農業の課題解決を目指すビジネスコンテスト「DEEP VALLEY Agritech Award 2024」の受賞者が決定

埼玉県深谷市は、日本全国が抱える農業課題の解決を目的に実施したビジネスコンテスト「DEEP VALLEY Agritech Award 2024」の各賞受賞者を、2024年12月18日(水)に深谷市役所で開催した授賞セレモニーで発表した。5回目となる今回は、過去最高となる31件の応募が集まったという。


「農業×〇〇=未来」をテーマにアイデアを募集


「DEEP VALLEY Agritech Award」は、儲かる農業都市の実現のため、埼玉県深谷市が主体となり、2019年からスタートしたビジネスコンテスト。深谷市をはじめとした日本全国が抱える農業課題を解決する技術・アイデアや、「食品加工・製造」「流通・輸送」「販売・消費」などの食にまつわる課題を解決する技術・アイデアを幅広く募集し、表彰を行っている。

過去5回の「DEEP VALLEY Agritech Award」では、4社への出資を実行し、最優秀賞を受賞した企業2社を含め、深谷市で4件のスマート農業関連のプロジェクトが実施されたという。

2024年からは、さらなる農産物全体としての付加価値向上を目指し、深谷市として「農と食の産業」の強化をより加速させるため、新たに、「農業×〇〇=未来」のテーマによるビジネスモデル・アイデアを募集している。

また、農家の平均個人所得が全米1位を誇るノースダコタ州にあるアグリテック推進機関Grand Farmとのパートナーシップを展開し、海外進出に向けた支援も開始した。

このような取り組みを通じて、出資希望の有無や受賞者に限らず、深谷市の農家などと協力しながら技術開発・事業開発を進め、「農と食」の課題解決に向けて展開していけるよう支援している。

今回の受賞者は以下のとおり。

【最優秀賞】
EF Polymer株式会社(沖縄県)
提案テーマ:農業×スマート資材=未来

EF polymer株式会社は、沖縄科学技術大学院大学発のアグリテック・新素材スタートアップ。EF(エコ・フレンドリー)ポリマーと呼ばれる、化学物質を一切含まない完全生分解性の有機ポリマーを開発し、環境への影響を最小限に抑えた農業用資材として展開している。

このEFポリマーを世界中に広げることで、気候変動や肥料の価格高騰に苦しむ世界中の農家を支援し、経済的・環境的に持続可能な農業の実現を目指して活動している。

スマート農業と言えば、ドローンや自動化機械がイメージされるが、EF polymerは水を吸収し、放出できる「スマート資材」を通じて、水やりの手間を減らすとともに、各地域における水不足や肥料のコスト問題を解決することを提案した。

さらに同社はGRAND FARM賞も受賞し、米国のGRAND FARMの実証フィールドの使用権が提供された。



受賞者コメント
「ありがとうございます。我々の資材だけで課題をすべて解決できるとは思っておりません。今回いらっしゃっている皆様の技術との掛け合わせで、日本の生産者の皆様が抱えていらっしゃる課題の解決に繋がるというふうに強く感じております。ぜひ連携させて頂きたい会社さんもいらっしゃったので、ぜひこれを機にコンタクトなどさせていただき、DEEP VALLEYを一緒に盛り上げていければと思っております」

【優秀賞】

積水樹脂株式会社(大阪府)
提案テーマ:農業×販売=未来

積水樹脂株式会社は、道路標識や外構・景観資材のほか、包装資材や農業資材、獣害対策用品など、公共・民間問わずさまざまな事業を展開する企業。

今回同社が提案したテーマは、AIを活用した無人販売所だ。従来畑の横に置かれることの多い無人販売所にAIを活用し、高度な機能を加えることで、農家と消費者双方に新たな価値を提供することを目指している。


受賞者コメント
「このコンテストにエントリーする前から深谷市の方々に御協力いただきまして、この無人販売所の実証実験を進める段階まできました。成功に持っていけるように、そして深谷発信で日本全国に発信できるように進めてまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします」

【シタラ興産賞】
株式会社ダイワ(大阪府)
提案テーマ:農業×超音波=日本の米農家を救う

株式会社ダイワは、58年前に創業し、全国各地の農協を通じて農資材や家庭日用品を販売している企業。大阪の「大」と和歌山の「和」をとり「ダイワ」としたことに由来し、地域農家の支えとなる企業として発展してきた。現在は、米農家を悩ませる「ジャンボタニシ」問題に対応するため、革新的な防除技術の開発に取り組んでいる。

今回は、全国で拡大するジャンボタニシの被害を抑え、従来の防除よりも安全で簡単に、米を作れる環境を提供することを提案。この技術により、高齢の農家でも負担なく作業が行えるようにし、ジャンボタニシに悩む米農家を支援することを目指すとしている。

なお同社は、協賛企業賞として神鋼鋼線工業賞も受賞した。



【埼玉りそな銀行賞】
株式会社アイナックシステム(福岡県)
提案テーマ:農業×自動化=未来

株式会社アイナックシステムは、産業用電気ハードウェアの設計や農業用自動化機器の製造・販売などを手がける企業。社名には、システム開発を通じて日本の農業に貢献するという志が込められており、「農業×自動化」というテーマに挑戦している。

今回は、栽培した作物を自動で収穫する「ロボつみ」という農業ロボットを提案。農業現場の人手不足に対応し、農家の作業を効率化することを目指している。



埼玉県深谷市は、持続可能な農業の実現に向け、今後もアグリテック企業の集積化を促進し、市内での生産者の増加や作業効率化を目指していく。


埼玉県深谷市
https://www.city.fukaya.saitama.jp/
DEEP VALLEY Agritech Award 2024
https://agritechaward.deep-valley.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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