急こう配斜面の雑草も刈り取れるリモコン式草刈機が発売

北海道を本拠に農業機械の開発・製造・販売を手がける株式会社IHIアグリテック農研機構、福島県農業総合センターと共同で、急勾配の法面に繁茂した雑草を刈り取る国産初のリモコン式小型ハンマーナイフ草刈機を開発した。発売予定は2022年6月頃(台数限定)。

出典:https://www.ihi.co.jp/iat/news/2021/i/pr220215.pdf

最大45度の傾斜角度まで対応


3者が開発したハンマーナイフ草刈機は急勾配法面の作業に特化したクローラー型の製品。ハンマーナイフ草刈機とは、高速で回転するドラム型の軸に取り付けたY字のフリー刃を利用して雑草を粉砕しながら刈り取る農業用の機械である。

IP65防塵防水を施した専用のリモコン(周波数2.4GHz)を使用して遠隔(100m以上)から操作(エンジンの始動・停止・前進・後進・旋回・草刈部の上下・非常停止等)できるのが特長で、最大45度の傾斜角度まで対応する。

出典:https://www.ihi.co.jp/iat/news/2021/i/pr220215.pdf

主な特長は以下の通り。

  1. 草丈1m以上の雑草を細かく粉砕。
  2. 刈高さ20~200mmまで対応。
  3. ガソリンエンジンによる駆動。
  4. 無段変速機(HST)による車速調整(0~1.4m/s)。
  5. 片側のクローラを停止して旋回する信地旋回が可能。
  6. 両側のクローラを停止してその場で旋回する超信地旋回が可能。

出典:https://www.ihi.co.jp/iat/news/2021/i/pr220215.pdf

機体寸法は1683mm×1105mm×690mmで重量は346kg。軽トラックや商用バン等を利用して運搬できる。

出典:https://www.ihi.co.jp/iat/news/2021/i/pr220215.pdf
香川県善通寺市で実施した実証実験のデータでは、平均斜度36度(最大38度数)・草丈74cmの条件で、市販リモコン草刈機の2倍程度の能率で作業できることを確認。

出典:https://www.ihi.co.jp/iat/news/2021/i/pr220215.pdf

福島県相馬郡飯舘村で実施した実証実験では、つる性の雑草が繁茂した平坦な場所でも作業できることを確認。

IHIアグリテック、農研機構、福島県農業総合センターの3者は、農研機構が2019年に実施した農業機械技術クラスター事業を契機に、日本の中山間地域の草刈作業を省力化する技術の開発を共同で進めてきたという。

3者は、今回開発したハンマーナイフ草刈機の販売を通じ、労働力不足の解消、作業者の負担軽減、転倒・転落事故の防止など日本の中山間地農業が抱える課題を解決したい考えだ。


株式会社IHIアグリテック
https://www.ihi.co.jp/iat/
農研機構
https://www.naro.go.jp/
福島県農業総合センター
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/37200a/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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