ヤマタネとグリーン、AIを活用した収穫適期予測アプリ「e-kakashi LITE」の実証実験を開始

株式会社ヤマタネとグリーン株式会社は、収穫適期予測アプリ「e-kakashi LITE(仮称)」の実証実験を2024年9月より開始した。米穀をはじめとする多様な農産物を対象に、省力化を手助けし、産地との連携を一層強化する取り組みを通じて地域農業の維持と発展を図る。


従来よりも少ない条件設定で収穫適期を予測


日本の農業では、高齢化による離農や気候変動のリスクが増大し、農地の集約化が進む中で生産者の管理負担が増している。こうした状況の中、効率的で持続的な農業を実践するためには、科学的なデータを活用した栽培体制の構築が不可欠だ。

グリーン株式会社と株式会社ヤマタネは、データ活用を基盤にした農業ソリューションを提供・普及させることで、地域農業の維持と発展に取り組んでいる。

今回行われる実証実験では、グリーンが提供する新アプリ「e-kakashi LITE(イーカカシライト)」を用いて、主に収穫適期の予測精度を検証。ヤマタネは、産地との信頼に基づくネットワークを活用し、この取り組みに関心のある秋田県、宮城県、新潟県を中心とした生産者との橋渡しを行い、プロジェクトの円滑な進行をサポートする。

利用イメージ

e-kakashi LITEとは、簡単な設定で収穫適期を予測することができるアプリ。センサーやハードウエアの設置を必須とせず、衛星マップからほ場を指定でき、過去の栽培データやAIを駆使することで、より正確な予測が可能だという。

アプリの特徴は以下の通りだ。

シンプルな初期設定
衛星マップからほ場を指定し、作付けの設定と、積算温度の目標値を入力するだけで、収穫適期の予測をプッシュ通知で受け取ることができる。

生育記録に基づく目標積算温度の自動計算
過去の生育記録を入力することで、ユーザーごとに最適な目標積算温度を自動で計算する。

生育ステージの自動判定機能
過去の出穂日や収穫日が不明でも、おおよその栽培期間を月単位で入力するだけでAIが生育ステージを自動で判定し、最適な目標積算温度を計算する。

品種によっては、収穫適期を測る指標として目標とする積算温度が公開されているものもあるが、日のあたり方や土壌条件など、ほ場の条件によって生育のばらつきは大きく、一様に適用できない場合があるという。

e-kakashi LITEは、過去の作付け記録と環境情報を紐づけて分析し「自分のほ場の収穫適期」を推定するAIを搭載しているため、刈り取りの最適なタイミングを予測し、収穫作業の効率化と品質の向上を目指すことができる。

実証実験では、e-kakashi LITEによる出穂日から収穫日の予測精度を検証し、実際の登熟状況とのマッチングを図るほか、将来的には定植から収穫日まで予測範囲の拡大、病気や害虫のアラート機能の追加も計画しているという。

さらに、従来のe-kakashiのセンサーデバイスと連携させることで、より予測精度を高め、品質や収穫量の向上、生産者の収益性向上につながるようなきめ細かな栽培管理が実現できる機能の開発を目指す。

グリーンとヤマタネは、科学的農業を通じて農業課題に取り組む生産者を支援し、生産地と協働して地域農業の維持・発展に貢献していくとしている。


株式会社ヤマタネ
https://www.yamatane.co.jp/

グリーン株式会社
https://www.greein.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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