AGRIST、AIを活用したキュウリ収穫ロボットをJA全農ぐんまの実証農場に導入

AGRIST株式会社は、JA全農ぐんまが管理する前橋市江木町の園芸作物生産実証農場に、キュウリ収穫ロボットを6月から導入した。

この取り組みはJA全農ぐんまにおいてはスマート農業分野への先駆的な取り組みとされ、県内農家への訴求活動を進めていくとしている。また、一般農家に向けたJAとのロボット導入訴求活動は初めての取り組みになるという。


ハウス内の労働環境改善と収穫ピーク時の人手不足解消へ


AGRISTは、「100年先も続く持続可能な農業の実現」をビジョンに、AIやロボットを活用した営農システムの開発に取り組む企業だ。

農業従事者の減少と高齢化が進む中、農業分野においても労働力不足が深刻化し、農地の集約も進んでいることから、従来よりもより効率的な生産が求められている。特に、群馬県の主力品目のひとつであるキュウリの生産現場では、収穫が手作業で行われていて、夏場の高温など労働環境の改善が大きな現場課題の一つとなっているという。

こうした背景から、JA全農ぐんまは農業のさまざまな課題解決を目的にスタートアップ企業との連携を進めている「ぐんまAgri×NETSUGEN共創事業」を活用し、AGRISTが開発したキュウリ自動収穫ロボットを実証導入することとなった。


AGRISTが提供するキュウリ収穫ロボットは、レール走行式で、カメラやAIを用いて作物を認識、大きさを判断し、自動で収穫が行えるというもの。

また、ネット環境を整えることで、PCやスマートフォンから収穫範囲や収穫閾値の設定・通知・遠隔操作も可能だ。


なお、ロボットの性能の効果発揮や栽培の効率化のため、導入には以下の条件が設けられている。

施設園芸ハウスでつる下ろし栽培を行っていること
・ロボットの通信用のネットワーク回線を整えられること(4G LTEの電波が入ること)
・レールが設置してあり、地面が平らであること
・畝から出た後の通路が平らであること(コンクリート)
・つる下ろしの主枝がベッド横に綺麗にまとめられていること
・ロボットがハウス内にある状態でのミスト(薬散)、硫黄燻煙は行わないこと


JA全農ぐんまの実証農場では、2016年11月の設置当初からキュウリの試験栽培を行っている。キュウリはJA全農ぐんまの取扱いにおいて年間100億円を超える販売高を有する主力品目であり、品目別ではキャベツに次いで上位2番目に位置しているという。

また、実証農場の設立当初は、反収向上を目標とした取り組みが行われていたが、資材高といった直近の生産現場の情勢を踏まえ、生産性の向上といった視点での実証課題の設定にシフトしている。

今回はAGRIST独自の取り組みとして、群馬県仕様のハウスにおける導入効果の確認を行うほか、県内生産者へ実証現場を開放し、視察の受け入れも行う。

収益性の高い経営モデルを検証


大規模な経営体では、出荷のピーク時に人手不足で収穫作業に追われるため、他の管理作業に時間や手間をかけられず、収量や品質に悪影響が出るという課題があるが、こうした経営体には収穫ロボットの導入が有益だという。

AGRISTは、ロボットの導入により労働力を補完し、労働環境の改善を図ることで生産性向上を目指すほか、実証農場での効果確認を経て、県内生産者にロボット導入訴求活動を行う予定だ。

また、収穫ロボットを導入することで、生産コストの増加や労働力不足の課題に加え、昨今の異常な夏の高温によって作業者の活動時間が限られる問題を解消できるという。

同社は、JA全農ぐんまとの取り組みをロールモデルとして、全国にキュウリ収穫ロボットを普及させていくとしている。

Vice President of Engineering エンジニア統括最高責任者 清水秀樹氏のコメント
私たちAGRISTは、今回のキュウリ収穫ロボットの導入を通じて、新しい農業の形を作っていけることを大変うれしく思います。農業従事者の減少と高齢化による人手不足は深刻な問題であり、私たちの技術がその解決に少しでも寄与できることを誇りに感じています。

ロボットの導入は、単に作業の効率化だけでなく、労働環境の改善にもつながると確信しています。特に高温の夏季や収穫のピーク時における人手不足の問題を解消し、生産者の皆様がより快適に作業できる環境を提供することが可能です。

今後も、より多くの農業現場に私たちのロボットを普及させるべく、技術の向上と導入支援に全力を尽くして参ります。AGRISTの技術が農業の未来を切り拓く一助となることを願い、引き続き精進していきたいと考えています。
プロダクトリーダー 増渕武氏のコメント
キュウリ収穫ロボットは基本的に環境が整った大規模園芸施設に導入しやすいように開発を行ってきました。しかし、ロボットの普及のためには大多数を占める一般農家への導入も重要です。

大規模園芸施設と比較すると、一般的なハウスでは環境が厳しいことが多いですが、その環境でキュウリ収穫ロボット活用の取り組みができることは非常に有益であると考えています。今回のJA全農ぐんま様との取り組みを通し、人とロボットが協働するより効率の良い農業の形を模索していければと思っております。
 

AGRIST株式会社
https://agrist.com/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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