「地域ドローン空撮パイロット」から若者の力を農業に〜丹波篠山での取り組み

月に一度、圃場を空撮する農業未経験の若者


丹波篠山市在住の山本歩輝(いぶき)さん(24歳)は、2021年度から農地を空撮するドローンパイロットとして活躍している。

「DJIのPhantomを飛ばして、上空140mから1エリア70〜100haの農地を撮影します。1日に4エリアほど撮影しているので、空撮面積は400haぐらい。2021年の米の栽培期間に月に一度のペースで撮影しました」


DJI Phantomを操縦し、篠山の農地を空撮する山本さん

山本さんが撮影した画像データは、株式会社オプティムが運営する圃場管理サービス「Agri Field Manager」へ送信。同社はこれを元に圃場や作物の生育状況を解析。栽培農家はそのデータを元に病害虫の被害が出ている場所を探知して、ピンポイントで防除を行ったり、生育不良の場所を検知して的確に追肥を行ったりする。

つまりドローンパイロットは、農作物の品質と収量アップや生産者の労力やコスト削減に貢献できる仕事なのだ。

今回、山本さんが地元である丹波篠山でドローン撮影に携わったことは、丹波篠山の農業の未来を支えるための大きな一歩になるかもしれない。

娘の友達に「ドローンで田んぼを撮って」と依頼


「ドローン歴は3年くらい。旅先で景色を撮ったり、友達も一緒に撮影したり。完全に趣味として飛ばしていました」

以前は一眼レフのカメラでの撮影を趣味としていたという山本さん。その延長で「空から撮りたい」という思いが高まり、小型ドローンのMavicを購入。空撮した画像をインスタグラムにアップするのが楽しみだった。

そんな“ドローン好きな今どきの青年”だった山本さんに、ある人物から「ドローンでうちの田んぼを撮ってほしい」という依頼が舞い込んだ。依頼主は、25haの水田でコメを栽培している株式会社ニューファームみのりの明山泰幸さん(47歳)。スマート米「丹波篠山コシヒカリ」の生産者の一人でもある。

明山さんの娘さんは山本さんと同級生。娘さんから山本さんがドローンで空撮を行っていることを知り声をかけた。目的は、明山さんの圃場を含めた、丹波篠山の米の圃場の病害虫診断や生育分析のため。作業自体はボランティアだ。

娘の同級生がドローンを飛ばしていると知り、真っ先に声をかけた明山さん
米作りが盛んな丹波篠山の水田が広がる景色の中で生まれ育った山本さんだが、米作りにはほとんど関心がなかったという。といっても、意識的に避けていたわけではなく“おいしい篠山の米”があまりに身近であたりまえの存在だったため、向き合うチャンスがなかったようだ。

ドローン空撮を通して地元の稲作に貢献


とはいえ、同じドローンでも山本さんが操縦経験があるのは空撮用の小型ドローンのみ。「自前のドローンで大丈夫か? 」「田んぼを撮影するだけでいいと言われたけど、本当に農家の役に立てるのだろうか? 」と思ったのだそう。そんな山本さんに、明山さんは篠山の農業事情を切々と語った。

「今、篠山の米農家の大半が80代。その下の70〜60代がおらず、私(明山さん)の世代である“40代”が“若手”と呼ばれている世界だ。40代以下の本当の若手はほとんどいない。米を作れない年代の人がどんどん増え、動ける“若手”に作業を頼むので、同じ人に作業が集中してしまう。このままいけば俺たちが80歳になった時、米作りができる人はいなくなっているかもしれない……」

「田んぼに稲穂がそよぐ篠山の“あたりまえ”な風景は、実はかなり危うくて、そう遠くない将来に見られなくなるのかもしれない……そんな現実を初めて知りました」と山本さん。

そこでとにかく時間を見つけて月に一度田んぼを空撮し、データをインターネット経由でオプティムのサイトへ送付した。ドローンはオプティムから貸し出されたPhantomを使用。特に問題なく撮影できた。

