小型農業装置「AGROT」、大阪・関西万博で9月2日から展示開始

スパイスキューブ株式会社は、小型農業装置「AGROT(アグロット)」を開発。大阪・関西万博の「Resona Mirai Color 秋 ミライと和の調和」で、2025年9月2日(火)~8日(月)に実機が展示される。


1畳分のスペースで月間20kgの葉物野菜が生産可能


スパイスキューブ株式会社は、「世界中どこでも農業を実現する」をコンセプトに2018年に創業したアグリテック系のスタートアップ。農地のない都市部の空き物件を活用して小規模植物工場を建設しているほか、野菜の生産方法や施設オペレーション、流通販売のサポートも行っている。

同社が提供する「AGROT」は、畳1帖分のスペースとコンセントさえあれば「世界中どこでも農業」ができる小型農業装置。植物工場事業だけでなく、身近に取り入れられる農業を目指して開発された。

現在は、オフィスやコワーキングスペースで観葉植物兼室内農業として使用されているほか、カフェやレストランで使用される野菜の自家栽培などに利用されているという。

場所を選ばずどこでも農業をスタートでき、モビリティー性も追求したデザインのため、搬入や撤去も簡単に行える。また栽培技術継承や導入後メンテナンスのサポートも提供しており、はじめて農業に参入する企業や個人でも気軽に導入が可能だ。


植物工場では、植物の光合成に必要な水・光・二酸化炭素や空間中の温度・湿度を管理し、一年を通して品質・収量ともに安定した野菜の生産が行える。しかし、統計を見ると経営状況には厳しいものがあり、2022年時点では57%もの事業者が赤字とも言われている。

植物工場の経営状況の割合

このような状況の中スパイスキューブでは、都市型農業のビジネスモデルを確立した。

まず、「植物工場の設計・建設」として、郊外に大規模な植物工場を新しく建設するメジャーな方法ではなく、都市部の空きテナントや空き倉庫などの未活用不動産や、工場の空いているスペースを活かして植物工場にリノベーションする。

続いて「ノウハウの継承」。これまでのノウハウをすべて渡すことで、誰でも簡単に野菜が育てられるようになる。 また、植物工場事業では野菜の作り方だけでなく売り方も重要となるため、出口戦略のサポートや販路開拓の支援も行う。

そして「買取サポート」として、余った野菜の全量買い取りを行い、初期の売り上げをサポートする。

スパイスキューブは、持続可能な農業モデルを展開することで、個人だけでなく企業の農業参入を増やし、日本の農業の力を底上げすることを目指すとしている。

スパイスキューブ株式会社代表 須貝 翼氏のコメント


「万博出展を志した理由はいくつかあります。『もっと身近な農業を体感して欲しい』『歴史に名を刻める仕事がしたい』また、『家族に自慢できる仕事がしたい』『子どもが友達に自慢できる父親でいたい』そんな思いで取り組みました。 しかし弊社は、たった3人の農業オタクで構成されている無名のスタートアップです。何もしなければ誰にも関心を持ってもらえません。この埋もれた状況から、こっそり開発を進めていたDAC(Direct Air Capture)が商用化できたことが万博出展の大きなきっかけになりました。

従来のビニールハウスや植物工場ではガス会社からボンベを購入し、ハウスや工場内にCO2施用をして野菜の成長を促進しています。弊社が開発したDAC農業は小型化を叶えただけではなく、CO2施用に掛かるコストを無償化したということ、屋外空間に存在するCO2を回収して植物工場の中で消費するという技術構造にしたというポイントが評価されました。

大阪・関西万博を訪れる外国の方や一般消費者の方々にもスパイスキューブ株式会社というフィルターを通じて、植物工場や農業がもっと鮮明で身近に感じて貰えるように努めるとともに、農業の楽しさや、農業が社会課題を解決する可能性があるということも披露していきたいです!」


スパイスキューブ株式会社
https://www.spicecube.biz/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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