空気中のCO2を活用する施肥装置、CRRAとイノチオアグリが共同研究

一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA)とイノチオアグリ株式会社は、空気中に含まれる二酸化炭素(CO2)を活用して農作物の収量増大・品質向上を目指す共同研究を開始した。

両者は今回の研究を通じて、農業分野での活用が見込める新しいCO2回収・活用モジュールを開発することで、「農作物の収量増加および品質向上、コスト削減を実現したい」としている。


一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA)は、東京大学の学生で化学者・発明家の村木風海氏が機構長を務める研究機関。

空気中に含まれるCO2を直接回収する技術やCO2の排出量を大幅に削減する技術、空気中のCO2から石油を製造する技術等の開発を通じて、地球温暖化を防止する方法や人類の火星移住を実現する方法を研究している。2017年には、ボタン操作のみで空気中の二酸化炭素を回収できる装置の開発に成功した。

一方、イノチオアグリ株式会社は、農業用ハウスの設計・施工や農業資材の販売、花き品種の開発、 農産物の生産、 ICTを活用したハウス内環境制御システム等を展開する企業。

愛知県豊橋市を本拠にオランダでトップクラスの技術を誇るというBosman Van Zaal社の大規模園芸施設の日本市場における施工・販売も手がける。

現在は、CO2排出量を2030年までに27.5%削減することを目標に、次世代施設園芸における化石燃料の使用量を30%減少させる取り組みのほか、スマート農業の普及や環境に配慮した農業の実現を目指した取り組みにも着手している。

より環境負荷の少ないCO2直接空気回収モジュール開発へ


CO2は、地球温暖化の原因として異常気象や海面上昇、農作物の収量減少等への影響が懸念されている一方で、ビニールハウス等の施設栽培では、CO2装置を使用して濃度を通常の2.5倍にした場合、最大30%の収量増が見込める効果が実証されている。

しかし、一般に流通しているCO2装置は、環境への負荷が大きい化石燃料を大量に使用するタイプの製品で、装置自体の効率も決して良いとは言えない現状から、環境への負荷が少ない効率的な装置の開発が望まれてきたという。

両者の共同研究は、空気中のCO2を効率的に使用して環境への負荷をかけずに農作物の生産性を向上するもので、研究ではCRRAが保有するCO2回収技術とイノチオアグリが蓄積してきた農業分野におけるCO2ノウハウを活用して、化石燃料を使用しないCO2直接空気回収モジュールの開発を進める方針を固めている。

2050年温室効果ガス実質ゼロ目標への貢献も


両者が開発を進めるCO2直接空気回収モジュールは、空気中のCO2を直接回収できる装置として、農業分野のほか化粧品や炭酸飲料、消火剤、タイヤの充填に使用するガスなど、さまざまな分野での活用が期待されている。

両者は、CO2直接空気回収モジュールを使用して地球温暖化の原因であるCO2を有効活用することで、政府が推進する2050年温室効果ガス実質ゼロ目標にも貢献したい考えだ。


一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA)
https://www.crra.jp/
イノチオアグリ株式会社
https://www.ishiguro.co.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
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    川島礼二郎
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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