岡山大学の馬建鋒教授、コメの有害金属低減などにつながる研究で国際肥料協会より受賞

2023年11月29日にカタールのドーハで開催された国際肥料協会の年会において2023年度のThe IFA Norman Borlaug Plant Nutrition Awardが発表され、岡山大学資源植物科学研究所の馬建鋒教授が受賞した。

馬教授は長年植物のミネラル輸送機構に関する研究を行い、数々のミネラル輸送体を世界に先駆けて同定し、その制御機構を解明していることが国際的に高く評価され、今回の受賞となった。


安全なコメの生産に貢献する研究


国際肥料協会(International Fertilizer Association)は1927年に設立された、79カ国以上に400人以上の会員を有する国際機関だ。1993年に、緑革命の父でノーベル賞受賞者のノーマン・ボーローグ(Norman Borlaug)に因んだこの賞を設け、植物栄養学の発展に多大な貢献をした一人に毎年授与している。

馬建鋒教授は研究の中で、主要作物であるイネやオオムギを用いて生育に必要なミネラル(ケイ素、リン、銅、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、マグネシウムなど)や、生育を阻害する有害なミネラル(アルミニウム)、可食部に蓄積するとヒトにとって有害なミネラル(ヒ素、カドミウム)について、それぞれに特異的な輸送体遺伝子を世界に先駆けて突き止めた。

これら輸送遺伝子の機能を解明することで、カドミウム集積を制御する因子は根で発現するカドミウム/マンガン輸送体遺伝子OsNramp5が重複していることを突き止めた。この遺伝子を交配によりコシヒカリに導入したところ、収量と食味に影響せず、カドミウム集積が大きく低下したイネの育成に成功した。

さらにイネの節で発現する遺伝子を活用して、亜鉛や鉄を多く含むイネ、リンの蓄積が少ないイネの作出にも成功している。

都市化や工業化によって世界の多くの土壌がカドミウムに汚染され、基準値を超える作物が生産されている。私たちが摂取するカドミウムの半分近くはコメに由来することから、コメのカドミウムを低減させることは健康のために非常に重要な課題である。

これら研究成果は、今後世界の有害金属フリーの安全なコメの生産、更には育成が早くかつ収量のある作物、必須ミネラルを多く含む栄養価の高い作物の生産に寄与する。

受賞した馬建鋒教授(中央)
受賞した馬建鋒教授(中央)

受賞動画


国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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