精米・卸売会社が語る、これからの「穀粒判別器」の価値と活用法
コメの検査が変わる。これまでの目視検査に加えて、「穀粒判別器」による画像検査も公式に認められることになるからだ。
先んじてこの機器を使ってきたのは、精米・卸売会社である福岡農産(福岡県川崎町)。中島良一社長に話を聞いた。
福岡農産・中島良一社長
――穀粒判別器はいつから使っているのですか。
福岡農産 中島社長(以下、中島):コメ卸の事業を始めた1996年6月からですね。
我が社はもともとコメの特定米穀(※1)や小売りを商いにしていました。卸売事業に参入したのは1995年11月に新食管法(食糧受給価格安定法)が施行されてから。この法律でコメの卸・小売り事業は指定・許可制から登録制に変わり、年間取り扱いの見込み量が4000tを超えるなら誰でも卸売業者として登録できるようになりました。本当の規制緩和だったわけです。
そうはいっても従来の主食の卸売業者からすれば新参者。ふるい下米をブレンドしているのではないかと疑われるわけです。当時、我々は統一ブランド「米街道(=こめかいどう)」として主食用米を売り出しました。中には口の悪い業者がいて、「裏街道」などと陰口をたたく人もいました。
そんな経緯があったので、品質の管理はどこよりも丁寧にやらないといけないと覚悟しました。だからすぐに炊飯型食味計(東洋精米機味度メーター/1350万円)や、成分分析型食味計(水分やたんぱく質のバランスを見て食味を判定するタイプ)、穀粒判別器、縦目ふるい、横目ふるいなどを導入してデータを示すようにしたんです。
値段ははっきり覚えています、合計で2000万円以上かかったので。
――2002年にISO9001(※2)を取られたのも同じ理由ですか。
中島:そうですね。食味計、穀粒判別器、水分計を中心とした分析機器で仕入れた玄米と出荷する精米を検査しています。うちではチェックシートをつくり、ロットごとに検査した内容を書き込んで保管します。もし基準から外れたら、基本的に主食用としては出荷しません。
2020年11月にはISO22000(※3)も取りました。今後はFSSC22000も取得するつもりです。
――穀粒判別器で取ったデータはどのように使っていますか。あるいは使えますか。
中島:ロットや週ごとに品質のブレがどれだけあるかを見るために使っています。集めたデータ表はお客さんには求められたら見せるくらいで、納品のたびに付けることはしていません。もちろんデータを取っていることは評価されています。
我が社では米ぬかや異物が混入しにくい「エアー搬送システム」を取り入れています。また「電子シャワー空気浄化装置」や「静電気除去設備」などを採用することで砕米や割れ米を減らすほか、炊飯後に品質が劣化することを防ぎます。穀粒判別器を含めた品質管理の高さが総合評価されていると思います。
穀粒判別器では、整粒歩合や未熟粒、胴割れなどについて細かなデータが出てきます。出荷先から「整粒歩合85%」などと求められれば、微妙なさじ加減で出荷できるんです。
新参者として卸売事業を始めてから品質管理に気を付けてきただけに、いよいよこうしたことができる段階まで来たのかと思うと感慨深いですね。
――穀粒判別器については中島さんが会長の全米工(全国米穀工業協同組合 ※4)の取引会でも2020年から使うようになっていますね。
中島:そうですね。いわゆる主食米の場合、玄米取引は年産、産地、品種、等級がわかれば、現物がなくても取引が可能です。コメ市場やFAX仲介業者などでは、その方法で商いはされております。
しかし、ふるい下米(特定米穀)の場合、無選別の原料玄米はもちろん、中米といわれる選別上玄米、選別下玄米などは、目視と容積重を基準にして取引を行ってきた経緯があります。
従来の穀粒判別器ではふるい下米の対応まではできなかったのです。それが「RN-700」をはじめとした最新型は画像分析技術の進歩により対応可能になってきました。
このような時期にコロナ禍の影響があり、席上取引が開催しにくくなり、すでに試験的に席上取引でもサンプルに数値資料を添付していたのを深化させ、オンライン上でカルトン上のサンプル画像と分析数値を紹介したうえで、取引ができるようにしたものです。
まだまだ機器が組合員に普及しているわけではないので、リアルの取引でなければ売買できないと感じている組合員もいるとは思いますが、データを積み重ねる中で認識が変わってくるものと判断しております。
――卸にとって穀粒判別器の価値はこれから高まるでしょうか。
中島:2022年から玄米の検査にも穀粒判別器を導入するようになるわけですから、中堅規模以上の生産者からJA、集荷業者、米卸、ユーザーまで必須となる可能性が高いと思われます。
従来の農産物検査規格との整合性などの課題は、これから煮詰める必要もあるかと思われますが、従来の1等~3等の中でも年産、産地、品種によりどれくらいの差があるかを、生産者も買う側も、嫌でも認識させられることになるのではないでしょうか。
また、業務用向けで、品種を特定したうえで低価格競争を迫られた場合に、数値の比較をすることと、その数値を通年にわたり安定できるかどうかなど、必ず商品の透明性が問われることになるとみています。
実需者側も導入することになれば、調達先の評価が可能かと思われます。ただし、あくまでも外観であり、食味を保証するものではないので、その意味では食味も含めた評価が米卸の価値につながることになるのではないかと思われます。
福岡農産株式会社
https://rice.co.jp/
