トーヨーホールディングス、水耕栽培レタスのAIによる不良苗検出システムを開発

株式会社トーヨーホールディングスは、2020年11月より開始した独自開発した自動航行撮影機によるAI生育状況管理システムの実証試験において、2カ月でレタス不良苗の判定精度が97%に到達。このシステムを利用することで生育確認・対応工数を98%削減することが可能になったという。

実証試験は、レタス栽培の不良苗を判定するもので、開発中の「室内水耕栽培における完全自動型不良判定システム」の一環。また、不良苗判定の座標位置特定も実施しており、こちらの特定精度は100%を達成した。撮影した判定結果は、アプリケーションに表示され、現場で目視確認することなく、効率的に作物の状態を確認できる。

(画像左)独自開発した自動航行撮影機 (画像右)生育不良判定結果のアプリケーション表示

AIにより97%以上の精度で不良苗を検出


基幹的農業従事者の大幅な減少、平均年齢は67.8歳で、65歳以上の割合が69.8%であることからも農業の現場の労働力不足は深刻化している。同時に、近年の施設園芸における課題として、熟練者のノウハウの平準化と若手へのノウハウの共有と継承も挙げられる。

トーヨーでは、これらを解消するために自動航行撮影機や画像認識AIを活用し、植物の育成状況や病害発生の確認や判断を集中管理できるシステムの開発を行い、将来的には社会実装し、商品化を目標としている。

開発中の「AI生育状況管理システム」は、「どこでも」「誰でも」「効率よく」栽培できる施設園芸の実現を目指すもの。良苗・不良苗を学習した本システムを導入することで、不良苗を漏れなく検知し、作業者へ通知。自動航行で作物撮影を行うため、広い面積を目視で確認していた作業者の工数を大幅に削減できる。また、不良苗の発見後、早期に対応できるようになるため、生産効率の改善にも寄与するという。

トーヨーが開発したAI生育状況管理システム

生育不良判定結果のアプリケーション表示(サンプル)
本システムは、2020年11月より同社の関連施設である羽生市レタス水耕栽培農園の運用モデルとして開発、実証試験が行われている。さらに今回の結果を受けて、2021年内に病害検知・収穫適期機能を開発予定。また自動航行撮影機を運搬機として使用できるようにすることも視野に入れ他開発を進めていく。


トーヨーホールディングス アグリ事業研究事業紹介
https://toyo-group.com/enefarm/service/agri/research.html

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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