農家と農業体験のマッチングアプリ「シェアグリ」、繁忙期の人手不足をサポート

2019年7月16日、農業人材のシェアリング事業を展開する株式会社シェアグリは、農家の超短期求人と農業体験者をマッチングするデイワークアプリ「シェアグリ」をリリースした。農家が抱える人手不足を解消するとともに、気軽な農作業体験を通じ、都心部などにおける農業関係人口の創出を目指していく。



人手不足を効率的に解消する「シェアグリ」

シェアグリは、農業体験に興味を持つユーザーと、農家の短期雇用をマッチングする農業人材シェアリングサービス。農業現場では、繁忙期と閑散期の労働量に大きな差が出るものの、資金面などの問題から通年雇用での継続が難しく、繁忙期に絞った人材雇用に注力したい思惑がある。

これらの事情を汲み、同アプリでは農家側による「超短期求人」のニーズに対応し、1日単位での人材確保を可能にするなど、繁忙期における人手不足の解消を下支えする。一方、農業体験を希望するユーザー側は、条件に見合った提携先農家で技術や資格を有さない「その日だけの農作業」を楽しみながら、報酬を受け取ることができる。

2019年現在、同アプリ内では千葉県、長野県、沖縄県など全国8県のうち、約30件の農家が求人情報を配信しているが、今後もサービスの拡充を図り全都道府県に拡大する意向を固めている。


地方と都心部を双方向マッチング

(1)関係人口の増加や地域活性化を実現

農業人口の減少や高齢化による深刻な人手不足を解決する手段として、同アプリでは、地方に移住した「定住人口」や観光に来た「交流人口」には該当しない、地域や地域住民と多様に関わる「関係人口」の創出に注目。

都心部と地方、または地域内で農業人口をシェアリングし、継続した関係性を築くことで人手不足を解消するほか、消費・地域活動を通した地域活性化や長期的な農業関係人口の創出にも繋げるとしている。

(2)都心部のニーズを地方農家へ

順天堂大学とNTTコミュニケーションズ株式会社の報告によると、農作業を行うことで心理負担の緩和やストレス軽減をもたらす「アグリヒーリング」の効果が医科学的に定量・数値化され、その具体的な成果を確認してきたとのことだ。

また、東京都が都民を対象に行った調査では、農作業体験を希望する住民の割合は全体の56%に上り、年代別に20代が68%、30代が63%と特に若い世代の間でニーズが高まっているという。

都心部においては、農作業によって生じるこれらの健康増進や生きがいづくり、ふれあいなどに価値を見出す一方で、近年人気を集めている「市民農園」は大都市ほど供給不足となっており、東京都特別区の競争率は2.6倍を叩き出している。

このような現状に対し、同アプリでは手軽に農作業体験ができる場を設け、都市住民のライフスタイルの一部に農業という新たな選択肢を提供することも目的としている。都心部と農家双方のニーズを満たし、農業への間口を広げるとともに、やがては仕事としての農業を選択する人々が増えるサービスを目指していく構えだ。


<参考URL>
iOS版「シェアグリ」
Android版「シェアグリ」

株式会社シェアグリ
農業における人手不足等に関するアンケート調査結果(公表版)
地域への新しい入口「関係人口」ポータルサイト
農林水産省 都市農業振興のための取組
プレスリリース「順天堂大学とNTT Comが農作業によるストレス軽減に関する実証実験を開始」

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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  4. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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