肥料高騰はいつまで続く? 国や自治体による肥料高騰対策支援事業まとめ

JA全農は2022年6月から10月の秋肥について、前期と比べて最大94%価格を引き上げることを発表しました。これまでに経験したことがないとも言われる肥料の高騰はなぜ起こってしまったのでしょうか。

この記事では、肥料の価格が上昇している原因をお伝えしつつ、支援対策として国や自治体で行われている補助事業を紹介します。


肥料価格が高騰している理由


日本では、化学肥料の原料である尿素、りん酸アンモニウム、塩化カリウムのほとんどを海外輸入に頼っているため、国際情勢の影響を受けやすい状況にあります。2008年にも肥料の需要増加などを理由に肥料価格の高騰が起こり、一度は落ち着いたものの、2021年頃から再び肥料の原料価格が値上がりし始めました。そのような中で、ロシアによるウクライナへの侵攻が始まり、さらに深刻化しているのが現状です。

ただし、今回の高騰の理由については、アンモニアや塩化カリウムの生産国上位であるロシアへの経済制裁による供給の停滞や中国の輸出規制、肥料の運搬に利用される船舶燃料の高騰、円安などが、複合的に関係していると見られています。

肥料価格高騰に対する支援事業とは?


肥料価格高騰対策事業は農林水産省、都道府県、市町村などが各自実施していて、対象期間に購入した肥料の購入費の一部を助成するものです。「化学肥料の低減に向けて取り組む農業者」「その自治体に住所を有している農業者」などが対象になります。

農産物を生産するためには、生産者の人件費だけでなく、種子や肥料などの資材が必要です。これらの価格が上がった分、農産物の価格に転化できればいいのですが、農産物は人間が生活する上で必要なカロリーや栄養素を賄うために必要な共有資源でもあり、JAなどを中心として一定量を常に平均的な価格で供給できる体制が作られてきました。そのため、肥料高騰の分の損失金額を簡単に解消できるようなものではありません。

今回のような国や自治体としての助成を行うことは、生産者を守るだけでなく、国内の食料事情を解決するためにも必要不可欠になっています。だからこそ、必要な助成をしっかり受けることも大切です。

申請方法は基本的に事後申請式になっているので、肥料を購入したことがわかる領収書や前年分の確定申告書の控えなどの書類を用意しておきましょう。自治体によっては対象作物を限定していたり、補助対象の期間や申請方法などが異なることもあり、すべての生産者が助成を受けられるとは限りません。詳細は住んでいる自治体のホームページで確認してください。


2022年度に実施中の肥料価格高騰対策事業


ここでは、農林水産省が行っている支援事業をはじめ、都道府県や市町村が行う事業のひとつをピックアップして、詳しい支援内容や申請方法を紹介します。

■農林水産省「肥料価格高騰対策事業」


支援対象
2022年6月から2023年5月に購入した肥料(本年秋肥・来年春肥として使用するもの)

支援内容
15事項ある化学肥料低減に向けた取り組みメニューを2つ以上行った上で、前年度から増加した肥料費の7割を支援金として交付

助成額の算出方法
助成額=(当年の肥料費-(当年の肥料費÷価格上昇率÷使用量低減率(0.9))×0.7

価格上昇率は、農水省が発表している「農業物価統計」を基に算出。本年度秋肥については6月から9月までの価格上昇率が考慮されます。

申請書類
・肥料の購入価格がわかる注文票のほか、領収書または請求書
・化学肥料低減計画書のチェックシートに、実施または実施予定の取り組みを申告(2つ以上にチェックが付けばOK)

申請方法
5戸以上の農業者グループで農協や肥料販売店などにまとめて申請(申請に関する不明点は都道府県や市町村、農協などに問い合わせ)

問い合わせ先
北海道農政事務所 生産経営産業部 生産支援課
https://www.maff.go.jp/hokkaido/annai/toiawase/index.html
東北農政局 生産部 生産技術環境課
https://www.maff.go.jp/tohoku/sinsei/toiawase.html
関東農政局 生産部 生産技術環境課
https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/nousan/kankyou/index.html
北陸農政局 生産部 生産技術環境課
https://www.maff.go.jp/hokuriku/guide/soudan/index.html
東海農政局 生産部 生産技術環境課
https://www.maff.go.jp/tokai/seisan/kankyo/hozen/190624.html
近畿農政局 生産部 生産技術環境課
https://www.maff.go.jp/kinki/org/outline/index.html
中国四国農政局 生産部 生産技術環境課
https://www.maff.go.jp/chushi/kikouzu/gaiyou.html
九州農政局 生産部 生産技術環境課
https://www.maff.go.jp/kyusyu/soumu/soumu/soudanmado/soudanmado.html
沖縄総合事務所 農林水産部 生産振興課
http://www.ogb.go.jp/nousui

■福岡県「肥料高騰緊急対策事業」


対象品目
麦、園芸品目(野菜、果樹等)

対象者
認定農業者、認定新規就農者、集落営農組織、営農集団

対象経費
2022年6月から2023年3月までに購入かつ使用した肥料の経費のうち、2022年6月の肥料価格改訂による上昇分

補助率
1/2(品目ごとの標準的な肥料代に基づいて設定する額を上限とする)

問い合わせ先
福岡県 園芸振興課
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/soshiki/4700500/index-2.html

都道府県その他の支援事業
福島県「福島県肥料高騰緊急対策事業」
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/36021d/hiryou-koutou-kinnkyuu.html

