石川県、能登半島地震・奥能登豪雨で被害を受けた農地の復旧状況を発表

石川県は、2024年に発生した能登半島地震・奥能登豪雨で被害を受けた農地や農業用施設の復旧状況を発表した。


広範囲にわたり農地や農業用施設に甚大な被害が発生


能登では、2024年の能登半島地震・奥能登豪雨により、広範囲にわたる農地や農業用施設に甚大な被害が発生した。

地震では、農地の亀裂や沈下が3621件、農道・水路・ため池の亀裂や法面の崩壊など農業用施設被害が6901件、豪雨では、農地への土砂・流木の堆積や法面の崩壊が1631件、ため池の崩壊、農道・水路への土砂の堆積など農業用施設の被害が1630件あったという。

農業用ため池については、422箇所で被災が確認されたが、被害の拡大を防止するため、応急措置として、亀裂保護や低水管理を速やかに実施。被災したため池のうち39箇所は、地元から廃止の要望があったとし、残りの383箇所について復旧に取り組んでいる。そのうち、比較的被害が小さいため池96箇所については、復旧工事を完了した。

残りのため池については、下流域への影響や営農利用上の優先度の高い箇所から復旧を進め、2028年度までに復旧完了を目指す。


能登地域の農道では、基幹的な16路線のうち、9路線で甚大な被害を受けたが、現在では通行止めの解除が進んでいるという。また「ツインブリッジのと」については、2025年6月に片側交互通行による供用を開始するなど、応急復旧が完了。現在の通行止め箇所は、トンネル崩壊等による大規模被害が発生した4路線となった。2028年度末までには、復旧に時間のかかる1路線を除き通行止め解除を見込んでいる。


石川県ではこうした状況を受け、被災農業者のワンストップ支援組織として「奥能登営農復旧・復興センター」を2024年11月に設置し、復旧・復興に向けた取り組みの加速化を図っている。

このセンターには、県、国、JA職員が常駐し、各種支援制度の申請支援や融資の相談対応、農地等の復旧見通しの提示や営農再開・継続に向けた支援を実施している。


奥能登地域の営農再開状況については、2023年の奥能登地域の水稲作付面積が2800haのところ、その翌年に地震の被害を受けたものの、県の支援により、水稲は約1800ha、水稲を含めた営農再開面積については、地震前の8割にあたる2100haで営農を再開することができた。

その後、奥能登豪雨により再び被災したが、各種支援制度に加え、自治体やJA、農業者など関係者の支援によって、土砂や流木の撤去、水路の啓開など農地や水路等の復旧が進んでいる。

2025年の水稲作付面積は、地震が起きた年に比べ100ha多い1900haとなり、水稲含めた営農再開面積は、2024年とほぼ同等の2000ha、発災前の年の約7割となった。


一方、約800haの農地の不作付けの原因としては、約6割の500haが農地や水路等の破損などの生産基盤の原因によるものとなっている。

この約500haについては、復旧の主体である市町と連携し、1枚でも多くの農地で作付けができるよう、被害の規模に応じて、被災箇所を3つに区分して計画的に復旧を進める予定だ。

具体的には、土砂等の堆積など小規模被害の約200haについては、来年の営農再開に向けて、今年度中の復旧を見込んでおり、県内外の建設業者との調整を進めている。地震による亀裂や崩壊など中規模被害の約150haについては、今年度に測量設計を行った上で復旧工事を行い、2027年からの営農再開を目指す。

また原形をとどめていない農地など大規模被害の約150haについては、年度内に復旧方針を決定した上で、測量設計を行い、2027年から順次工事に着手し、2028年以降の営農再開を目指すとしている。



また、2025年の不作付け農地800haのうち、約4割の300haが、農業者の避難や不在、生産意欲の減退等の人的な原因によるものであることもわかった。

この約300haについては、奥能登営農復旧・復興センターが中心となり、約800人の耕作者等に対し、不作付けの理由や将来の作付け意向などを把握するアンケートを実施している。今後はこのアンケートの回答内容に応じて、集落における農地利用に向けた話し合いの促進や、農作業を受託する農業者との仲介などを行い、営農再開につなげていく。


石川県は、引き続き国や自治体と連携しながら、一日も早い復旧・復興を目指すとしている。


石川県
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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