産官学が連携して生育予測や流通を管理する「IoPクラウド」が高知県でスタート

高知県は、JA高知県、高知大学、高知工科大学、高知県立大学、IoP推進機構、高知県工業会、高知県IOT推進ラボ研究会らと連携して、デジタル技術を用いた農業プラットフォームの連係基盤「IoP(Internet of Plants)クラウド」を活用した取り組みを開始した。

この取り組みには、 東京大学大学院情報学環・越塚研究室、 九州大学、 デジタルハリウッド大学、農研機構、株式会社NTTドコモ、 富士通株式会社、四国電力株式会社らも参画している。

同県は、Society5.0時代における「IoPクラウド」を核としたデータ駆動型農業を確立・発信することで、 県内施設農業の発展と関連産業の集積を実現したい考えだ。


農業ハウスのデータと出荷データを集約するデータベースシステム


「IoPクラウド」は、IoTで接続された農業ハウス内で計測した温度や湿度、 Co2濃度、 カメラ映像、 機器の稼働状況等のデータと、高知県で生産される農産物の出荷データをリアルタイムで集約するクラウド型のデータベースシステム。

システムの監修は、高知県IoPプロジェクトのスーパーバイザーである東京大学情報学環学環長の越塚登氏と幅広い業界を対象にDXを推進する株式会社INDUSTRIAL-X代表の八子知礼氏が担当する。

「IoPクラウド」は、施設栽培における要因分析や環境制御ノウハウの磨き上げ、 情報共有、 遠隔制御、 自動制御等に役立つことから、戦略的かつ効率的な農業の実現に寄与することが期待されている。

高知県の農業が抱える課題を多方面から支援


高知県では、農業を地域経済の活性化や雇用を支える基幹的産業に位置付けているが、農村部の過疎化に伴う農業者の減少や高齢化が進行する状況から、生産構造の脆弱化が懸念されている。

この取り組みでは、「もっと楽しく、もっと楽に、もっと儲かる農業」をテーマに、「IoPクラウド」を生産者が直接利用することに加え、詳細なデータ分析による即時性の高い栽培指導の実施や、農作物の生理に基づく成育予測の研究・実証、優れた機能を備えたスマート農業製品の開発に役立て、県内農業が抱える課題を多方面から支援する方針だ。


また、「IoPクラウド」と連携する機器やソフトウェアの開発を促進するための施策として、システムのAPIも公開。
企業が開発する製品のIoT化やクラウド適応、標準的なセキュリティ水準の達成を推進して、高度な農業用機器やソフトウェアの市場拡大も図る。


現在、高知県は約3000戸の農業者データを対象に集積を進めている段階で、「令和5年度(2023年度)には県内の農業者のほぼすべてにあたる約6000戸のデータを集積したい」と述べている。

同県は、今回の取り組みを通じて得た知見とノウハウを活用して、農業を中心とした日本の一次産業の発展およびSociety5.0の推進に貢献したい考えだ。


高知県ホームページ
https://www.pref.kochi.lg.jp/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
パックごはん定期便