NTTと農研機構、秘密計算技術で農作物データを相互利用する共同研究を開始

NTT(日本電信電話株式会社)と農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)は、研究機関や企業が個別に保有する農作物のデータを秘密計算技術を用いて共有する共同研究を2020年10月29日に開始した。

この研究は、これまで共有が困難とされてきた組織間における農作物データの相互利用を目指したもの。両者は、研究機関や企業が保有する未利用の農作物データを相互利用できる仕組みを構築することで、農業研究の効率化および農業分野における有益情報の共有につなげたい考えだ。

出典:NTTと農研機構が秘密計算技術による作物ビッグデータ活用の共同研究を開始|NTTグループ

秘密計算技術を用いた農作物データ共有の技術開発を目指す


農業分野における研究開発は、農作物のデータを用いた解析を基本に研究が進められている。
しかし研究に使用される農作物データのほとんどは、技術ノウハウの流出等の懸念から、研究機関や企業が個別に保有する状態という。

今回の研究は、研究機関や企業が個別に保有する農作物のデータを、秘密計算技術を用いて共有する技術の開発を目指したもの。秘密計算技術とは、計算対象の元データを暗号化した状態で、データの共有や保管、分析を実施する技術を指す。

同研究では、農作物ビッグデータの安全かつ高等な利活用の検証として、「独立して存在する農作物データの提供・保管・分析・解析までのプロセスを暗号化した状態で処理できるよう検証を進める」としている。

これにより、複数の組織が保有するデータの解析精度の向上を図り、農業分野における研究開発の効率化につながる新たなデータ解析手法を開発したい考えだ。

データ共有による解析精度と信頼性の向上(イメージ)
また、対象作物・品種全体の傾向把握として、複数組織のデータを一括分析して全体の傾向を明らかにする技術の開発にも着手する考えも示しており、全体における対象データ間の比較や位置づけの把握については、「複数組織データと比較・分析して個々の組織のデータの位置づけを明らかにする」としている。

データ共有による自組織データの位置づけの明確化(イメージ)
将来的には、農研機構が整備を進める作物データと各組織が保有する作物データを用いて、世界最高水準の情報量を有する安全な農作物ビックデータとこれを用いた安全かつ高度な解析エンジンの開発を進める方針だ。

目指すビジョン
研究の役割は、NTTが秘密計算技術を活用した各種分析手法の評価と、データを安全に利活用するノウハウの提供を担い、農研機構が各種作物データの分析手法の提供、農作物データの提供、秘密計算上での作物データの分析を担うとのこと。

両者は研究を通じて、「各組織が保有する未利用の農作物データをビッグデータとして活用できる仕組みを構築することで、データ駆動型スマート農業の実現と日本農業の発展に貢献したい」としている。


NTT(日本電信電話株式会社)
https://www.ntt.co.jp/index_sp.html
農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)
http://www.naro.affrc.go.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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