アグロデザイン・スタジオ、除草剤抵抗性を持つ雑草にも効く阻害剤の開発に成功

毒性リスクの低い農薬の研究・開発を進める株式会社アグロデザイン・スタジオは、深層学習を活用した最先端技術の研究・開発を進める株式会社Preferred Networksと実施した共同研究で、雑草の除草剤抵抗性変異に有効な阻害剤の創出に成功した。

アグロデザイン・スタジオへのインタビュー記事はこちら
99.8%の農地で使われる農薬を「安全な農薬」に変えたい 〜株式会社アグロデザイン・スタジオ 西ヶ谷有輝氏【前編】
従来の農薬のイメージを変える「選択的な農薬」とは 〜株式会社アグロデザイン・スタジオ 西ヶ谷有輝氏【後編】




抵抗性雑草出現の原因となる「酵素」に着目


両社が実施した共同研究は、抵抗性雑草の出現の原因となるアセト乳酸合成酵素に着目したもの。この酵素を標的とすることで少量の薬剤で高い除草効果のある農薬を開発することができるという。また、アセト乳酸合成酵素は動物の体内には存在しないため、この酵素を標的とすることで人体や動物への安全性の高い農薬を作ることも可能になる。

これまでアセト乳酸合成酵素を標的として開発された除草剤は多数あるが、この酵素を構成するアミノ酸残基の点変異によって抵抗性雑草の出現が深刻化している。そのため変異型アセト乳酸合成酵素に効果のある新しい化合物が望まれているそうだ。

研究では、アグロデザインによる結晶構造解析、酵素および植物に対する試験技術とPreferred NetworksのAI創薬プラットフォームによる化合物探索などを組み合わせることで、農薬開発に必要な性質を有するリード化合物を複数創出することに成功。それらの新規リード化合物を対象に阻害効果の解析を行った結果、アセト乳酸合成酵素の抵抗性変異体に対して有効であることが判明したという。

同社は、今回の研究で得た成果を基に、高い抵抗性を持つ雑草にも有効で毒性リスクの低い除草剤の開発を進める構えだ。


株式会社アグロデザイン・スタジオ
https://www.agrodesign.co.jp
株式会社Preferred Networks
https://www.preferred.jp/ja/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
パックごはん定期便