キユーピー、食品原料の良品を検出する「外観・内部AI検査装置」がイノベーション創出強化研究推進事業に採択

キユーピー株式会社は、農研機構生物系特定産業技術研究支援センターが公募していた「令和2年度イノベーション創出強化研究推進事業」について、同社がかねてより研究・開発を進めてきた「外観・内部AI検査装置」が採択されたことを発表した。

この事業は、農林水産業や食品産業の発展等に貢献する研究開発の基礎・応用・実用化の各ステージを支援する提案公募型の研究開発事業。同社のステージは応用で、研究期間は2022年度までの3年間だという。

同事業では、株式会社ブレインパッドの協力の下、「原料の外観・内部に混入した異物を検出できる低価格・高精度・高速な原料検査装置の開発を進める」としている。

実施体制

株式会社ブレインパッドは、企業の経営改善を支援するビッグデータ活用サービスやデジタルマーケティングサービスを手がける企業。同事業では、AIアルゴリズムの応用研究および実装を担当する。

良品を学習させる、逆転の発想を用いたAI活用型の原料検査装置


キューピー株式会社は、マヨネーズやドレッシング等の調理・調味料を製造する大手食品メーカー。調理・調味料事業のほかタマゴ事業やフルーツソリューション事業、ファインケミカル事業等を展開する。

同社は、2016年からAIを活用した原料検査装置の開発に着手。2018年~2019年にはベビーフードの製造工場およびグループ企業の惣菜工場に導入を進めた。

同社の原料検査装置の特徴は、不良品の学習が一般的とされるAIによる不良品の検出装置において、良品を学習させるという逆転の発想を用いたことにあるという。この方法を活用すれば良品以外をすべて不良品として検出するため、検査精度や現場での操作性を飛躍的に向上させるという。

電磁波で原料内部に入り込んだ異物も検出


同事業では、AIアルゴリズム等のサイバー技術や照明技術等のフィジカル技術を改良することで、40品種以上への対応を目指すほか、原料内部にまで入り込んだ異物を電磁波センシングで検出することをテーマに掲げている。

研究の内容は下記の通りだ。

1.「電磁波センシングによる原料内部の異物(虫)の検出技術の研究開発」
電磁波技術とAIアルゴリズムの最適化により、 内部混在の虫の高感度検出技術を開発する。

2.「多品種原料への対応(AI食品原料外観検査装置)」
AIアルゴリズムおよび画像処理技術の改良等により、 識別困難な異物を判別する。

3.「高処理能力への対応(AI食品原料外観検査装置)」
AIアルゴリズムの改良による検査処理速度の高速化と高処理に対応する搬送機構を研究開発する。

4.「上記を活用したAI食品原料検査装置のプロトタイプの開発」

5.「AI食品原料検査装置の生産現場への実装と課題抽出」

6.「同業他社および、 原料メーカーへの提供(装置販売での利益は追求しない)」

同社は、今回の事業を通じて、食品・原料メーカーが抱える共通の課題に向けた研究開発に取り組むことで、メーカーと消費者の双方が安心できる社会の実現を目指す考えだ。


キユーピー株式会社
https://www.kewpie.com/
農研機構生物系特定産業技術研究支援センター
http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/brain/
令和2年度イノベーション創出強化研究推進事業
http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/brain/innovation/H30/koubo/R01.html
株式会社株式会社ブレインパッド
https://www.brainpad.co.jp/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
パックごはん定期便