オプティムで農業事業を担当し、今回のドローン空撮に携わった王さんは、「山本さんは本当にドローンに詳しい方なので、撮影に関して私たちが教えることはほとんどなく、快調に進みました」と話してくれた。

一方、撮影を担当した山本さんも、「私が使用しているMavicは小型なので風に弱く、手動操作で立て直すことが多かったのですが、Phantomは事前に軌道を設定してアプリ操作で飛行できる、本当に優秀なドローン。ある程度慣れている人なら誰でも操作でき、女性やお年寄りでも操作可能だと思います」

撮影対象が「風景や人物」から「農地」に変わっても問題なく撮影できたが、逆に稲作に関する専門用語に触れるのは初めてで、新鮮だったという。

「僕が撮影した画像に基づいて、肥料が足りていない場所に追加で撒くことを『追肥』というんだ! など初めて聞く言葉が多く、とても新鮮でした」と山本さん。

個々の農家だけでなく地域の農家のために


山本さんが撮影した圃場の画像は、1回のフライトで400ha。現在分析しているのは明山さんの田んぼだけだが、近隣の農地も写っている。オプティムの「Agri Field Manager」を通じてこの画像を活用し、追肥や農薬のピンポイント散布を行う農家が近隣にも増えていけば、さらに多くの生産者の栽培に役立ち、地域の農業に貢献できる。

山本さんが子どもの頃からずっと見慣れていた篠山の風景はあたりまえすぎて、逆に田んぼに関心を持つ機会がなかった。ところが、趣味で飛ばしていたドローンが縁で、篠山の農家や田んぼの現状をリアルに知ることができた。

あらかじめ飛行経路を設定し、自動飛行。1日に400haを撮影する
2021年シーズンの撮影を終えた今、山本さんは以前とは田んぼの見え方が違ってきたという。

「僕が撮影することで、農家さんの力になれる。地域の農家さんのためにドローンを飛ばしています。趣味で飛ばしていた時にはなかった、やりがいを感じています」

「ずっと趣味で撮り続けてきましたが、ドローンには“ビジネス”としての可能性がある。いずれ農薬や肥料を積載した大型のドローンにも挑戦してみようか……。そんなことも考えるようになりました」と山本さんの意識も少しずつ変わってきている。

「ドローンで田んぼを撮ることで、若者の目が“こっち”を向いてくれれば……」そんな明山さんの思いは、きちんと伝わっているようで、山本さんも「自分が初めて関わった丹波篠山のスマート米は、噛みしめるほど今までとは違った味がします」と話していた。

ドローンを若者が農業に初めて関わるきっかけに


オプティムは2021年より、「スマート米」を栽培している地域で活動中のドローンパイロットを発掘・育成し、現地の農家での空撮などを依頼できるようにしていく予定だ。丹波篠山の山本さんはその準備段階での第1号といえる。

ドローンによる圃場の空撮は、収量や品質の向上につながることはもちろん、地元の若者たちの興味や関心を自然に農業へ向け、農家と共に地域の未来を考えるきっかけになっていくはずだ。

丹波篠山での明山さんと山本さんの取り組みは、そんな効果も期待できることを物語っている。

ドローンによる空撮で農家の力に。「やりがいを感じます」と山本さん。


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自宅で毎日食べるお米を選ぶときには、どの産地のどんな銘柄のお米を選ぶかということや、自分好みの味わいだけでなく、“栽培方法”も大事なポイント。農薬や化学肥料の使用量を抑えて育てられた、子どもや家族みんなにあんしんなお米を選びたいもの。

今回紹介した丹波篠山のこだわりの農家さんと、スマート農業でお米づくりをしている「スマート米」は、先進のIT技術を利用し、農薬の使用量を最小限に抑えたお米。特別栽培米や残留農薬不検出のお米、白米と同じように手軽に炊けると人気の「無洗米玄米」もそろっている。

西日本では有名な米どころとしても知られる丹波篠山の銘柄はコシヒカリ。やや小粒なお米は、無洗米玄米でも白米でも、もっちりして食べやすくなっている。

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。