NTTイードローン、一斉防除とりまとめ業務を約40%効率化 千葉県長柄町で実施

株式会社NTT e-Drone Technology(NTTイードローン)は、一斉防除とりまとめ業務の効率化に向けた取り組みを千葉県長柄町で実施した。


町職員の業務を約40%効率化


千葉県長柄町は、豊かな自然と地下水に恵まれた米の産地として知られているが、小規模農家が多く高齢化も進んでいることから、町主導による一斉防除を行っている。しかし、農家への意向調査や散布地図の作成、当日の立ち合い、散布結果の集計など、一斉防除のとりまとめに関する業務が多岐に渡ることから、町職員の業務負担軽減が課題となっていた。

これを受け、NTTイードローンは、長柄町の実情にあわせた一斉防除用のデータベースとそれに付随するアプリやオペレーションを提供。一斉防除を依頼する農業者の要望や従来の一斉防除の進め方を尊重しながら、以下の内容の取り組みを実施した。

1.将来的かつ抜本的な業務効率化につながるデータベースの整理

長柄町の一斉防除は、毎年3月に各農家に散布希望を確認する紙の調査票を集落単位で送付し、回答を集落単位で収受してから、内容を1枚ずつ確認し、記録する方法で行われている。

調査票を大きく変更することは関係者の困惑につながると考え、紙というインターフェースは残しつつ、調査票回収後の長柄町職員・防除事業者の業務の効率化と利便性向上につながる仕掛けを導入。圃場管理や、デジタル地図作成のためのデータベースを整理し、できるだけ従来の調査票を変えないよう、査票をデータベース化に適した項目へと変更した。

データベース化に適した項目を反映した新たな調査票

調査票の配布と回収は、例年通り長柄町が実施。その後、回収後の調査票をNTTイードローンが預かり、1枚ずつ調査票を確認した上で、必要項目を有するデータベースを作成し、回答内容をデータ投入したという。

この作業には相当な時間を要したが、長柄町の実情に合わせたデータベース化によって業務負担の大きかったアナログ作業へのICTツールの採用が可能になったとのこと。なお、データベースの作成には、農水省と自治体で整備している「eMAFF農地ナビ」を利用している。


2.業務負担の大きかったアナログ作業へのICTツールの採用

調査票回収後にも、散布の日程変更や追加、削除の要望があるが、これまでは紙の調査票を探索し変更する作業が発生していた。しかし、データベース化によって名前・圃場・面積・散布日の検索や変更が容易になった。

さらに、地図作成作業においても、日程や圃場の場所を紙の地図(白地図)に転記する膨大な作業が発生していた。誤りがあると農薬の誤散布を招く恐れから、散布当日に職員が現地に赴き立ち合う必要があったという。

また、散布する防除事業者も白地図を確認するだけでは詳細な地番情報や散布面積、散布の有無がわからないことから、立ち合いの職員とともに事務所にある調査票を再確認する作業も発生していた。

今回の取り組みでは、これらの作業を効率化するために、データベース化した情報を活用し、長柄町一斉防除用のデジタル地図を作成。日程別に色分けし、デジタル地図に表示された圃場を選択すると、散布作業に必要なデータを簡単に確認できるようにしたという。


さらに、スマートフォンを通じてデジタル地図を確認できるようにしたため、町職員の業務だけではなく散布作業に関わる人々の業務も効率化されたとのこと。


デジタル地図をスマートフォンで確認できるようになったことで、散布作業者はスマートフォンのGPS機能を使用して、自分自身と対象圃場の位置関係を正確に把握することができるようになった。

昨年までは行政職員や農業関係者が一斉防除の立ち合いや道案内を行ってきたが、それらの作業を効率化できるようになったという。

3.小規模圃場に適した国産の農業ドローンの採用

これまで長柄町では、農薬散布用の小型ヘリコプターを使用して一斉防除を実施してきたが、今年は日本の圃場に合わせ開発されたNTTイードローン製の農業ドローン「AC101」を採用。猛暑や台風など厳しい気象条件が続いたが、等級が下がるお米が極端に増加することも無かったという。


なお、今年は2600筆の圃場を対象に一斉防除のとりまとめ作業を行い、最終的には1500筆、約250ヘクタールの圃場に散布を実施。その結果、長柄町の職員の業務を約40%効率化できたという。

一斉防除にかかる費用は昨年とほぼ同額のため、同社では「データベース化をはじめとする取り組みの数々が大きな成果を上げた」と考えており、長柄町からも好評の声が寄せられたとのこと。


同社は、今回の取り組みの成果を踏まえ、来年も長柄町と連携しながら一斉防除のとりまとめ作業の効率化を推進していく方針を示している。


株式会社NTT e-Drone Technology
https://www.nttedt.co.jp/
長柄町
https://www.town.nagara.chiba.jp/
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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  4. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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