信濃毎日新聞とヤマト運輸、規格外農産品のマッチングアプリ「HELASオンラインマルシェ」を提供開始

信濃毎日新聞社は、ヤマト運輸株式会社と業務連携し、長野県の規格外農産品を全国に届けるサービス「HELASオンラインマルシェ」を2024年7月26日(金)に開始した。


長野県内の「畑の食品ロス」削減へ


長野県は、総農家数が全国で最も多く、野菜・果物は多くの品目において全国トップクラスの収穫量を誇っている。しかし同時に、サイズや形、色などが原因で出荷できず廃棄せざるを得ない規格外品も数多く存在しているという。

HELASオンラインマルシェは、信濃毎日新聞社が運営するスマートフォンアプリ「HELAS」の機能を拡張したもので、ヤマト運輸が連携し、生産者が出荷することができなかった野菜や果物を全国の消費者にマッチング販売 ・配送を行うサービスだ。

規格外品とはいえ、正規品と同等の新鮮な信州の野菜と果物をリーズナブルに購入することができる。


HELAS(ヘラス)オンラインマルシェの売買フロー図

農林水産省および環境省によると、2022年度の食品ロス量は472万トンにのぼり、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は236万トンあった。

従来のHELASでは、長野県内における事業系食品ロスの見える化を目的とし、食品小売店や飲食店と消費者の間でスマートフォンアプリによるロス食品のマッチング売買を行っている。

一方で、農業が盛んな長野県では、事業系食品ロスにはカウントできない野菜・果物の生産現場で発生する畑の食品ロスの有効活用が地域課題となっており、農家からは出荷できなかった農産品をなんとか販売できないものかという声が多く聞かれたという。

同時に、長野県内で5000軒以上の農家の商品配送を担っているヤマト運輸からは、出荷できない野菜や果物を何とか流通させたいという生産現場の声を背景に、ヤマト運輸が運営する「宅急便産直サービス」とHELASの連携提案があり、HELASオンラインマルシェをスタートすることになった。

ヤマト運輸の宅急便産直サービスを活用したシステムを新たに構築したことにより、売買成立後は集荷から配送までワンストップでスムーズに行える。また、全国でのアプリユーザーの獲得および商品発送が可能になった。

サイズや不揃いが要因で出荷できなかったブロッコリー(写真提供:辰野町「彩」さん)

出荷できないレタス(写真提供:辰野町・彩さん)

売り手の対象となるのは、長野県内で生産を行っている農家で、初期費用・月額費用は一切かからず、売買が成立した場合のみ手数料を徴収される仕組みだ。

伝票の宛名書きが不要で、受注後はヤマト運輸のセールスドライバーが印字済み伝票を持参して集荷を行うため、生産者の負担が軽減できるという。

対応するサイズは、120サイズまでとなっており、配送料は最大63.3%引きで利用できる。例えば、長野県から信越・関東・北陸・中部・関西・南東北に60および80サイズ商品を送る場合、通常送料は税込み940円~1350円(税込)のところ、495円(税込)の特別配送料が適用される。また、別料金で100サイズまではクール便にも対応。

アプリの登録は無料で、個人だけでなく、日々大量の野菜や果物を加工して調理している飲食店や、加工商品製造業の人も利用できるという。アプリのダウンロードは、Google PlayとApp Storeから行える。

商品例

HELASオンラインマルシェの提供によって、日々廃棄されている規格外野菜を買い手とマッチングして消費することで、食品ロスの削減を支援するほか、統計が困難な農業系の食品ロスを売買につなげることによる見える化、小規模な農家の農産品販売の販路拡大も期待できるという。

信濃毎日新聞社は、ヤマト運輸とともにSDGsの観点から食品ロス削減支援事業の実践に努めていくとしている。


信濃毎日新聞株式会社
https://www.shinmai.co.jp/
ヤマト運輸株式会社
https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/corp/

HELASオンラインマルシェ
https://helas.jp/onlinemarche/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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