岡山大学ら研究グループ、AIを用いてイネの収量を簡単に推定する技術を開発

岡山大学と京都大学、東京農工大学、国際農林水産業研究センター、岐阜大学、東北大学は、野外で生育するイネの収穫期の画像を撮影するだけで、高い精度で面積あたり収穫量(収量)を推定する技術を開発した。

市販のデジタルカメラやスマートフォンでイネを撮影するだけで、AIの画像解析によって、イネの収穫量を簡単に推定可能となった。


スマートフォンで撮影するだけで収量を推定可能に


共同研究グループは、国際的な研究ネットワークを通じて国内外から大量のイネ画像と収穫量のデータを収集し、AIに学習させた。これにより、野外で生育するイネの収穫期の画像を撮影するだけで、高い精度で面積あたり収穫量(収量)を推定する技術を開発した。

同技術は幅広い品種や環境条件において適用可能なだけでなく、市販のデジタルカメラやスマートフォンで撮影するだけと、誰でも簡単にイネ収量の推定を可能とした点に最大の特徴があり、イネの収穫量を見極める“AIの目”を実現したと言える。

また、これまで時間と労力をかける必要のあったイネの収量調査を大幅に省力化・迅速化することで、育種現場における多収品種の選抜に貢献すると考えられる。

さらに、農家圃場、特に開発途上地域など、これまで調査困難であった地域のイネ生産量の把握や、最適な栽培法選択や政策立案など、多方面にわたって活用されることが期待される。

本研究成果の概要図
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域の田中佑准教授は、「本研究は、多数の国・研究機関が連携し、数多くの研究者の力が結集した国際共同研究の成果です。関わった全ての方々に心からお礼を申し上げます。私自身はAIの専門家ではないのですが、新たな分野にチャレンジし、こうして成果を公表できたことに達成感を感じています。ぜひ多くの方がこの技術に興味を持っていただけることを願っています」とコメント。

なお、この研究成果は、国際誌「Plant Phenomics」に現地時間2023年6月29日付けでオンライン公開され、2023年7月28日付けで出版された。

論文情報
論 文 名:Deep learning enables instant and versatile estimation of rice yield using ground-based RGB images
掲 載 紙:Plant Phenomics
著 者:Yu Tanaka, Tomoya Watanabe, Keisuke Katsura, Yasuhiro Tsujimoto, Toshiyuki Takai, Takashi Sonam Tashi Tanaka, Kensuke Kawamura, Hiroki Saito, Koki Homma, Salifou Goube Mairoua, Kokou Ahouanton, Ali Ibrahim, Kalimuthu Senthilkumar, Vimal Kumar Semwal, Eduardo Jose Graterol Matute, Edgar Corredor, Raafat El-Namaky, Norvie Manigbas, Eduardo Jimmy P. Quilang, Yu Iwahashi, Kota Nakajima, Eisuke Takeuchi, Kazuki Saito
D O I:10.34133/plantphenomics.0073
U R L:https://spj.science.org/doi/10.34133/plantphenomics.0073


国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    北島芙有子
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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