■青森県三沢市「三沢市肥料等高騰対策助成金」


対象者
・市内に住所を有する農畜産業者または農業法人
・2021年分確定申告で農畜産物の販売金額が100万円以上ある方、または2022年新規就農
・2022年も営農を継続している方
・市税などの滞納がない方

助成金額
2022年分確定申告で販売金額が100万円以上200万円未満で1万円、これを基準助成額として販売金額が100万円増加するごとに1万円加算、上限は100万円

受付期間
2022年8月8日から10月31日まで※消印有効

提出書類
・交付申請書兼誓約書(下記三沢市のホームページよりダウンロード)
・2021年分確定申告の控えの写し(法人の場合は、法人税確定申告書の控えと決算報告書のうち損益計算書の写しを提出)
・肥料購入伝票の写し
・振込先口座通帳の写し

※新規就農者は提出書類が異なるので個別で要相談

問い合わせ先
青森県三沢市
https://www.city.misawa.lg.jp/index.cfm/10,48350,40,337,html

市町村その他の支援事業


これら以外にも、全国の自治体などで支援事業が行われています。しっかり確認しておきましょう。

岩手県盛岡市「肥料等高騰対策支援事業」
https://www.city.morioka.iwate.jp/jigyousha/1026070/nogyo/1040262.html
岩手県二戸郡一戸町「一戸町農業生産費高騰対策事業費補助金」
https://www.town.ichinohe.iwate.jp/soshikikarasagasu/norinka/nogyoshinkogakari/1_1/4334.html
宮城県名取市「園芸農業経営継続補助金」
https://www.city.natori.miyagi.jp/soshiki/seikatsu/nousui/node_84125
福島県猪苗代町「猪苗代町燃油価格等高騰対策支援金交付事業」
https://www.town.inawashiro.fukushima.jp/cb/hpc/Article-21655.html
群馬県前橋市「認定農業者等の肥料購入を支援」
https://www.city.maebashi.gunma.jp/soshiki/noseibu/nosei/gyomu/6/33546.html
神奈川県綾瀬市「農業経営費高騰対策臨時給付金」
https://www.city.ayase.kanagawa.jp/hp/page000040000/hpg000039944.htm
神奈川県相模原市「令和4年度肥料・農業資材購入緊急支援事業給付金」
https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/sangyo/sangyo/1019826/1025798.html
静岡県裾野市「高騰している肥料購入費の補助制度創設」
https://www.city.susono.shizuoka.jp/soshiki/8/3/2/2/17172.html
静岡県駿東郡長泉町「長泉町物価高騰等対策農業肥料等購入費補助金のご案内」
https://www.town.nagaizumi.lg.jp/soshiki/sangyo/7/1/8585.html
長野県飯田市「飯田市肥料価格高騰緊急支援事業補助金」
https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/attachment/56905.pdf
長野県茅野市「茅野市農業資材価格等高騰対策支援補助金」
https://www.city.chino.lg.jp/site/korona/nogyosizaikakakutoukoutou.html
長野県東御市「農業用肥料及び畜産飼料価格高騰緊急対策事業」
https://www.city.tomi.nagano.jp/category/nougyou/160104.html
京都府京丹後市「京丹後市農業者物価高騰対策支援給付金」
https://www.city.kyotango.lg.jp/top/soshiki/norinsuisan/nogyosinko/nogyo_corona/17360.html
兵庫県丹波篠山市「農業資材クーポンを配布」
https://www.city.tambasasayama.lg.jp/gyoseijoho/shichonoheya/shichonikki/2022/8/22041.html
兵庫県朝来市「肥料購入支援事業」
https://www.city.asago.hyogo.jp/0000010379.html
福井県福井市「令和4年度 農業肥料購入緊急支援事業補助金」
https://www.city.fukui.lg.jp/sigoto/nourin/nougyou/p024543.html
福井県丹生郡越前町「農業肥料高騰対策支援補助金」
https://www.town.echizen.fukui.jp/jigyou/02/p007522.html
滋賀県米原市「米原市農業者肥料高騰対策支援金」
https://www.city.maibara.lg.jp/soshiki/keizai_kankyo/nousei/nougyo/17912.html
滋賀県大津市「大津市農業用肥料高騰等緊急対策給付金」
https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/025/1605/o/49878.html
徳島県美馬市「原油価格・物価高騰対策緊急支援金」
https://www.city.mima.lg.jp/gyosei/docs/131320.html
長崎県佐世保市「肥料・粗飼料の購入費補助」
https://www.city.sasebo.lg.jp/nourinsuisan/nouchiku/hiryousosiryou.html

自治体からの情報のチェックを



肥料価格の高騰対策として行われている支援事業を紹介しました。

農林水産省では2023年度の春肥についても支援を行うことから、しばらくは高値が続くと見られています。価格が安定している国内資源への切り替えや、土壌診断を行うなどして施肥方法の見直しを進めていくことも重要です。

今後も各自治体からの支援策が出てくると考えられますので、気になる方は農林水産省や自治体のホームページを参考にしてみてください。


農林水産省「肥料をめぐる情勢」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/attach/pdf/index-7.pdf
農林水産省「肥料価格高騰対策事業」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/attach/pdf/220729-20.pdf

JA全農「令和4肥料年度秋肥(6~10月)の肥料価格について」
https://www.zennoh.or.jp/press/release/2022/90257.html

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。