農研機構、害虫の飛翔位置予測技術を開発 レーザーによる防除に活用

農研機構は、モデル化した害虫の飛行パターンとステレオカメラで撮影した画像で算出した3次元情報を利用して害虫の飛行位置を予測する技術を開発した。

0.03秒後の飛翔位置を予測


現在、日本では空中を飛翔する害虫をピンポイントで照射する高出力レーザーを使用した害虫駆除技術の研究・開発が進められているが、その実現には空中をすばやく飛び回る害虫の位置を正確に検出する技術とレーザーを照射するまでのタイムラグ(約0.03秒)を解消する技術の2つが必要だという。

レーザー狙撃による害虫防除システムのイメージ
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/144889.html

研究では、不規則に飛行する8匹のハスモンヨトウを1秒間に55回のペースで撮影して3次元上の飛翔軌跡を計測。
壁や柱、ノイズなど不要なものをリアルタイムに除去して、飛翔するハスモンヨトウのみを検出する技術を考案した。

8匹のハスモンヨトウの位置を同時に計測した様子
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/144889.html

しかし、このままの技術では、レーザーを照射するまでのタイムラグが生じてしまうため、少しだけ先の飛翔位置(2~3cm)を予測できる新たな技術を開発。その結果、検出から0.03秒後の飛翔位置を1.4cm程度の精度で予測することに成功したそうだ。

今回の研究は、農林水産省が実施するムーンショット型農林水産研究開発事業のひとつである「害虫被害ゼロコンソーシアム(先端的な物理手法と未利用の生物機能を駆使した害虫被害ゼロ農業の実現)」の一環で行われたもの。複数のハスモンヨトウの飛翔パターンの予測が可能なモデルと、レーザー照射の方向を制御できるシミュレーターを使用して効率的なシステム開発が進められている。

シミュレータ上を飛行するハスモンヨトウにレーザーを照射する様子
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/144889.html

農研機構は、農業用ドローンや農業用ロボットへの搭載など2025年の実用化を目標に、今後も研究を継続していく考えだ。


農研機構
https://www.naro.go.jp/index.html
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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