遠隔産地に立ちはだかる「物流業界の2024年問題」とは【窪田新之助のスマート農業コラム】
筆者は埼玉県の県庁所在地・さいたま市に住んでいる。今の時期に近所の量販店でよく買うのは新タマネギとブロッコリー、ソラマメ。ここのところ毎回産地を確認しているが、いずれも福岡県や佐賀県、鹿児島県である。
こうした遠隔地の産地が、これからも大消費地に青果物を届けられるかどうかの難題に直面している。立ちはだかるのは「物流業界における2024年問題」だ。
当然ながらドライバーも対象だ。物流業者が違反すれば、「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が課せられる。
農業界でこれに困っているのが、遠隔の産地である。現状の物流体制では3年後、質と量の両面で今まで通りの青果物を大消費地に送り届けられなくなってしまうからだ。
例えば、福岡県にとって戦略的な品目の一つにイチゴのブランドで「西の横綱」と称される「あまおう」がある。産地は質を維持するため、集荷してから3日目までに関東地方の卸売市場で売買を済ませてきた。
それができたのは、物流業界に残業規制がなかったことが大きい。簡単にいえば、それだけの無理をドライバーに強いてきたというわけだ。
もとよりドライバー不足には歯止めがかからない。九州トラック協会によると、費用対効果が悪い青果物の運送を断る物流業者が出ているという。「2024年問題」はこうした物流環境の悪化に拍車をかけかねない。
この課題は一筋縄ではいかず、多方面からの対応が求められる。
例えばコールドチェーンの構築だ。現状、少なくない産地が予冷せずに輸送している。予冷庫を備えた物流拠点を整備すれば、今まで以上に鮮度の保持が可能だ。実際にそうした動きは出てきている。
パレットの活用も必要だ。現状は段ボールをバラ積みしている産地が多い。段ボールだと積載率は上がるものの、パレットに比べて荷積みと荷卸しに約6倍の時間を要すると聞く。
このほかサプライチェーンを見渡せば、産地以外の関係者が取り組むべき課題は数多い。リミットが3年後に迫る中、関係者を挙げて一つずつできることを積み重ねていくことが大事である。
こうした遠隔地の産地が、これからも大消費地に青果物を届けられるかどうかの難題に直面している。立ちはだかるのは「物流業界における2024年問題」だ。
「2024年問題」が農業界にどのような影響を及ぼすか
働き方改革の一環で2019年に労働基準法が改正された。これに伴い物流業界では2024年4月1日以降、時間外労働時間の上限が年間960時間に規制される。つまり、月平均80時間が上限となる。当然ながらドライバーも対象だ。物流業者が違反すれば、「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が課せられる。
農業界でこれに困っているのが、遠隔の産地である。現状の物流体制では3年後、質と量の両面で今まで通りの青果物を大消費地に送り届けられなくなってしまうからだ。
例えば、福岡県にとって戦略的な品目の一つにイチゴのブランドで「西の横綱」と称される「あまおう」がある。産地は質を維持するため、集荷してから3日目までに関東地方の卸売市場で売買を済ませてきた。
それができたのは、物流業界に残業規制がなかったことが大きい。簡単にいえば、それだけの無理をドライバーに強いてきたというわけだ。
物流業者が解決すべき課題
ところが、2024年4月1日以降はそれが許されなくなる。つまり集荷から3日目での売買が叶わなくなってしまうのだ。4日目での売買となれば鮮度が落ちてしまい、福岡県の産地にとっては関東地方の競合産地に勝てる見込みが薄らぐ。もとよりドライバー不足には歯止めがかからない。九州トラック協会によると、費用対効果が悪い青果物の運送を断る物流業者が出ているという。「2024年問題」はこうした物流環境の悪化に拍車をかけかねない。
この課題は一筋縄ではいかず、多方面からの対応が求められる。
例えばコールドチェーンの構築だ。現状、少なくない産地が予冷せずに輸送している。予冷庫を備えた物流拠点を整備すれば、今まで以上に鮮度の保持が可能だ。実際にそうした動きは出てきている。
パレットの活用も必要だ。現状は段ボールをバラ積みしている産地が多い。段ボールだと積載率は上がるものの、パレットに比べて荷積みと荷卸しに約6倍の時間を要すると聞く。
このほかサプライチェーンを見渡せば、産地以外の関係者が取り組むべき課題は数多い。リミットが3年後に迫る中、関係者を挙げて一つずつできることを積み重ねていくことが大事である。
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