


消費者庁 食品表示法について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/risk_commu_2015_003/pdf/150721shiryou_1.pdf
消費者庁 新食品表示制度のポイント
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/past_public_comment/pdf/121024_1.pdf

消費者庁 食品表示基準一部改正のポイント
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_171027_0002.pdf
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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