テラドローン、運航管理システムを用いた複数ドローン飛行の実証実験をインドネシアで実施

Terra Drone株式会社(以下、テラドローン)は、運航管理システム(UTM)を活用した複数ドローン飛行の実証実験を、インドネシアのジャカルタ郊外で2025年1月22日(水)・23日(木)の2日間にわたり実施した。

経済産業省により採択された「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」の一環として行われたもので、インドネシア国内初となるUTMを使った複数のドローン運用の実証となる。


ドローン飛行の安全性向上や効率的な運航管理に期待


テラドローンは、ドローンの開発およびソリューションを提供する企業。2019年には、インドネシアに子会社としてTerra Drone Indonesia(以下、テラドローン・インドネシア)を設立し、ドローンサービス事業を展開している。

また、子会社であるUnifly(以下、ユニフライ)や持分法適用会社のAloft Technologies(以下、アロフト)は、それぞれ欧州および米州でのUTM導入実績を持つリーディングカンパニーとして、グローバルな技術力を有しているという。

インドネシアは、世界有数のオイル・ガス国家であり、ドローン点検市場が有望視されているほか、パーム農園などの大規模農業での活用や離島間物流など、ASEAN諸国の中でもドローン市場の拡大が期待されている。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の調査によると、インドネシアのドローン産業の潜在的な市場規模はASEAN諸国で第2位とされており、インドネシアの2024年人口が世界4位であることなどから、今後ドローンの利活用が進むと推測されている。

ASEAN主要各国におけるドローン産業の市場規模推計・有望ユースケース(出典:NEDO)

今回行われた実証実験は、インドネシア市場に最適化されたUTM導入の可能性を検証し、将来的な商業化を目指すためのもの。ユニフライが提供するUTMプラットフォームをベースに、テラドローン・インドネシアやアロフトの知見と技術を集結させることで、UTMの活用を想定したいくつかのシナリオに沿って複数のドローンを飛行させ、安全な運航管理や自律飛行、緊急対応の運用検証を行った。

当日は、UTMの概要説明に加え、実際にUTMとドローンに搭載されたADS-B(※1)やRemote ID(※2)を使用したデモンストレーションを実施。使用されたドローンは、米国製・日本製・インドネシア製・中国製の機体で、農業や物流、監視・点検といったユースケースを想定し、複数機体で飛行を行った。

また、実証実験後には参加者によるセッションが行われ、多岐にわたる質問や議論を通じて、今後インドネシアおよび周辺諸国でのUTM導入に向けたステップや課題が活発に議論されたという。

複数のドローンが飛行している様子

ドローンの運航状況を示すUTM画面

UTMの導入によって、ドローン飛行の安全性向上や効率的な運航管理が可能になり、ドローンの利活用を大きく加速させることが期待されている。

同事業では、農業・測量・点検・物流・セキュリティ対応といった分野において、インドネシアのジャカルタや建設中の新都市ヌサンタラなど、複数都市におけるドローンの普及に必要なUTMの実用化を目指しており、グローバルサウス諸国との経済連携の強化や、本事業実施国であるインドネシアの経済支援にも寄与するという。

テラドローンは、グローバルで培った技術と実績を生かし、今後も実証を通じて成功事例を共有することで、インドネシアおよび他国におけるUTMの商業化を推進していく。

実施概要
日時:2025年1月22日(水)~23日(木)
場所:インドネシア共和国 ジャカルタ南部 セントゥール市
内容:3つのシナリオを想定した、複数ドローン飛行によるUTMの実証実験
1.農業:ドローンによる農薬散布
2.物流:ドローンによる配送
3.セキュリティ:監視・点検ドローンの運用
参加国:インドネシア、ASEAN諸国、中東諸国(マレーシア、シンガポール、インド、パキスタン、アラブ首長国連邦、カタール等)
参加者:各国航空局、ANSP(航空管制サービスプロバイダー)、政府関係者、ドローン 関連企業の代表者など、合計118名

※1 ADS-B:Automatic Dependent Surveillance-Broadcast(自動依存監視放送)。航空機の位置情報をリアルタイムで送信し、地上の受信機や他の航空機がその情報を受信することを可能にする航空監視技術
※2 Remote ID:無人航空機の識別情報を電波で遠隔発信する機能


Terra Drone株式会社
http://www.terra-drone.net
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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