Oishii Farm、世界最大級の次世代植物工場「メガファーム」を米国で稼働開始

Oishii Farm Corporationは、ニュージャージー州にてサステナビリティと自動化を追求した、世界最大級の植物工場「メガファーム」の稼働を開始した。年間通して、高品質な日本のいちごを安定生産することが可能になるという。


前農場と比較し20倍の生産量を目指す


Oishii Farmは、2017年から米ニューヨーク近郊に植物工場を構え、日本の品種を利用したいちごやトマトを生産する企業。日本の技術を基盤とした植物工場の展開により、天候や風土、労働力不足に左右されずに、安全で高品質な果物や野菜を生産し、手頃な価格で消費者へ提供することを目指している。

世界的に見ると農業は、異常気象や残留農薬の問題、農業用地や水の不足など、多くの課題を抱えている。また、世界的な人口増加も相まって、このままでは数十年のうちに農産物の入手が困難になる食料危機が予測されている。

Oishii Farmは、こうした課題の解決に向け、技術開発を重ね、ニュージャージー州にてメガファームの稼働を開始した。2.2万平方メートルもの広大な敷地面積を有するメガファームは、旧プラスチック工場を再利用して建設されたという。


中にはいちごの農場ユニットが複数並び、各農場ユニット内では、温度・湿度・二酸化炭素・光・風速などのパラメーターを自動制御し、AIを用いた独自の技術で、室内でのハチによる受粉が可能だ。また、完全閉鎖型の植物工場であるため、害虫や菌の侵入を防ぎ、完全無農薬での栽培が行える。

これらにより、外の気候に左右されず、年間を通して安定的に高品質な日本のいちごを生産できるという。


同社は、前農場の稼働からメガファーム建設までの2年の間に、さまざまな技術革新を起こし、持続可能な方法で圧倒的な生産性を誇る植物工場を実現。施設の環境負荷軽減については、新しい水循環システムに数億円を投じ、使用した水の大半を再利用することに成功した。

一般的に植物工場では、多大な電力消費が問題となっているが、メガファームは東京ドーム5個分に相当する20万平方メートルの太陽光発電に隣接しており、そこでつくられたクリーンエネルギーを利用している。さらに、いちご一株あたりの消費電力を14%削減できる最先端のLEDを活用しているという。


農場ユニット内では、ロボットが24時間いちごの成長を見守りながら、完熟したタイミングで自動収穫し、オペレーションの効率化を図る。また、画像認識技術とAI(機械学習)によって、年間600億ものデータを取得しながら、各農場ユニット内の環境を日々把握・調整することで、受粉成功率や収穫量の予測精度の向上につなげているという。

さらに、各農場ユニット内に250ずつ設置されているいちごの栽培棚を可動式にすることで、農業管理者やロボットが効率的にオペレーションできる環境を構築した。

同社は、ロボットやAIの活用による自動化・生産性向上によって、前農場と比較して20倍もの収獲量を目指すとしている。


Oishii Farmは、メガファームの稼働で生産量を飛躍的に向上させ、ホールフーズ・マーケットなどの小売パートナーを通じて、東海岸における販売地域を拡大していく。

なお、メガファームでは、周辺地域から雇用を創出しており、エンジニア、農場担当者、施設管理者など、すでに100名以上を採用し、今後も採用を拡大する見込みだ。

今後もOishii Farmでは、サステナビリティを追求しつつ、更なる生産性の向上、そして新たな果物・野菜の生産に向けても、研究を進めていくという。

店頭にならぶOishii Farmのいちご

共同創業者 兼 CEO のコメント

Oishii Farmは、日本の伝統的な農業と工業の技術を基盤に、世界的な社会課題の解決に取り組んでいます。農業の持続可能性が危ぶまれる中、今回のメガファームの稼働は、過去たった2年間での飛躍的な技術の進化、そして、サステナビリティと高生産性の両立を実現した新たな農業の形を示す、未来に向けての大きな一歩だと考えています。 今後も人と地球にやさしい農業の実現を目指しながら、日本の高品質な果物・野菜の魅力を世界に伝えていきたいと考えています。

共同創業者 兼 CEO 古賀 大貴氏


Oishii Farm Corporation
https://oishii.com/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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