金沢工業大学、ワサビのコンテナ型水耕栽培 実証実験を開始

金沢工業大学は、災害に強いコンテナ型水耕栽培方式を採用した中規模ワサビ工場の実証実験を行っていると発表した。物流の資機材販売などを手がけるNX商事株式会社との共同研究によるもので、2023年10月より実証実験設備を稼働している。

コンテナ内部の栽培棚で育っているワサビの様子
出典:https://www.u-presscenter.jp/article/post-52795.html

露地栽培に比べ約3~4倍の生育速度に


日本固有種であるワサビは、世界的な和食ブームの到来と医療への用途転用等により注目を浴びているという。これまでにも植物工場における水耕栽培は試みられてきたが、生育環境条件が一般の葉菜・根菜類に比べて厳しく、かつ栽培期間も長いため、採算性が悪く、一般的に普及が困難とされてきた。

そこで金沢工業大学は、IoTセンサーを使って実現した最適な栽培環境と、葉面から誘発する極微弱な生体電位(葉面電位)を常時計測する独自技術を加えることで、生育速度の促進を可能にした。

IoT・ICT活用による完全自動制御型の栽培システムの概要
出典:https://www.u-presscenter.jp/article/post-52795.html
 
今回の実証実験で使用されているコンテナ型中規模ワサビ工場は、工学部電気電子工学科 平間淳司研究室(専門:生体情報工学、電子回路工学)が有する「Speaking Plant Approach(以下、SPA)」という技術によるワサビの水耕栽培の研究開発成果と、コンテナ植物工場製造に知見と実績のあるNX商事の特殊コンテナ製造技術を融合させたもの。

水耕栽培システムについては、金沢工業大学とサカ・テクノサイエンス株式会社が共同で先行開発した水耕栽培管理システム「Seeds-N」を基本に、ワサビ栽培に特化した栽培システムを開発し、採用したという。

金沢工業大学扇が丘キャンパス内に設置したコンテナ利用による水耕栽培方式の完全閉鎖系ワサビ工場
出典:https://www.u-presscenter.jp/article/post-52795.html

「SPA」とは植物体の草丈や葉面積、葉緑素、着果数などを常時計測して生育状況を判断しつつ、光・温度・湿度・CO2・土壌・水耕の水分・養液などの至適栽培環境を制御することによって生育促進を図る技術である。

平間研究室では、葉面から誘発する極微弱な葉面電位を生育期間中に常時計測する独自の技術を開発し、至適栽培環境に加えて「ワサビの健康診断」を併用することで生育促進効果の向上を行ってきた。

葉面電位は、人間に例えるならば、「脳波」「心電図」の様に生体から誘発する微弱な生体電位に相当するもの。葉面電位変動特性から健康診断も同時進行させることで、ワサビの異常を検知した際に生育環境制御パラメータを一時的に変更させ、生育状態の経過観察に基づき健康状態に戻すことが可能となるという。

ワサビ葉に電極を貼付け微弱な電圧(葉面電位)を測定中の様子
出典:https://www.u-presscenter.jp/article/post-52795.html

平間研究室では、これまでキャンパス内に設置された小規模ワサビ工場で実証実験を行なっており、在来種のワサビの芋(ワサビ可食部分)では、ワサビ田での露地栽培に比べて約3~4倍の生育速度促進を実現した。

金沢工業大学は、テクノロジーを使って「ワサビの声」を聞きながら、最適な環境をコンテナ内で実現させることで、季節や生産地にとらわれずに、安定した品質でワサビを栽培する技術の確立を目指すとしている。


金沢工業大学
https://www.kanazawa-it.ac.jp/index.html
NX商事
https://www.nx-shoji.com
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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