トクイテン、自社農場で「ミニトマト収穫ロボット」の稼働を開始

株式会社トクイテンは、愛知県知多市の自社農場で、自社開発の吸引式ミニトマト収穫ロボットの実証フェーズを完了し、栽培スタッフが日常業務としてロボットを稼働させる生産体制へ移行したと発表した。


自社農場にて実証フェーズから実運用フェーズへ


トクイテンは「持続可能な農業へのシフトを加速する」をミッションに掲げ、ロボットやAIを活用した農業の自動化と、データに基づく再現性の高い栽培技術の確立を目指す企業。愛知県知多市に自社農場を持ち、有機JAS認証を取得した圃場での有機ミニトマト栽培も行っている。2024年10月には農林水産省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)」に採択され、1ha規模の新施設建設による大規模実証を進めている。

国内の基幹的農業従事者は2025年時点で約102万人と、2000年の約240万人から半数以下に減少し、平均年齢は67.7歳に達している。トマト栽培では、収穫・選果作業が栽培管理全体の労働時間の中でも大きな割合を占めており、人手不足の影響を受けやすい工程だ。特にミニトマトは果実が小さく収穫頻度が高いため、1株あたりの収穫回数が多く、作業負担が大きい作物とされている。

国内外で、施設園芸における果菜類収穫ロボットの研究開発は活発に進められているが、その多くは研究・実証段階にあり、実際の生産現場で栽培スタッフが日常的に運用している事例はまだ限定的だ。


こうした状況の中、トクイテンは2023年に現行の吸引式収穫ロボットの開発を開始し、約3年間にわたり実証と改良を重ねてきた。2026年4月には1台で1日31kgのミニトマトの自動収穫を達成。ロボットが収穫したミニトマトは、社内評価において手作業収穫と同水準の品質を確認しており、通常どおり出荷しているという。これらの実績を踏まえ、同社は栽培スタッフが日常業務として運用する体制へ移行した。

収穫ロボットは、通常の収穫作業日の前日となる火曜・木曜の夕方から稼働。栽培スタッフが作業終了後にロボットを起動すると、ロボットは約5時間かけて農場内の通路を自動巡回し、カメラ映像をもとにAIが果実の熟度を判定、収穫適期を迎えたミニトマトを収穫する。翌朝、スタッフが収穫済みのミニトマトを回収し、選果・出荷を行う。1回の収穫量は、人間の収穫者1名分の約半分。



独自の「吸引式収穫」を核としており、弱い吸引力で果実を傷つけずにヘタから分離して収穫するのが特徴で、収穫機構に関する特許を取得している。畝間に敷設したレール上を自動走行し、通路間の移動時には、全方位に移動可能なホイールを用いてレール間を移動することで、農場内を自律的に巡回する。

トクイテンでは、自社農場での実運用開始にあわせて、大規模ミニトマト農場における共同実証パートナーの募集も行っている。自社農場で構築してきた収穫ロボットの運用体制を、異なる栽培環境や品種条件へ展開し、実運用を通じて収穫性能や運用効率のさらなる向上を目指す。

対象となるのはミニトマトの施設栽培を行う大規模農場を運営する企業・生産者で、収穫作業の省力化に課題があることが条件となっている。

現在は、愛知県知多市に1ha規模の新農場の建設を進めている。2027年3月の完成を予定しており、新農場では6台の収穫ロボットを導入し、農場全体における収穫作業のさらなる自動化を目指す。あわせて、葉かき・芽かきなど収穫以外の農作業の自動化や、カーボンニュートラル型施設園芸の実証にも取り組むとしている。


代表取締役 豊吉隆一郎氏のコメント
「今回、私たちのロボットが運用フェーズに入り、とても嬉しいです。ミニトマトの収穫ロボットから農業の自動化をするという創業時の目標を一つ達成しました。個人的には、学生の頃に『いつか役に立つロボットを作りたい』と思っていた夢がかなったと言ってもいいかもしれません。世界でも実運用できているミニトマトの収穫ロボットというのは少なく、世界一の性能も見えてきました。 2027年に予定している新農場では、この取り組みをさらに広げ、多数の収穫ロボットがミニトマトの生産を支える農場づくりに挑戦します。トクイテンらしく、農業のおもしろさと技術の力を組み合わせながら、これからの有機農業の新しい姿をつくっていきます。 ここまで来られたのは、農場で栽培に向き合うスタッフと、粘り強く改善を重ねてきた開発チームの積み重ねがあったからです。今後も、世界一のロボットといわれるよう開発を続けて参ります」

取締役 森裕紀氏のコメント
「2023年に吸引式の収穫方式に着手してから約3年、複数のプロトタイプの開発と週2回の農場テストを愚直に繰り返しながら、ようやく栽培チームに運用を任せられる段階に到達しました。ロボットが研究室ではなく実際の農場で毎週動き続けるには、収穫精度だけでなく、安定性や運用のしやすさなど地道な改善の積み重ねが不可欠でした。次は新農場での6台体制に向けて、さらなる収穫性能の向上を目指すとともに、複数台の協調制御システムやメンテナンス性向上、故障耐性向上など『日常使いの収穫ロボット』のコンセプトの下、開発を進めます」


株式会社トクイテン
https://tokuiten.jp/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
パックごはん定期便