食べチョク、深刻化するクマ・イノシシなど鳥獣被害の調査結果を発表

産直通販サイト「食べチョク」を運営する株式会社ビビッドガーデンは、クマ・イノシシ・ハクビシンなどの鳥獣被害による生産現場への影響を調査し発表した。

調査対象は食べチョクに登録している全国の生産者。2025年11月2日(日)~6日(木)の期間に、130人の生産者が参加した。


クマなどの鳥獣被害が拡大し、多くの生産者に影響


2025年に入り、全国的にクマによる被害が増加しており、生産者から「被害が深刻」「対策費がかさむ」といった声が挙がっているという。そこで食べチョクは、クマをはじめとする鳥獣被害が生産現場に与える影響や、各生産者の対策状況を把握するためのアンケート調査を実施した。


今回行った調査では、鳥獣被害が発生していると回答した生産者のうち、51%が「2025年に鳥獣被害が例年よりも多い」と回答。一方で、「例年並み」は39%、「例年より少ない」は10%となった。


今年鳥獣被害が発生していると回答した生産者のうち、63.3%が「1~10%程度の売上減」と回答。さらに「11~20%程度の売上減」が19.3%、「21~30%程度の売上減」が10.1%、「41~50%程度の売上減」が1.8%となり、生産者は売上に何らかの影響を感じていることが明らかとなった。


被害をもたらす主な野生動物は、鳥、イノシシ、ハクビシ、シカ、アライグマ、モグラ、サル、クマ、アナグマ、タヌキなど。その他も含めると計20種類にのぼり、多様な害獣による被害が発生しているという。


今回の調査では、被害の有無にかかわらず、82.9%の生産者が何らかの対策を行っていることがわかった。例えば、新潟県で山菜やくるみを生産する農家は、クマよけスプレーや熊鈴、爆竹、ピッケル、採取兼用ナイフで対策を行っている。


「自治体から鳥獣被害対策の支援がある」と回答した生産者は56.6%となった。一方で35.7%は「支援がない」と回答しており、自治体の支援が十分に行き届いていないこともわかった。

全国の生産者からは、熊避けスプレーや電気柵購入などに対する補助金の拡充を希望する声が挙がっているという。


鳥獣被害の中でも、クマの出没や被害について「例年より増えている」と回答した生産者は20%となった。また「例年並み」と回答した6.2%を合わせると、全国の26.2%がクマの出没や被害の増加を実感している。


東北地方の生産者に絞ると、2025年にクマの出没や被害が例年より増えていると回答した生産者は72.2%となった。


また信越地方のみを対象とした場合、42.1%がクマの出没や被害が例年より増えていると実感しているという。


クマ被害に関する生産者の声
・加工用ぶどうがクマに荒らされ20a全滅した(山形県・クマ被害・ぶどうを生産)
・秋の天然きのこシーズンだが、ツキノワグマが近隣で多く出没している。収穫者が山奥まで入山できず適切なタイミングで収穫することができない。現在も思うように入山できていない。(新潟県・クマ被害・山菜・くるみを生産)
・熊被害は柿を食べられる(新潟県・クマ被害・米を生産)
・資材置場ハウスを熊に破られ、中に置いていた米ぬかを食べられた。(福島県・クマ被害・アスパラガスを生産)
・和梨が熊と鳥に食べられて収穫量が激減した。(秋田県・クマ被害・なしを生産)


このような現状を受け、食べチョクでは鳥獣被害に遭った生産者の農林水産物を「食べて応援」できる特集ページおよび生産現場の声をまとめた特設ページを公開した。同社は今後も環境変化や災害に直面する生産現場の実情を伝え、生産者と消費者が共に持続可能な食の未来を考えるきっかけを提供していくとしている。

クマ被害に関する現状動画(山形県上山市・長沼果樹園提供)

株式会社ビビッドガーデン
https://vivid-garden.co.jp/
鳥獣被害に遭った生産者を「食べて応援」する特設ページ
https://www.tabechoku.com/feature_articles/wildlife-damage-support-202511
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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