Jizoku、水不足が深刻な地域のカーボンクレジット創出を停止 収量確保を優先した栽培支援へ

株式会社Jizokuは、2025年度に深刻な渇水の影響により中干しが実施できない地域において、農業系カーボンクレジットの創出を行わない決定をしたと発表した。

これは、安定した食料生産の確保、地域環境の保全、そして農家の営農継続を最優先に考えたものであり、同社が掲げる「高品質なクレジット創出と持続可能な農業の両立」という理念に基づく判断だという。


安定した食料生産を優先するため、クレジット創出を停止


株式会社Jizokuは、「自然資源の価値を可視化する」をミッションに、農業分野におけるカーボンクレジットの創出事業を展開する企業。生物多様性調査や衛星データを活用した農地のモニタリングにも注力しており、農業を起点とした持続可能な社会の実現を目指している。

近年、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、農業分野でも水田管理を通じた温室効果ガス削減が注目されている。このような状況の中、Jizokuは、中干し期間の適正管理によるメタン排出削減を通じて、農業系カーボンクレジットを創出してきた。

しかし、2025年度は記録的な降水量不足により、一部地域で水稲栽培に必要な水の確保が困難となっている。この状況では、中干しを行うことで収量が著しく低下するおそれがあり、地域の食料供給や農家の生計に深刻な影響を及ぼしかねない。また、中干し実施前から水田に水がない状況では、追加的に中干しを実施することができず、追加性のないクレジットの創出につながるという。

これを受け同社は、渇水により中干しが実施できない地域において、2025年度のカーボンクレジット創出を停止すると発表。対象水田では中干しを行わず、収量確保を優先した栽培管理を支援するとしている。

Jizokuは、「安定した食料生産と農家の営農継続を最優先すること」、「周辺環境や地域の水資源との調和を図ること
」、「長期的に高品質なカーボンクレジットを安定的に創出する体制を維持すること」を基本方針として、地域の気象条件や水資源状況に応じた事業運営を行っていく。

また、今年の経験を踏まえ、カーボンクレジットの数だけでなく質で評価されるものにしたいと考えているという。


株式会社Jizoku
https://jizoku-inc.com/ja/

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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