有機米栽培の生産性向上へ、有機米デザイン株式会社と東京農工大学が共同研究を開始

山形県庄内地方で事業を通じた地域課題の解決を目指す街づくり会社、ヤマガタデザイン株式会社は、2019年11月に、国立大学法人東京農工大学が開発した食用米を利用し、多収かつ食味の良い、有機米の生産販売に向けて「有機米デザイン株式会社」を設立。

有機米の栽培に関する知見の収集と諸課題の解決に向けた共同研究を本格的に開始。 今後、連携機関との協働を積極的に進めるほか、除草作業を省力化するロボット開発など、有機米のマーケット拡大と有機農業に取り組む農業者の所得向上を目指した活動を推進していく。

有機米栽培を広めるための取り組み

今回の共同研究では、東京農工大学が開発した食用米を利用し、多収かつ食味の良い有機米の栽培技術確立を進めていく。同時に、有機米の栽培における除草の省力化という課題に対して、有機米デザインが検討を重ねているロボット技術での解決を目指す。

今月から本格的に始まる共同研究では、東京農工大学農学部の大川泰一郎教授の指導の下、有機米の栽培に優位性を持つ品種やその特性、その特性を活かすための栽培技術、並びに有機米の栽培条件実現のための技術手段に関する研究に取り組む計画だ。

東京農工大学農学部の有する有機栽培に関する多くの知見やノウハウと共に、この共同研究で得られた成果は、庄内で同社が行う有機米の栽培に活かしていくほか、今年4月に開校する鶴岡市立農業経営者育成学校(SEADS)の研修生にも還元していく。

有機農業の課題とは

世界の有機食品売上は年々増加しており、日本でも消費者の関心が高まっている。また、新規就農希望者への調査でも有機農業に興味や実施してみたいとの要望は更に高まっている状況にある。しかし有機農業を安定的に営農していくには、栽培に関するノウハウや経験に不安を持つ農家も多く、国内の耕地面積のうち有機栽培面積は数%程度と、まだまだ取り組みは限定的な状況だ。

さらに、水稲では10アール当たりの粗収益は有機栽培が慣行栽培に比べ2倍近くになるものの、労働時間は、およそ1.5倍となるなど、生産性に及ぼす時間的制約が大きな課題として挙げられている。中でも除草にかかる労働時間は5倍近くになるとの報告もあり、ロボット化への期待が高まっている。

出典:令和元年8月農林水産省「有機農業をめぐる事情」

持続可能な農業の仕組みを構築

農業生産では、海外からの輸入に頼っている化学肥料、化学合成農薬に依存しない、有機資源循環農法を実践することで、持続可能な農業を推進していく。

人材育成では、今年4月に開校する「鶴岡市立農業経営者育成学校(SEADS)」の運営を行う予定で、全国から集まる研修生を育成し、農業者が著しく減少する現状に対して、将来の担い手を確保していくという。

研究開発では、多くの協働機関とのオープンイノベーションな開発体制の構築を積極的に進めるほか、水稲有機栽培における除草工数削減のためのロボット開発や各種設備の開発などにチャレンジし、生産性の向上を目指す。

これらに加え、地域全体で利用できる有機農業のブランド「SHONAI ROOTS(ショウナイルーツ)」を立ち上げ、販路を確保することによって農業経営の安定化、持続可能な農業の実現に取り組んでいく。


有機デザイン米株式会社
https://founded-today.com/2019/7012401035988/
東京農工大学農学部生物生産学科 大川泰一郎教授
http://kenkyu-web.tuat.ac.jp/Profiles/2/0000197/profile.html
鶴岡市農業経営者育成学校(SEADS)
https://tsuruoka-seads.com/
SHONAI ROOTS
https://shonai-roots.com/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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