先んじてこの機器を使ってきたのは、精米・卸売会社である福岡農産(福岡県川崎町)。中島良一社長に話を聞いた。
福岡農産・中島良一社長
新参者だからこその「どこよりも丁寧な品質管理」を
――穀粒判別器はいつから使っているのですか。
福岡農産 中島社長(以下、中島):コメ卸の事業を始めた1996年6月からですね。
我が社はもともとコメの特定米穀(※1)や小売りを商いにしていました。卸売事業に参入したのは1995年11月に新食管法(食糧受給価格安定法)が施行されてから。この法律でコメの卸・小売り事業は指定・許可制から登録制に変わり、年間取り扱いの見込み量が4000tを超えるなら誰でも卸売業者として登録できるようになりました。本当の規制緩和だったわけです。
そうはいっても従来の主食の卸売業者からすれば新参者。ふるい下米をブレンドしているのではないかと疑われるわけです。当時、我々は統一ブランド「米街道(=こめかいどう)」として主食用米を売り出しました。中には口の悪い業者がいて、「裏街道」などと陰口をたたく人もいました。
そんな経緯があったので、品質の管理はどこよりも丁寧にやらないといけないと覚悟しました。だからすぐに炊飯型食味計(東洋精米機味度メーター/1350万円)や、成分分析型食味計(水分やたんぱく質のバランスを見て食味を判定するタイプ)、穀粒判別器、縦目ふるい、横目ふるいなどを導入してデータを示すようにしたんです。
値段ははっきり覚えています、合計で2000万円以上かかったので。
――2002年にISO9001(※2)を取られたのも同じ理由ですか。
中島:そうですね。食味計、穀粒判別器、水分計を中心とした分析機器で仕入れた玄米と出荷する精米を検査しています。うちではチェックシートをつくり、ロットごとに検査した内容を書き込んで保管します。もし基準から外れたら、基本的に主食用としては出荷しません。
2020年11月にはISO22000(※3)も取りました。今後はFSSC22000も取得するつもりです。
穀粒判別器は総合評価の一項目
――穀粒判別器で取ったデータはどのように使っていますか。あるいは使えますか。
中島:ロットや週ごとに品質のブレがどれだけあるかを見るために使っています。集めたデータ表はお客さんには求められたら見せるくらいで、納品のたびに付けることはしていません。もちろんデータを取っていることは評価されています。
我が社では米ぬかや異物が混入しにくい「エアー搬送システム」を取り入れています。また「電子シャワー空気浄化装置」や「静電気除去設備」などを採用することで砕米や割れ米を減らすほか、炊飯後に品質が劣化することを防ぎます。穀粒判別器を含めた品質管理の高さが総合評価されていると思います。
穀粒判別器では、整粒歩合や未熟粒、胴割れなどについて細かなデータが出てきます。出荷先から「整粒歩合85%」などと求められれば、微妙なさじ加減で出荷できるんです。
新参者として卸売事業を始めてから品質管理に気を付けてきただけに、いよいよこうしたことができる段階まで来たのかと思うと感慨深いですね。
品質管理に対する姿勢が一層問われる時代
――穀粒判別器については中島さんが会長の全米工(全国米穀工業協同組合 ※4)の取引会でも2020年から使うようになっていますね。
中島:そうですね。いわゆる主食米の場合、玄米取引は年産、産地、品種、等級がわかれば、現物がなくても取引が可能です。コメ市場やFAX仲介業者などでは、その方法で商いはされております。
しかし、ふるい下米(特定米穀)の場合、無選別の原料玄米はもちろん、中米といわれる選別上玄米、選別下玄米などは、目視と容積重を基準にして取引を行ってきた経緯があります。
従来の穀粒判別器ではふるい下米の対応まではできなかったのです。それが「RN-700」をはじめとした最新型は画像分析技術の進歩により対応可能になってきました。
このような時期にコロナ禍の影響があり、席上取引が開催しにくくなり、すでに試験的に席上取引でもサンプルに数値資料を添付していたのを深化させ、オンライン上でカルトン上のサンプル画像と分析数値を紹介したうえで、取引ができるようにしたものです。
まだまだ機器が組合員に普及しているわけではないので、リアルの取引でなければ売買できないと感じている組合員もいるとは思いますが、データを積み重ねる中で認識が変わってくるものと判断しております。
――卸にとって穀粒判別器の価値はこれから高まるでしょうか。
中島:2022年から玄米の検査にも穀粒判別器を導入するようになるわけですから、中堅規模以上の生産者からJA、集荷業者、米卸、ユーザーまで必須となる可能性が高いと思われます。
従来の農産物検査規格との整合性などの課題は、これから煮詰める必要もあるかと思われますが、従来の1等~3等の中でも年産、産地、品種によりどれくらいの差があるかを、生産者も買う側も、嫌でも認識させられることになるのではないでしょうか。
また、業務用向けで、品種を特定したうえで低価格競争を迫られた場合に、数値の比較をすることと、その数値を通年にわたり安定できるかどうかなど、必ず商品の透明性が問われることになるとみています。
実需者側も導入することになれば、調達先の評価が可能かと思われます。ただし、あくまでも外観であり、食味を保証するものではないので、その意味では食味も含めた評価が米卸の価値につながることになるのではないかと思われます。
福岡農産株式会社
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